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リノベーションによる性能向上やリフォームなどのメンテナンスにより、住まいの寿命や価値が大きく変わってきています。中古住宅が以前よりも多く流通する中、必ずしもいい物件ばかりとは言えません。少しでもいい物件を探したいとは誰もが思うこと。そこで、中古住宅を選ぶ際に気をつけたいポイントについて、不動産コンサルタントの長嶋修氏にお話を伺いました。
新たなルールづくりで取引がしやすくなるなど、ますます注目される中古住宅。
年間の流通戸数では、新築住宅の120万戸に比べ、中古住宅は20万戸、新築の6分の1くらいです。これまで、日本の住宅政策は新築住宅を次から次へつくり出すというものでしたが、それを転換して、中古住宅と賃貸住宅の流通を促進させようと、「住生活基本法」が2006年6月に動き始めたところです。中古市場の整備が進めば、中古住宅の取引もしやすくなり、ますます活発になってくると思います。
中古住宅の流通に欠かせないのが“質”と“適正な価格”です。
ところが、購入時に不動産仲介会社などに物件情報を求めても、間取り図や物件概要などの最低限の情報しか得られません。現地に行って建物を見るときにも、査定する人は表面しか見ていないのが現状です。骨組みや構造、耐久性など、よく調べなければならない部分が調べられていないため、価格付けや品質が不透明になってしまっています。
そこで、基本情報(設計図面、補修履歴、施工中の記録)などをデータベース化して、中古住宅市場の整備を進め、流通を促進させようとしています。
快適なライフスタイルに合わせて中古住宅を選択する人も増えるなど、関心も高まっている。
これまでは、「新築が買えないから中古に」というような、中古住宅の位置付けが低すぎる風潮がありました。これからは、年月を得て風合いの出てきた建物や街並みに価値がつく時代になることを考えると、質のいい住まいを見つけることができれば、とてもお買い得だと思います。
個性の多様化が言われる中、自分の生活スタイルに合った方法を考えて中古住宅を選ぶ人も確実に増えています。
そこで注目されているのが、専門家による建物の良しあしを見極める、インスペクション(建物調査)です。
まず最低限、建物がつくられた当時の設計図面が一通り残っているかどうかがポイントです。「A1」でも前述していますが、「設計図面」、「補修履歴」、「施工中の記録」がないものは、見分ける指標がなく、適正な価値が付けられません。そして、表面から見えない部分の骨組みや構造、躯体などは、専門家に見てもらうとよいでしょう。
設計図面などの記録が残っているかどうかが、一つの判断基準に。
“住まいの履歴書”とも言える書類やデータ類は、その住宅を見分ける指標になります。ところが、実際には、設計図面が残っていない建物も少なくありません。まず、その確認が重要です。
具体的には、「設計図面」と言うのは、間取り図だけではなく、「立面図」、「伏図(ふせず)」などの工事用の図面一式がきちんと残っていること。
次に、保守や点検を記録した「補修履歴」が残っていること。自動車の点検簿みたいなもので、「いつ、どこを、どう修理した、リフォームした」というものです。フォーマットは問いません。
3つ目にできれば、施工中・工事中の記録が残っていることです。これは、現場写真なども有効です。
目視できる部分同様に、見えない部分は専門家に頼むなど、しっかりチェックしたい。
市場整備が始まったばかりの中古住宅は、ほとんどが築年数を基準に価格が決められているのが現状です。そこで、表面からは見えない部分の骨組みや構造、躯体がしっかりしているかどうかを見極めることができれば、いい物件を手に入れることが可能です。
その時に活用したいのが専門家による調査、インスペクション(建物調査)です。建築現場や設備に詳しい人、建築士などの専門家に調査を依頼するものです。欧米ではインスペクター(建物調査専門家)と呼ばれています。
7万〜20万円程度の費用(調査内容により異なる)は発生しますが、数千万円の大きな買い物だからこそ、信頼のおける専門家に調査をしてもらうと安心です。
惑わされやすいのが、「内装リフォーム済み」、「外装リフォーム済み」などの宣伝です。繰り返しになりますが、表面よりも大切なのは、骨組みや構造、躯体部分です。戸建て住宅もマンションもすぐに中を見るのではなく、その建物の周りを一通り回ってよく見てください。地面と基礎の間を見るだけでも地盤沈下などが分かります。
