勾配天井と目地に配慮した天井改修
天井の印象的な意匠性と
空間価値の維持を両立
大阪府立近つ飛鳥博物館

安藤忠雄氏の設計による大阪府立近つ飛鳥博物館は、展示内容と建築が一体となった独自性の強い専門博物館。
開館から30年を超える中、安全性と機能性を高めるために天井改修が検討され、パナソニックの不燃軽量天井材 エアリライトが採用されました。
その背景を、府のご担当者さまにお伺いしました。
※本内容は、大阪府公共建築室 ご担当者様への取材(2026年5月に実施)をもとに構成しています。
これからも社会全体で共有する
「記憶と財産」を守っていくために

ACTION
「エアリライト」の採用理由は
勾配天井にも施工できる軽さと、目立たない目地
勾配天井の維持に
必要だった「天井の軽量化」
既設天井は、建築としての魅力でもある勾配天井。特定天井改修にあたっては、告示適合の耐震天井が成立しませんでした。しかし、耐震天井とするために勾配天井を取止める場合は、安藤氏設計の展示空間そのものを変更することになるため、勾配天井のまま特定天井を回避する天井の軽量化という選択に至りました。
さらに軽量天井材を比較検討する中で、軽量天井は天井面に既設にはない目地が生じ、意匠性を損なってしまうおそれがあることが分かってきました。
目地を最小幅にできたのが
「エアリライト」
各社からサンプルを取り寄せ、どの建材が適うのか議論しました。比較検討の結果決まったのがパナソニックの「エアリライト」でした。
目地幅が最小にできたことが大きな採用理由でした。既設天井は白色で光沢や艶を抑えたマットな仕上がり。軽量天井の採用により、目地が発生するのは安全対策上やむを得ないとしても、この意匠性が変化してしまうことを、可能な限り避けたかったからです。
しかし、どうしても目地があることで既設天井にはない目地の「線」が生じてしまいます。この「線」に規則性を持たせることで、違和感を最小限にできるのではないかと思い、いくつかの割付の検討を行い、割付の基点を定め、図面に盛り込みました。
また、施工図では、照明、空調等の設備及び柱の詳細な位置と天井の割付を整理し、円形の天井見切縁などに不規則な違和感が生じないようにも配慮しました。
価値を棄損せず
性能向上を実現。
軽量で「現場」にも貢献
設計段階で検討した工程計画により工期を設定しましたが、資材調達、現場施工の期間に想定外の事態が生じることなく、設定工期を守って完成することができました。また、移設できない大型展示物がある中で、細心の注意を払い養生し、足場を架設して天井改修工事に臨みましたが、施工者にとって軽量な資材は大きな利点であり、ユニットごとの組立は現場の作業効率アップにも貢献していました。
変わらないようで、実は進化した大阪府立近つ飛鳥博物館のこれからに、ぜひご期待ください。

大阪府立近つ飛鳥博物館
日本古代国家の形成過程と国際交流をテーマとする古墳に関する博物館。「近つ飛鳥風土記の丘」全体を一望でき、前方後円形の展示室と展示品が一体感を持ったデザインになっている。
施工性にも貢献する軽さと、
目立ちにくい目地も魅力
エアリライト
一般的な化粧石こうボードの約12分の1の本体質量を実現し、設置時間も約半分に短縮。大地震等による万一の落下時の衝撃も大幅に削減し、室内の安全性も高めることができる。


PROBLEM
古墳文化を伝える
専門博物館としての
ファシリティマネジメント
名称の「近つ飛鳥」とは、古事記に記載がある言葉で現在の南河内地域一体をさします。この地域は、朝鮮半島・中国大陸からの文化受容の最前線で古代国家形成の舞台。近つ飛鳥博物館は、古くはこの地が国家拠点としての役割を果たしていたことを、古墳文化の実物資料と体験的展示で深く学べる専門博物館です。
安藤忠雄氏の設計による建物も魅力で、地上に「黄泉の塔」を配した象徴的空間は展示内容と建築が一体化し、空間そのものが歴史解説になっている点は、他館にはない特色だと思います。
開館して30年を超え、これからも社会全体で共有する記憶と財産を守っていくため、そこにあり続けるためのファシリティマネジメントとして、特定天井の改修が今回のテーマでした。