対談│林業従事者×商品開発担当者
テーマ
なんのために環境保全って、必要なの?
サステナブルフロアーの開発担当者が森林保全活動に携わる
林業従事者・鈴木大介様から森林管理の実情をお聴かせいただきました。
取材協力:利根沼田森林組合
群馬県利根郡川場村大字谷地2054-4
https://www.mimizuku.or.jp/
県有林整備パートナー事業実施協定締結に伴う協定地
「ぐんま つむぎの森」
「林業ってなんだろう?」
県有林整備パートナー事業
吉谷
(企画開発担当)
今回、2023年4月にサステナブルフロアー(以下、サステナブルフロアー)という床材を新商品として発売します。環境配慮を積極的に謳う商品になるんですけど、基材には森林の未利用材を使ったり、建築廃材をリサイクルして資源を無駄にしない材料を使っています。
また、表面塗装に関しては植物由来の原料を使ったバイオマス塗料を採用しながらも、一定の性能を担保しており、人にも環境にも良いというのが商品仕様として大きな特長になります。
創業以来70年、当社床材の製造工場(群馬県沼田市)を支えてくださっている群馬県への恩返しと、多くの木材を使用している工場の責務として、今回、県有林整備パートナー事業実施協定を通じて、森林整備に協力をさせて頂くことになりました。
森林整備への正しい理解を深めるために、林業従事者である鈴木さんからお話を伺いたいと思います。
私たちのような企業が資源のリサイクルを積極的に行おうとしている。このことに対してご印象と、現状でお困りになっていることはございますか?
鈴木様
(林業現場作業員)
そうですね、例えば松食い虫の被害で枯れた木は材木として扱われないから、そんな木をチップにして基材として扱っていただければ環境にとってもいいですよね。山にとってもいいし、松食い虫は木を伐ることによって減るので。両方にとっていいかなと思います。
森林の未利用材や建築廃材をリサイクル
吉谷
吉谷なるほど。サステナブルフロアーの基材には森林の未利用材や建築廃材をリサイクルして資源を無駄にしないリサイクル基材を使っていますが、他にもそういう材料が使えるといいですね。
鈴木様
鈴木様そうですね、建築とか構造物の材としてはまったく使えないのでね。
吉谷
吉谷以前、群馬県庁の方とお話ししたときに、群馬県ではナラ枯れが多いと聞いていたんですが、松も被害を受けているんですね?
鈴木様
鈴木様松の方が先でしたね。
千葉県の海岸沿いは壊滅状態になっていて、それがどんどんどんどん群馬あたりまで来て。ナラ枯れは新潟県が大変なことになっているんですよ。それが今、群馬県まで越境してきた感じです。
吉谷
吉谷北からの松食い虫と南からのナラ枯れが迫っている間にいるって感じですね。
枯れた木は利用価値がないというのが現状ですか?
鈴木様
鈴木様チップにすることはあるのですけど、基本的にはあまり使い道がないですね。
吉谷
吉谷当社が大大的にリサイクル材ということを謳わせていただいて、そういった困っていることを積極的に広めさせていただくというのは、林業さんにとってもメリットがあることになりそうですね。
鈴木様
鈴木様ただ、そういった枯れた木を出すのも奥地とかで伐ると、材と同じだけの手間がかかるという問題はあります。
吉谷
吉谷それはどういうところがネックになるのでしょうか?
鈴木様
鈴木様そうですね、やはり作業道ですかね、山から出すための道の問題です。
吉谷
吉谷道を作るための人材不足ということでしょうか?林業のことを調べてみると従事者の方が高齢化しているために山が放置され荒れた森林が増えているとか、管理するにも厳しい面があると聞いたことがあるのですが、顕著に現れているのですかね?
