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2008年8月22日更新

あなたに代わって専門家にお聞きします!「住まいづくりの疑問を解消」

夏に起こる結露の対策とは?


暮らしの工夫や換気で軽減

夏にも結露が起こるのは、ご存知ですか? 冬場の窓ガラスなど表面の結露は気づきやすい一方で、見落としがちなのが夏の結露です。カビやダニが発生してから気づくことが少なくないようです。結露は住まいの老朽化だけではなく、カビやダニの発生などにより健康にも関わってきます。結露は換気設備の活用や暮らし方で軽減することができます。夏に起きる結露の対策を、住宅換気の研究を行っている田島昌樹氏に話をうかがいました。

高知工科大学 システム工学郡 社会システム工学教室 准教授 田島 昌樹 氏の写真

高知工科大学 システム工学群
社会システム工学教室 准教授

田島 昌樹 氏


木材が腐ったり、断熱効果が失われたり・・・、 夏の結露は注意が必要です

Q

冬に起こるイメージが大きい結露ですが、夏にも結露が起こるって本当ですか?

A

夏にも結露は起こります。一般的に夏型結露は、家の中で起きる結露ではなく、住宅の基礎部分や壁の中で結露を起こして濡れることを言います。冬の結露に対して、「夏型結露」と言われています。

●住宅内外の温度差等で壁面内や基礎部分で発生する「夏型結露」

例えば、家の基礎が夜になって冷え、そこに湿った空気が触れて結露します。新築の家では木材がまだ完全に乾いていない場合、温度が高くなると中に含まれていた水分が滲み出て、温度の低い個所で結露することがあります。この結露による影響で、木が腐ったり、断熱材が湿って断熱性能を失ったりという問題が起きます。
冷たいジュースなどを入れたコップに水滴が付くように、コップに当たる建物の躯体が冷えた状態で、地面や木材から発生した水蒸気が触れると、結露が起きやすくなります。リビングで快適に過ごしながら、実はすぐ横の壁の内側は濡れていることもあるのです。
冬の結露は、主に壁などに起きる表面結露と言うもので、目に見えやすいのに対して、夏型結露は、目に見えない部分で起こるため、カビやダニが発生してから気づくことが少なくないようです。

■結露のできる温度と湿度の関係

(出典:有限会社 ADS計画研究所)

■屋外・屋内の温度差から起こる結露

日本の夏の空気は湿気をたっぷり含んでいて、屋外の高温多湿の空気が温度の低い部分に接することで湿気が発生する。


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夏にも発生する結露対策のひとつとして、 24時間換気が有効です

Q

夏には室内で結露は起きないのでしょうか?

A

冬のような目に見えるかたちの結露は少ないのですが、いろいろな場所で、非常に湿度が高くなります。対策として水蒸気の発生を抑えることと、水蒸気の排出を行うことが重要です。また、住宅や生活用品は水蒸気を吸収するので、常に換気を行なうことが必要です。
2003年7月1日の建築基準法の改正で、1時間当たり0.5回の室内換気を実現する24時間換気システムが義務付けられています。

●空気の流れをつくる24時間の計画換気もポイントに

24時間換気システムは、シックハウス対策から設置が義務付けられたものです。空気の汚れには、ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物の他に、湿気や、湿気から発生しやすいダニ、カビなども含まれています。
近年の住宅は、気密性や断熱性に優れているため、窓の開放や換気システムを使用しないと空気の入れ換えができません。そこで、空気の流れをつくり出す24時間の計画換気が結露対策でもポイントになります。計画換気によって、結露の原因や建物を老朽化させる湿気を排出し、湿気の高い環境を好むカビやダニの発生軽減に一定の効果があります。
結露対策を考えると、住んでいる人の健康だけでなく、建物の健康にも24時間換気システムは、欠かせないことが分かります。

住宅や生活用品は水蒸気を吸収するので、常に換気が必要。


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換気設備の能力を最大限に活かすには、 定期的なお手入れが大切です

Q

換気扇の上手な使い方はありますか?

A

換気扇の能力を十分に発揮するために換気扇の使い方と同時に、お手入れが大切です。汚れは換気扇の能力低下だけではなく、エネルギー効率の低下や、換気設備の故障にもつながりかねません。定期的なお手入れが大切です。

●換気扇のお手入れについて

家の中の空気を絶えず動かすのに一番有効な方法は24時間換気システムを使うことです。併せて、台所のレンジフードファンやバスルームの換気扇などの局所換気も使用するとよいでしょう。
2004年以降に竣工した家を対象に、換気扇のお手入れ状況を調査したところ、1年に1回以上掃除している人が過半数を占めたものの、屋外フードを掃除していない人が大多数に上り、掃除が十分でないことが分かりました。屋外フードの位置を知らない人もかなりいます。
換気扇は汚れたままでは能力を十分に発揮できません。屋外フードは汚れで詰まってくると、空気がほとんど流れなくなり、湿気やニオイを排出したりすることができなくなってきます。そのため、定期的なお手入れが大切なのです。

お手入れのしやすさを考えた、屋外フードの設置も大切(手の届きにくい2階外壁に取り付けられた屋外フード)。

汚れで目詰まりしやすい防虫網のついた屋外フード。


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家の中の湿気と結露対策は、場所ごとの 空気のよどみをなくす工夫を

Q

夏の結露には具体的にどんな対策がありますか?

