INTERVIEW

リサイクルの仕組みづくり、群馬県との協定を締結

森林問題を少しでも解決する
手助けをしたい

パナソニック内装建材(株) 群馬工場と群馬県が「県有林整備パートナー事業実施協定」を締結
協定地の「ぐんま つむぎの森」にて

サステナブルフロアーTMとは、業界初(※1)の植物油脂由来の塗料とリサイクル木材を基材に使った床材です。お客様はサステナブルフロアーTMを購入することで森林保全・環境活動にも貢献できる仕組みになっていることが特長です。サステナブルフロアーTMの開発について、建築システム事業部の吉谷さんに話を伺いました。
※1 2023年1月時点、当社調べ

建築システム事業部
インテリアマテリアル商品企画開発部
吉谷 勇亮(よしがい ゆうすけ)

INDEX

01 環境に配慮した床材の開発が決まる

2007年頃は、現在と同様に合板価格が年々上昇しており、床材の安定供給をめざしてチップボード(※2)を使ったリサイクル基材の開発に力を入れていました。以前よりチップボードは、家具などによく使われていましたが、周辺環境の影響を受けやすいため、床材には向いていないと言われていました。 ※2 木材の小片を接着剤と混合し熱圧成型した木質ボードのこと。パーティクルボードともいう。

「本格的に環境に配慮した床材を開発しようという企画内容が固まったのは、2022年3月30日。発売開始まであと10か月程度しかありませんでした。すぐに試作を始めましたが、前途多難な結果ばかり。当初描いていた姿を達成するのは難しく、大幅に路線変更せざるを得ず焦っていました。」

そんな中、塗料メーカーでバイオマス塗料の見通しが立ちそうだという報告があがってきました。床材の最終仕上げの中でも、化粧材の上に塗料を塗って仕上げる、いわゆる、アフターコートの商品を主流に扱っている当社だからこそ、親和性が高く対応することができるのです。ここを軸に、再度、商品の仕様および環境ストーリーの検討を始めました。

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02 バイオマス塗料を使った床材に挑戦

サステナブルフロアーTMは、植物油脂由来の塗料を使っており、床材にバイオマスマークを取得した塗料を使ったのは業界初。サステナブルフロアーTMも当社の他の一般床材と同様に、塗装を3層重ねて性能を出しています。お客様が生活する上で重要になるトップコートは、過去から実績のある、傷に強く耐久性が高い従来の塗料を使い、下の2層にバイオマス塗料を採用しています。

バイオマス塗料バイオマス塗料

一般的なバイオマス材料というと、トウモロコシ、菜種、サトウキビなどがよく使われていますが、今回、塗料としてバイオマスマークの認定を受ける過程においては、使われている素材もとても細かくチェックされました。塗装メーカーで何度も配合・適合性を検討していただいたバイオマスマーク商品の認定には、審査委員による書類審査に合格する必要があります。審査が厳しく何度も改良を重ね申請し直し、やっと認定マークが使えるようになりました。

バイオマス

サステナブルフロアーTMに使われている塗料のバイオマスの割合は10

03 バイオマス塗料が固まらない…

しかし、開発の過程では様々な困難にも遭遇しました。いざ、バイオマス塗料を床材に使ってみたものの、硬化が上手くいかない、当社床材で求められる性能が出ないという問題が発生しました。また塗装の3層のうち、下の2層にバイオマス塗料を使っているため、3層目の塗料との相性も課題になりました。

さらに、工程での試作では、通常の塗料と混ざってはいけないため、一旦製造ラインを止めて塗料を全て入れ替える必要がありました。完成までにラボや製造ラインで何度も試作を重ね、硬化の状態や機能性など試行錯誤を繰り返すことになりました。

04 サステナブルフロアーTMと群馬県とのご縁

サステナブルフロアーTMは、リサイクル材を使った「サステナブルボード」を基材に使っていることも特長です。住宅の解体廃材や、扱いづらく使い道がなかった未利用材を「サステナブルボード」の原料として、利用することで森林資源を有効に活用しています。

「床材工場がある群馬県に3年ほど働いていた経験があり、地産地消や恩返しという意味も込めて、何か一緒にできることがないかと思ったのです。実際に調べたところ、群馬県では全国に先駆けて森林保全のためのさまざまな制度を作り、企業とも取り組んでいることがわかりました。すぐに群馬県庁の担当の方に電話をかけ、コンセプトとやりたいことを伝えました。」

この一本の電話がきっかけで、群馬県と県有林の整備や保全を行う「県有林整備パートナー事業実施協定」を結ぶことになったのです。

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    「県有林整備パートナー事業寄付金受納式」群馬県庁舎前で

05 床材1坪購入で両手のひらサイズの森林を守れる

群馬県との協定は、地球温暖化防止など森林の機能向上を図ることを目的に、群馬県有林の整備や保全を群馬県と一緒にパナソニックが行うものです。そこにお客様が床材を購入することで環境に貢献できる仕組みを組み合わせました。

