太陽光発電の余剰電力の活用法に悩んでいる人は多いのではないでしょうか。卒FIT後は買取価格が下がるため、余った電力はできるだけ自家消費した方が賢い使い方といえます。ただ具体的に、どのような使い方をすればいいのでしょうか。
この記事では、卒FIT後の余剰電力の使い方、また住宅用蓄電池や電気自動車(EV)を利用して蓄電した電力を自家消費するメリットについて解説します。
FIT制度とは
FIT制度とは、Feed-in Tariff(フィード・イン・タリフ)の略称のことで、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」のことを指します。国が再生可能エネルギー普及のため、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーによって発電した電力を電力会社に決まった価格、決まった期間、買い取ってくれる制度です。家庭に設置されている太陽光発電(10kW未満)の場合は買い取り期間が10年となっており、その間は一定価格で買い取ってもらえます。
また、FIT制度の電気事業者による買取に要した費用は「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」という名目で、電気を使用しているすべての家庭から電気料金の一部として徴収されています。
- 参考「FIT・FIP制度」(経済産業省・資源エネルギー庁)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html
卒FITとは
卒FITとは、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の期間が終了することをいいます。FIT制度は、例えば家庭に設置されている太陽光発電(10kW未満)の場合は買い取り期間が10年のため、11年目からは発電した電力を各家庭で運用することになります。
卒FIT後、買取価格は下がる
卒FIT後、買取価格は下がるといわれています。なぜ買取価格は下がるのでしょうか。主な理由としては2つ挙げられます。
1.太陽光発電設置のコストが下がったこと
FITの目的は、再生可能エネルギーの普及促進です。太陽光発電の導入については機器の購入や設置工事といった初期費用がかかるため、各事業者の収益確保のために高額の買取価格が設定されていました。
しかし、技術の進歩、および太陽光発電の普及が拡大するにつれ、初期費用は徐々に下がっています。そのため、国が「買取価格の抑制をしても事業者の収益確保が可能」と判断し、買取価格の下落につながったと考えられます。
2.再エネ賦課金による負担を抑制するため
再エネ賦課金は買取価格が維持された状態で新規事業者が増加したため、年々上昇しました。そのため、国は買取価格をコントロールすることで、国民負担である再エネ賦課金の抑制を行っています。
■2020~2023年度の買取価格
年度 | 出力10kW未満の買取価格 |
---|---|
2020年度 | 1kWhにつき21円 |
2021年度 | 1kWhにつき19円 |
2022年度 | 1kWhにつき17円 |
2023年度 | 1kWhにつき16円 |
- 参考「なっとく!再生可能エネルギー」(経済産業省・資源エネルギー庁)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/
卒FIT後の余剰電力の使い方は主に2つ
卒FIT後の余剰電力の活用方法には、どのようなものがあるのでしょうか。このテーマでは次の2つについて紹介します。
1.買取をしてくれる電力会社の見直し
1つ目は、買い取ってもらっていた電力会社の見直しです。FIT期間中の買取価格まではなくとも、比較的に高い価格で電気を買い取ってくれる電力会社もあります。特に新電力では、買取価格を10円以上に設定しているところも見られます。
当然、これまでの電力会社を継続するのも選択肢の1つです。現状維持の場合、新規契約料や契約の手続きが不要であるメリットがあります。これまで契約していた電力会社なら信頼感と安心感があります。
買取価格が下がってもこれまでの電力会社と契約を継続するか、多少の金額がかかっても新しい電力会社と新規契約を結ぶかは各家庭のライフスタイルやリソースに合わせて考えることが大切です。
- 参考「電力の小売全面自由化って何?|電力小売全面自由化」(経済産業省・資源エネルギー庁)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/what/