鈴木様
鈴木様条件がいい場所だったらいいんですが、昔の人は条件が悪いところにも結構、植えたもので。笑
例えば、ここなら道が近いのでなんとかなるけれど、道が無いようなところにあると・・・
吉谷
吉谷ああ、そういうことですか。
鈴木様
鈴木様例えば、ここなら道が近いのでなんとかなるけれど、道が無いようなところにあると・・・
吉谷
吉谷そこからひっぱり出してくるのが大変ですよね。
そういうところほど手を入れないといけない。
鈴木様
鈴木様まあ、そういうところもありますよね。
吉谷
吉谷群馬県ではそういうところは多いんですかね。
鈴木様
鈴木様結構ありますね、条件不利地といってそういう事業も群馬県でやっています。
吉谷
吉谷沼田市のエリアは、まだ道は通っている方なんですか?
鈴木様
鈴木様通っているところもあるのですが、まったく通っていないところもありますね。
吉谷
吉谷そういった課題もサステナブルフロアーのコンセプトカタログで広く伝えていきたいと思います。
林業ってなんだろう?林業という産業があることは、社会に認知されていると思いますが、具体的にどのようなことが行われているのか、知られていない・伝わりにくいというもどかしさがありますよね。
鈴木様
鈴木様今回のこのサステナブルフロアーは住宅会社などで使われるのですか?
吉谷
吉谷そうですね、住宅の床材として広くご採用いただく予定です。
普段の生活をされる中で床を意識して見られることはありますか?
鈴木様
鈴木様いい木使っているなとか、これ合板かな?とか。
やはり職業柄見ますよね。
吉谷
吉谷この床はサネの形状が特長で、そこに特許を持っています。
リサイクル基材って原料にいろいろなモノが含まれてるので膨らんだりしやすいので使いこなすのに難しいことが多いんです。
鈴木様
鈴木様そうでしょうね。
リサイクル基材を積極的に使おうという動きが加速
吉谷
吉谷なので、リサイクル基材を開発しているメーカーと、いろいろ工夫をして膨潤を抑えるような密度にしたりとか、広がったとしてもサネが吸収して目隙とか突き上げとかになりにくいような工夫をしています。
現在、ウッドショックとか国際情勢の関係で海外からの合板が入りにくくなっていることや環境意識が高まっていることで、リサイクル基材を積極的に使おうという動きが加速していくだろうと思っています。
鈴木様
鈴木様それが、こうやって活用されればいいですねぇ。
吉谷
吉谷実はリサイクル基材を床材として長年活用しているのがパナソニックぐらいなんですよ。
当社では業界に先立って2007年から採用していまして、ここまで15年くらいリサイクル基材を活用しているという実績があります。
鈴木様
鈴木様へえー、そんなに!?
吉谷
吉谷例えば、リサイクル基材って細かいものを集めているので、ラインで加工した際に、サネのところが破損することがあるんですが、刃物の調整とか加工精度にこだわり抜いた結果、今ではコンマ数ミリの世界でサネの加工精度を上げています。
飛ばないように密着を強くしていて、これは当社技術なんですよ。
もし他社がリサイクル基材で床をつくりたいと考えても、ここまでの加工精度は出せないと思います。
触っていただくとわかると思いますが、かなり硬いんですよね。
鈴木様
鈴木様ほんとだ、硬いですね!
印象以上に硬いんですね。
吉谷
吉谷リサイクル基材というと脆いという印象ですが、どの層で切るかというのもちゃんと考えていて、そういうところが当社が誇れる技術だと自負しています。
なんか自慢になって申し訳ないですけど。笑
鈴木様
鈴木様そうなんだ。笑
山はすべてとつながっている
吉谷
吉谷環境意識という面でいうと、様々な場所でSDGsやサステナブルという言葉が飛び交っていますが、林業というお仕事にとって持続可能とはどういうことなのかお聴かせいただけますか?
鈴木様
鈴木様人だけではなくて様々な生き物にとって住みやすい環境をつくっていくということですかね。
吉谷
吉谷今、森に生息し、森で命を育んでいる動植物たちという意味ですか?
