西田 佳史(にしだよしふみ)先生子どもがアクティブになれる
住まいの環境デザイン

日本における子どもの死亡原因の第1位は事故※1。小さな子どもの場合、住宅での事故が7割※2近くを占めており、親として心配が尽きません。子どもの日常生活行動から傷害予防工学の研究を行っている、産業技術総合研究所の西田佳史さんにお話を伺いました。

「知りたい・見たい・触りたい」。子どもの好奇心を伸ばす、安心安全な住まいの環境

「『思ってもいなかったことで子どもの事故が起きた』と思われがちですが、小児科の先生から見ると『また同じ事故』というケースが多い」と話す西田先生。事故のパターンを知れば、予防策を講じることができますが、親が24時間見守っていることは不可能です。家の中での生活行動を観察し、安全な環境をデザインすることで、子どもの事故を未然に防げます。
安心安全な住まいであることは、「知りたい・見たい・触りたい」という子どもの好奇心や探索行動を許容することができます。「親は目を離しても大丈夫だし、子どもはいろいろチャレンジできる。だから子どもはノビノビ育ちます。アクティブ(活動的)と安全は両立できるのです」。

※1 全世界の統計でみると、年間90万人近い子どもたちが不慮の事故で命を落としている。また、ほとんどの国で1歳から18歳までの子どもの死因の第1位が不慮の事故であることをWHO(世界保健機構)が報告している。(出典:『子どものからだ図鑑』独立行政法人 産業技術総合研究所 デジタルヒューマン工学研究センター他)※2 12歳以下の場合。(出典:『医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故 -子ども編-』平成25年3月 独立行政法人 国民生活センター)

  • POINT1 子どもの事故が多いのは、なんと家の中!
  • POINT2 事故の多いリビングは、子ども目線に立つと危険がわかる
  • POINT3 キッチンの熱源は、手が届かないところへ

西田先生のプロフィール

産業技術総合研究所 博士(工学) 西田 佳史(にしだ よしふみ) 先生

1998年東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了。現在、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人間情報研究部門 首席研究員。人間の日常生活行動の観察技術とモデリング技術、傷害予防工学、キッズデザインの研究に従事。子どもの事故防止に関する工学アプローチの実践的研究を通じ、安全知識循環型社会の実現を目指している。

※西田佳史先生の専門家としての見識をお伺いしております。西田先生がパナソニック商品を推奨しているわけではございません。

POINT.1子どもの事故が多いのは、なんと家の中!

1歳児の事故が起きた場所 子どもの事故の実態をつかめば、事故は未然に防げます!
POINT1

子どもの事故が多く起こるのは、外ではなく、なんと家の中!

調査によると、子どもの事故が一番多く起こるのは、道路などの外ではなく、なんと家の中! 日中、子どもが過ごす時間の長いリビングでの事故が多発しています。ケガの種類は「1位:転倒・転落、2位:誤飲・誤嚥、3位:衝突、4位:やけど、5位:はさむ」の順に(1歳児の場合)。重症や死亡に至る事故は、ミニトマトやおもちゃなどを誤って飲み込むケースが多く、窒息による悪化をまねきます。薬品を誤って飲むと重症化するケースが多く、またベビーベッドや出窓など高い場所からの転落も非常に危険です。「子どもの身体の部位サイズや行動特性を科学的に把握して、住まいの安全な環境デザインに活かしていくことが非常に重要」と西田先生は話します。

1歳児の事故が起きた場所 子どもの事故の実態をつかめば、事故は未然に防げます!

※この調査は、傷害サーベイランスシステムを2006年11月より国立研究開発法人 国立成育医療研究センターに導入し、2011年8月までに収集した15,159件の傷害データより分析したものである。(出典:『子どものからだ図鑑』 企画・監修:独立行政法人 産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センター、公益社団法人 日本インダストリアルデザイナー協会、特定非営利法人(内閣府認証NPO) キッズデザイン協議会)

POINT.2事故の多いリビングは、子ども目線に立つと危険がわかる

POINT2

事故の多いリビングでは子どもの目線で危険箇所を回避して

3歳児の目線でどう見えるのか、テーブルの高さや椅子を大きくして体感してもらう展示を西田先生が行ったところ、親たちから「自分の目線にいろいろなモノが見え、興味を持って、いたずらしてしまうことがよく分かる」と大きな反響があったそう。「テレビの転倒によるケガやテーブルクロスを引っ張って電気ケトルが倒れてのやけど、床に落ちたボタン電池を飲み込む、携帯の充電器のコードを首に巻きつけるなど、リビングでの事故を防ぐには子どもの目線に立って考え、手の届く場所に危険なモノを置かないことが大切。事故につながりそうなモノはきちんと収納することが予防策になります」。

子どもの目線で室内を見回して、危険なモノは収納しましょう
子どもの目線で室内を見回して、危険なモノは収納しましょう

POINT.3キッチンの熱源は、手が届かないところへ

子どもの年齢に合った手の届く範囲を知って安全策を考えて
POINT3

熱源が多いキッチンには、安全な製品を選ぶ配慮が大切です

キッチンには料理をする際の食材がたくさんあり、つい子どもが手を伸ばしてミニトマトや巨峰などを丸のみして窒息する危険があります。「子どもが小さいうちは食材選びはもちろん、細かく切って食卓に出す工夫が必要ですね」。さらにグリルや炊飯器などの熱源も多く、やけどの危険性も。また冷蔵庫に貼ったマグネットを誤って飲み込んでしまう事故も起きています。また、複数の磁石を飲み込むことで、お腹の中で磁石同士がくっついて、腸に穴が開いてしまったケースもあったそう。
「危険なモノは、子どもの年齢に応じて手の届かない場所に置きましょう。例えば3歳児なら、120㎝以上高い場所、または、100㎝の高さであれば20㎝より奥になる場所に置くことです。排気の温度を抑えた食器洗い乾燥機や湯気が出ない電気ケトル、炊飯器など、安全な製品を選択することが大切です」。

子どもの年齢に合った手の届く範囲を知って安全策を考えて

  • エアーを入れた年齢別の人形を作り、どの高さや奥行きまで手が届くのか、事故予防のために調査。

  • 子どもの指のサイズの模型を1、3、6歳と作り、指を入れてどこまで届くかといったデータを収集。

  • 年齢ごとの子どもの身体の各部位のサイズを示したメジャー。安全性の確認に役立ちます。

※西田佳史先生の専門家としての見識をお伺いしております。西田先生がパナソニック商品を推奨しているわけではございません。