建て付けの不具合などは、構造に問題がある場合も。遠慮せずにしっかりチェックを。
建物の周りを見て、もし地面と基礎の間に隙間があったら、地盤沈下している疑いがあります。基礎のひび割れも目視で分かります。
住宅の中では、間取りの感じや設備の使い勝手など、目に入りやすい部分ばかりに注意がいきがちです。もう一歩踏み込んで、ドアや建具などの建て付けをチェックしてみましょう。
しっかりつくられていない建物は、経年変化でゆがみが生じてきます。動きが鈍かったり、隙間が大きく空いているのは構造の問題が考えられます。
床下収納や押入れなどにある点検口も覗いて見ます。床下は乾燥しているのが普通です。湿っているようなら、シロアリや木部の腐食などの可能性も捨て切れません。点検口からのチェックに、懐中電灯も忘れずに持参したいものです。
必ずチェックしたい点検口。
住まいの状態を知る“情報源”の一つです。
マンションでチェックしたいのが通路、廊下やポストなどの共有部分の状態。
マンションが戸建てと大きく異なるのは、専有部分(=自分の所有部分、玄関ドアから部屋の中)と共有部分があることです。専有部分は戸建てと同様にチェックをします。
共有部分は定期的な点検とほどよいメンテナンスをされているかが重要です。それにより、耐久性や耐用年数が変わってきます。共有部分のひび割れや、汚くなっているのが放置されているような場合は、マンション管理組合で具体策が講じられていないということです。それは、耐久性に影響し、資産性にも大きく影響してきます。
管理の質がマンションの良しあしに関わっています。購入を決める前に、住人の方の話や場合によっては、マンション管理組合の役員の方に運営状況や総会の議事録を見せてもらうのも一つの方法です。
リフォームで一番大事なのが「可変性」です。変更の自由度やリフォームで段差が生じないかなどのチェックは必ずしておきたいものです。パートナー選びは、注文どおりの見積もりを出すだけではなく、プロの提案をしてくれるパートナーを選ぶとよいでしょう。
特に水まわりの移動を伴うリフォームは、事前に仕上がり状況を確認したい。
例えば、水まわりの位置を変更したい場合に、マンションなどでは床に段差をつけなければリフォームをできない場合があります。そこで、中古住宅の場合、可変性があるかどうかが大事なポイントです。
イメージするリフォームが実現可能なのか、天井や床のレベル(段差)がリフォームによって変わるのか変わらないのか、ということは必ず確認をしておきましょう。将来、住み続けることを考えても、バリアフリーに逆行するような段差のある床では、快適性も損なわれてしまいます。
また、スケルトン・インフィル(SI)という工法で建てられた住宅では、構造部分と内装や設備部分とを分けた設計がされているため、可変性が高くなっています。
リフォーム会社が多くある中、価格や値引き競争に走りがちですが、見極めたいのは、快適に住むためのリフォームを具現化してくれるかどうかです。
見積もりの時に現地や図面を確認するかどうかもポイントです。もう一つは、注文どおりの見積もりではなく、付随する工事や仕上がり説明などのプロの提案をしてくれるかどうかです。仕上がりを見てから、ここを提案してくれたらよかったのにというのも少なくはありません。
見積もりも「本体工事一式」で出してくるような会社よりも本体工事部分はできる限り詳細に書かれているところを選ぶとよいでしょう。
快適なリフォームを実現するためにも、パートナー選びはしっかりしたいものです。
小規模な工事でも見積りは必ず取りましょう。
「?@見積書」の記載で欠かせないポイントは、?A使用材料の銘柄・仕様等、?B単価等は一式ではなく数量や単価等を明記、?C工事に伴う「解体・廃棄物処理費」や「諸経費」、?D見積書有効期限です。
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※(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターが運営するリフォーム支援ネット「リフォネット」からダウンロードした標準契約書式(住宅リフォーム推進協議会作成)をもとにモデルケースとして作成しました。必ずしも、それぞれの地域の実勢価格を反映したものではありません。