鈴木様
鈴木様森もそうですけど、例えば赤トンボがいるじゃないですか、あれは田んぼで卵を産み、田んぼで孵って、一度山に来るんですよ。田んぼで羽化したとき、まだオレンジ色なんですよね。
そいつらが最大では50キロとか旅をして山に来て、また田んぼにもどって産卵するんですよ。
避暑みたいに山に来て、小さな虫を捕食して、また下に戻るというサイクルをやるんですよね。
山はすべてとつながっているので、いい環境...山にしても田んぼにしてもいい環境をつくることが結局人間にもいいことにつながる。
吉谷
吉谷赤トンボの生態系サイクルって山と繋がっているんだ!? ジーンと心に響きました。
私たちメーカー目線では、なかなか自然の営みを感じることがないので、貴重なお話です。人間のことしか考えられない部分が多々あると思うんですよね。
鈴木様
鈴木様まぁ、それは、しょうがないことですね。
吉谷
吉谷でも、そういうことこそ脈々と伝えていかないといけないと感じました。
鈴木様
鈴木様昔と違って、田んぼの環境が悪いということもあって、赤トンボの数も1/10とかになっています。赤トンボって1日に自分の体重の半分の重さの虫を食べるらしいんです。
例えば赤トンボの数が1/10に減るじゃないですか、1/10になったということは、山に来て虫を食う捕食者が減ったということなんですよね。
吉谷
吉谷そうすれば山にも影響があるということですか?
鈴木様
鈴木様そこが繋がっているんですよね。
思うに、基本的に虫が原因で、ナラが集団的に枯れてしまう、ナラ枯れなんかも、そういったことの影響なんじゃないかと思います。
捕食者が減れば、捕食数が減るわけだから、今まで抑えられていた害虫がドカンと増える。
ナラが枯れて、そして山がおかしくなれば、もちろん水源地が荒れる訳だから人間に返ってくるわけですよね。ほんとは一大事なんですけど、みんな知らないですよね。
吉谷
吉谷害虫を食べてくれるトンボが減ったということで・・・ まわり、まわって人間に返ってきているわけですもんね
鈴木様
鈴木様そうですね、ナラが枯れて、そして山がおかしくなれば、もちろん水源地が荒れる訳だから人間に返ってくるわけですよね。
吉谷
吉谷ナラ枯れ、ナラ虫(カシノナガキクイムシ)が増えているんだなーといった程度にしか受け止めてなかったのですが、いや、深いですね、繋がっているというのは。それは、本当に一大事ですね。
鈴木様
鈴木様ほんとは一大事なんですけど、みんな知らないですよね。
吉谷
吉谷私も全く知らなかったです。今回は当社工場が群馬県にあるという繋がりからこういった活動を始めさせていただきましたが、森林を維持するとか、そういう取り組みを企業側が協働してやっていくということに対してどのように感じますか?
鈴木様
鈴木様うーん、まぁ、まずは理解が欲しいです。 なぜこういうことをやっているのかという、そういった理解が欲しいですよね。
植えて終わるものじゃない
吉谷
吉谷林業という生業の本質をみんなが理解するということですよね。
県有林整備パートナーは、植樹じゃなくて育樹、つまり、間伐や除伐を推進する内容となっています。
社内では「植樹じゃないの?」という意見もありましたが、実際は植えて終わるものじゃないですから・・・
鈴木様
鈴木様そうですね。
美しい森をつくりたいのなら、いろんな雑草の下刈りもしないといけないし、まあ、数年も経てば蔓なんかも巻いてくるから、そういうのも切ってやんないといけないし。
木が大きくなってきたら空かしてやらないと生命力も貧弱になるしね。
唐松とかでも、なんでもそうです。その種類があって、それに適したやつしかいないみたいな単層的な山になっちゃうから、ずっと手入れし続けないとね。
吉谷
吉谷そういった認識がまだまだ乏しいのが現状なので、企業として林業への理解を社会に広めていきたいと思います。 ありがとうございました。
錦繍の山々に抱かれる群馬工場
ビジネスのお客様
各種データのダウンロード
Panasonic製品のご提案にお役立てください
プランイメージ
URLをシェア
コピーしました
このプランで使用している商品