リフォーム・リノベーションのヒント集

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2023/10/23

インタビュー 第2回
「幸福学」住まいに取り入れたい4つのポイント

「幸福学」によると、幸せを感じるには、前回紹介した「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」の4つの因子を、暮らしの中で高める必要がありそうです。今回も引き続き、「幸福学」研究の第一人者である前野 隆司さんにお聞きしています。

「やってみよう」自分でやってみたくなる住まい

やってみよう因子が高まるのは、夢ややりがい、目標をもって成長できる住まいであることです。人にやらされるのではなく、主体的に興味を持ってできる環境づくりが大切になります。

●やってみよう因子が高まる住まいの工夫

【キッチン収納】

引き出し式の収納でポイントなのは、誰が見てもすぐに何がどこにあるかわかりやすく。お箸やコップも見やすく、取り出しやすい場所にあることで、食事の準備など、誰でも進んで参加できます。

【リビング収納】

家族のもので溢れがちなリビングは、片づけやすい仕組みが整っていることがポイント。収納場所が決まっていれば、自分のものは自分で片づけられるようになります。

「ありがとう」周囲とのつながりを感じられる住まい

ありがとう因子は、人と触れ合うことが重要なので、つながりと感謝を感じられるオープンな空間がおすすめです。コミュニケーションが取りやすい空間づくりがポイントです。

●ありがとう因子が高まる住まいの工夫

【リビング動線】

子ども部屋はリビングを通る動線に。孤独感は不幸を感じやすくなるため、家族と自然と顔を合わせることで、一人ではないと感じることができます。また、リビングの床に段差を付けて一段低いスペースの「ピットリビング」をつくったり、大きなテーブルを配置するなど、少しの工夫で自然と家族が集まるリビングになります。

【対面キッチン】

リビングにいる家族と話ができる対面キッチンがおすすめ。小さな子どもの場合、何気なく様子を見守れるようにしておくことがポイントです。見守られていることで安心感をあたえることができます。

「何とかなる」前向きになれる住まい

やってみようと前向きに考えられることが大切。できるかわからなくてもチャレンジする気持ちや、自分は大丈夫と思えることが重要です。

●何とかなる因子が高まる住まいの工夫

【ダイニング照明/壁紙】

目に入る色は、ポジティブ・ネガティブの思考に影響します。部屋の照明も暗いより明るい方が前向きにチャレンジする気持ちが芽生えます。リビング・ダイニングは暖色系の照明を選んだり、色の切り替えができる照明がおすすめです。

「ありのままに」自分らしく個性を発揮できる住まい

自分の好きな、ワクワクするようなデザインを取り入れるなど、ありのままの自分らしい個性を発揮できる空間がおすすめ。長い間暮らしていると、現状の間取りに飽きていることもあるので、新しさ・新鮮さがあるとワクワク過ごせる空間になりますよ。

●ありのままに因子が高まる住まいの工夫

【可変性のある間取り】

引戸を活用することで、空間を自由に仕切ることができます。リビングに引戸を取り入れ、来客時には仕切ったり、用途やライフスタイルに応じて臨機応変に空間を使える工夫をしておくといいですね。

【飾り棚で楽しむ】

好きな小物をよくいる場所や目に入る所に置くのもワクワク過ごせるポイント。好きなものが近くにあると安心感が得られたり、見ているだけで癒されたりします。

幸せの人は視野が広く、不幸せの人は視野が狭くなっているという研究結果があります。視野が狭くなると好きなものや、得意なものなどが見えなくなるのです。そこに、自分の好きなものが視界に入ることで視野を広げる手助けになります。また、夢や目標が明確な人は幸せという結果もあります。好きなものが明確な人の方が幸せと言えます。

リフォームする時に取り入れたい工夫

―― 幸福度が高くなる住まいの工夫はありますか?

開放感がある家や日当たりのいい家は、幸福度が高くなります。リビングには、観葉植物などのグリーンも積極的に取り入れるといいですね。室内には視野の20%くらい緑があると幸せに感じるという研究結果があります。脳は本物と偽物の見分けがつかないので、観葉植物はフェイクグリーンでも大丈夫です。

キッチンだったら、家事を分担しやすいというのもポイントです。1人で家事をする設計ではなく、二人並んで料理ができるようになっているとか、みんなで一緒に家事ができる設計にしておく。家事の負担が多くて、お父さんやお母さんが疲れてイライラしないように、掃除がしやすかったり、食後の後片づけがスムーズになるよう食器洗い乾燥機を取り入れるなど、リフォームで家事がラクになる工夫をしておくのも重要です。

ゴミの分別も意外とストレスに感じることが多いので、どこに捨てるか悩まないサッと捨てられる快適さや設置場所を考えておくといいですね。小さなことかもしれませんが、こういう工夫が幸せに過ごせる住まいをつくるリフォームにつながると思います。

ワークスペースをつくるときのポイント

最近は在宅で仕事をされる人も多いと思います。同時にオンライン会議が入ったりすると、「私はリビングで会議をするから、あなたは別の部屋で…」というようなことも起こります。ちょっとした不便は、みんなで工夫をしたり、会話が増えたりすることになり、家族の団結を高めることにもつながると感じています。
自宅にワークスペースをつくりたくても、それぞれの部屋を作るのは難しい場合は、シェアオフィスみたいな空間をつくるのも面白いかも。部屋に一人で完全にこもらず、家族とのふれあいが持てる工夫を忘れないこともポイントです。

取材協力

前野隆司(まえの・たかし)さん

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授、ウェルビーイングリサーチセンター長。著書に『ウェルビーイング』(2022年)、『幸せな職場の経営学』(2019年)、『幸せのメカニズム』(2013年)など多数。

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