2.住宅用蓄電池を導入して自家消費
売電だけが余剰電力の活用方法ではありません。太陽光発電の電力を有効活用するために住宅用蓄電池を導入し、自家消費することも将来的な光熱費の削減を考えればメリットがあります。住宅用蓄電池はもちろん、給湯器のエコキュートや電気自動車(EV)を一緒に活用する方法もあります。
住宅用蓄電池の特徴
住宅用蓄電池は技術革新や技術開発が進み、未来のエネルギーシステム機器として期待されています。このテーマでは、住宅用蓄電池の特徴について解説します。
住宅用蓄電池の特徴
蓄電池とは、繰り返し充放電可能な電池のことで、いわゆる「バッテリー」のことです。蓄電池にはいくつか種類がありますが、家庭用として使用されるもののほとんどはリチウムイオン電池です。身近には、スマートフォンやパソコンなどに使用されています。
住宅用蓄電池の大きな特徴は、電力会社から買った電力や、太陽光発電による電力を貯めることで使いたい時に電気を使えることです。また、住宅用蓄電池の容量は大きいもので16kWhほどあり、テレビや冷蔵庫、オーブンレンジなど複数の家電製品に対して一度に電力を供給できることもメリットの1つです。
蓄電池の仕組み(充放電の原理)
蓄電池はマイナス極の金属が溶けることで電子が発生し、電解液に溶けにくい金属を使用したプラス極に電子が流れることで放電が起きます。また、この反応と逆の反応が起きることで充電ができます。
太陽光発電と蓄電池から出力されるのは直流電力であるため、家庭内で使用するためには直流を交流に変換するパワーコンディショナの導入する必要があります。
蓄電した電力を自家消費するメリット
蓄電した電力を自家消費することは、次の2つのメリットがあります。
- 再生可能エネルギーを有効活用できる
- 災害・停電時に備えられる
再生可能エネルギーを有効活用できる
世界規模で地球温暖化による気候変動災害が多発するなか、環境負荷の少ない再生可能エネルギーを有効活用することは環境問題に大きく貢献します。ここ数年、その普及は加速しており、再生可能エネルギーが欠かせない存在になることは間違いありません。例えば、太陽光の光エネルギーは身近な再生可能エネルギーとして電力に変換され、さまざまな家庭でも使用されています。
災害・停電時に備えられる
蓄電池があれば災害時や停電時に備えることが可能です。太陽光発電による電力や、電力会社の電力を蓄電池に貯めていれば、それをいざという時に使用することができます。蓄電池には、停電時に自動で蓄電から給電に切り替わる機能が搭載されているので便利です。
「特定回路バックアップ」「全回路バックアップ」は電力切り替えユニットにより決まります。
環境省によると令和2年度の1世帯が1年間に消費する電気使用量は4258 kWhでした。1日に換算すると約12 kWhになるため、容量12kWhの蓄電池なら充電が満タンの場合、24時間電気を使用することが可能になります。
電気自動車(EV)と連携すれば住宅用蓄電池として利用可能
ここ数年普及が促進されている電気自動車(EV)は住宅用蓄電池として利用することができます。利用にあたっては、次の2点がポイントです。
- 住宅用蓄電池との蓄電容量の違い
- V2Hの連携が必要になる
電気自動車(EV)のバッテリーは住宅用蓄電池と比べると容量が大きいため、多くの電力を貯めておくことができます。
■住宅用蓄電池と電気自動車(EV)のバッテリーの容量比較 ※参考
蓄電 | 蓄電容量 |
---|---|
電気自動車(EV) | 約40kWh~100kWh |
住宅用蓄電池 | 約5~16 kWh |
V2Hとの連携が条件になる
電気自動車(EV)を蓄電池として利用するためには、V2Hが必要です。V2Hとは「vehicle to home(ビークル・ツー・ホーム)」の略語で「クルマから家へ」という意味です。この機器は家と電気自動車間で双方向での電気のやり取りを可能にします。
太陽電池、蓄電池、電気自動車が連携することで、太陽光発電による余剰電力がある場合、電気自動車(EV)、蓄電池に充電、さらに余った電力は売電します。これにより、余剰電力をより有効活用することができます。この時、太陽光発電からの電気は「パワーステーション→V2H→電気自動車(EV)」と交流に変換されることなく直流のまま使用できるので、変換ロスが少ないのも特徴です。
V2Hは電気自動車(EV)を蓄電池として使うことができる利便性の高い変換装置です。今後、電気自動車(EV)の普及とともにさらなる需要が見込まれています。
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