A

結露は壁や窓ガラスなどに空気中の水蒸気が凝結して水滴が付く現象です。水蒸気の発生を抑えること、発生した水蒸気は排出することが基本です。エアコンによる除湿や換気扇による排湿、また窓を開放して湿気を除去することが基本的な対策となります。
湿気の発生場所は、浴室や洗面室、キッチンなどの水まわりを中心に家の中には多くあります。タンス、戸棚、本棚、ベッド、ソファーなどが壁に接していると、家具の背後で空気がよどみ、建材や家具に水蒸気が吸収されてカビが発生しやすくなります。
家の中でも押し入れの中などの湿気の対策では、よく置き型の湿気シートなどが置かれますが、これで湿気の原因を取り去っているわけではありません。空気が滞留しないような工夫が必要となります。
次に具体的な部屋ごとの対策を紹介します。

■カビ発生の温度と湿度の関係

カビが発生する条件は、「温度15℃以上、湿度75%以上」の高温多湿。最近の日本の住宅は気密性や断熱性が高く、湿気と温度が保たれやすいことから、カビが繁殖しやすい環境に。

●押し入れ

戸棚・押し入れは密閉空間のため空気がよどみ、湿気がたまりやすくなります。湿気は隅、下板が要注意ですから、スノコを入れて空気が流れる隙間をつくるとよいでしょう。以前、押し入れの戸を開けて、部屋の中の空気を2〜3時間入れる実験をしましたが、その程度の換気では、押し入れの中を十分に乾燥させることはできませんでした。常に空気が流動するようにしておく必要があります。
建材とか、じゅうたんなど、吸湿量の多い素材を利用することも考えられますが、逆に水蒸気を含んで飽和してしまうと、排湿に時間がかかります。
湿気のたまりやすい押し入れは、布団は、一晩で200gくらい水分を吸うと言われていますから、それを押し入れの中に入れておくと、そうとうな湿気が押し入れの中にたまります。梅雨の晴れ間は布団を干したり、押し入れのものを外に出して、日光に当てたり、風通しをよくすることが必要です。夏場は寝汗をかきやすいので、なおさら晴れの日に布団を干すなどして対策をする必要があります。
ジメジメ対策は、冬だけでなく夏場も必要です。

押し入れやクローゼットなどは密閉空間のため空気がよどみ湿気をためやすい。

●下駄箱

下駄箱は湿気がたまりやすい場所です。夏に雨で濡れた革靴が、下駄箱に入れられたままになりカビが生えるといった失敗は多くの人が経験しています。夏は下駄箱内の温度も高くなるので、カビが生えやすい環境になっています。密閉した小さな空間ですから、空気を入れ換える工夫が必要です。夏は扉を閉め切りにせずに少し開けておくだけで、ずいぶん空気が入れ換わり、湿気を防ぐことができます。

下駄箱は湿気がたまりやすく、カビが生えやすい環境。

●本棚・ローボード・タンス

背後に2cm以上の隙間を空けて、風通しをよくすることで、家具と壁の密着部分に起こるジメジメを緩和すると言われています。
本棚の本は湿気を吸い込みやすいので、本棚に本を入れる際も隙間を空けておくことが必要です。また、本は湿気を吸い込みやすいため、昔からの方法ですが日に当てたり風にさらしたりする虫干しも有効でしょう。紙に付着した湿り気を防ぐだけでなく、取り除くことができます。
タンスも引き出しを外して、虫干しをおすすめします。その際に新聞紙などで代用している吸湿材も取り替えることをお忘れなく。

●キッチン

料理を作っていると、どうしても空気中に水分が多くなります。拡散した水分と臭いが、壁や天井だけでなく、床に敷いてあるカーペットやじゅうたんなどの布製品にも、付着しやすくなります。それが原因で、室内全体が湿気を帯びる原因となります。料理を作る際にも、キッチンの換気扇を使用して、室内に外気を取り入れ、水蒸気を排出することが必要となります。

食器の乾燥が十分でないと湿気がこもり早く戸棚を傷める原因に。

●食器棚

お皿を洗った際に乾燥が十分ではなく水分が残っていると湿気がこもり、早く食器棚を傷める原因になります。ホコリなどが入って汚れるという人もいるかもしれませんが、戸棚を少し開けておくと、空気が入れ換わりやすくなります。

●浴室・洗面

浴室・洗面室はもともと湿気がこもる場所ですが、時々風を通して乾燥させると、カビなどの被害を抑える効果があります。シャワーなどお湯を使った後にガラス面や壁が濡れますが、これもスクイージー(水かき)などで水滴を落としたり、タオルでざっと拭いた上で、換気扇を運転しておくと乾燥が早くなります。

根本的な対策としては、空気がよどまないようにする。空気を動かすことが重要です。どうしても家具の配置などでそれができない場合は、定期的に、できれば季節の変わり目に家具を動かして床と壁、家具が接する隅を点検するなどしてみるのも対策になります。

もともと湿気がこもりやすい浴室は、使用後の水滴除去や通風で乾燥を。