具体的には、お客様がサステナブルフロアーTMを1坪(3.3㎡)購入すると両手のひらサイズ相当の面積(240㎠)の森林保全・整備活動に割り当てられる仕組みです。また、サステナブルフロアーTMはリサイクル材を使った「サステナブルボード」を利用しているため、1坪あたり約38kgの炭素(CO2換算)(※3)を貯蔵することにもなります。

※3 林野庁「建築物に利用した木材の炭素貯蔵量の表示ガイドライン」(令和3年10月1日付3林政産第85号林野庁⻑官通知)に則り、サステナブルフロアーTM1坪あたりの使用木材に貯蔵している炭素(CO2 換算)を算出をしています。

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サステナブルフロアーTMを1坪購入すると両手のひらサイズの面積の森林を守る

06 見た目を取るか、環境配慮を取るかで意見が分かれた「溝」

もう一つ完成までに苦労したのが「溝」でした。実は床材には疑似目地ともいわれるような細い溝が入っています。そこで問題になったのが「サステナブルボード」の基板に使っているチップでした。溝を入れることで中のチップが見えてしまうのです。見た目が悪いんじゃないか、溝に着色してみようかなど、数ミリの溝で何度も議論が交わされました。

「市場へのヒアリングも実施し、最終的には環境訴求をしている床材なので、あえてチップを見せることにしました。そうすることで販売するときに環境に配慮した材料を使っていることがわかるという、話のネタの1つにもなったかと思っています。」

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    「溝」には特徴的な素材感が見える

07 時代に合わせてリサイクルの材料も変えていく

「サステナブルボード」のチップ原料には色々な材料が含まれているため、品質を保つための工夫が必要です。ボードを作るときに異物を極限まで除去し、表裏面層には細かいチップを使うなど加工の際も気を付けています。

「廃材ではなく、木材そのものを使えると基材の品質は安定するのですが、環境に配慮した素材を使っていきたいので、時代に合わせて配合は変えていかないといけないと思っています。」

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08 協定をきっかけに群馬県と新しい展開へ

今回、群馬県の方と協働で森林整備・保全に取り組む協定を結ぶことになりましたが、実は、吉谷さんが連絡をするまで群馬県の担当の方は、群馬にパナソニック工場がいくつかあるのは知っていても、床材の工場があることを知らなかったのです。

「今回の協定を結んだことで、群馬県の方に大変興味を持っていただくことができました。最近では、工場見学や、展示会の共同出展を実施させていただくなど広がりを見せています。2023年の2月に開催された東京の展示会(ウッドコレクション2023)においては、群馬県のブースでサステナブルフロアーTMと群馬県産材を使った試作品の展示もすることができ、多くの反響をいただきました。」

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展示会(ウッドコレクション2023)の様子

09 森林問題を少しでも解決する手助けをしたい

日本の森林は十分な手入れがされず放置されているところが多くあります。林業従事者の高齢化や費用の面など問題は深刻です。
「実は日本の森林の貯蓄量というのは右肩上がりなのです。ただ森林が多ければいいということではなく、適切に管理をしなければ森林は育っていかない。森を守る、というと木を植える『植林』というイメージがあると思うのですが、今回群馬県と協定を結んだのは、『育樹』という森林を適切に管理する仕組みです。」

サステナブルフロアーTMは、企業がボランティアや寄付をするのではなく、お客様が企業と一緒に環境貢献できる、意識をしていただくきっかけになるようになっていることがポイントです。サステナブルフロアーTMを購入していただくことで「ぐんま つむぎの森」の育樹が行われます。育樹を行うことで、森林が適切に育つのです。

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「森林保全」「資源有効利用」「脱化石燃料」で人にも環境にもやさしく。

「『ぐんま つむぎの森』は、”人と森林との関係が、今後も紡がれていくように”という当社の願いを込め、名前を付けています。商品を購入していただくことで環境貢献ができるこの仕組みは、床材だけでなく他の商品にも展開できないか?パナソニックができることは良い商品を届けるだけでなく、環境問題のサポートなど企業としての使命もあると考えています。」

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「ぐんま つむぎの森」
“人と森林との関係が、今後も紡がれていくように”という願いを込めて

10 最後に

サステナブルフロアーTMを発売するにあたって、社内外問わず本当に多くの方にご助力・ご協力をいただき発売にまでこぎつけることができました。この場を借りてお礼申し上げます。

このサステナブルフロアーTMという商品は、環境配慮が特長という商品なので、なかなか既存の市場ですぐに受け入れていただくことは難しいと思っていますが、十年後にはこのような商品が当たり前になっている可能性もあると思っています。そのための一歩として、今回の開発が先駆的な位置づけになってくれると嬉しいです。

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インテリアマテリアル商品企画開発部
吉谷勇亮

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    企画開発部メンバー

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    製造部メンバー

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    群馬品質保証部メンバー

群馬工場にあるプロユーザー向けショウルーム「テクニカルプラザ」や、群馬県の高崎ショウルームでサステナブルフロアーTMを紹介。この取り組みを発信し、さらに持続可能な社会への実現に向け貢献していきます。

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インタビュー

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