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住まいづくりの成功の一端を担う「土地」。建てたいイメージの住まいを実現できるのか、家族で快適な暮らしができるのか、といったことも土地に関わってきます。分かりにくい土地の値段をはじめ、少しでも条件のよい土地の探し方や選び方は、ポイントがわかれば心配ご無用。そこで、不動産鑑定士で、都市開発研究所の平澤春樹氏に土地の探し方のコツをお伺いしました。
「一物多価」とも呼ばれ、分かりにくいのが土地の価格。広さや立地に関わらず、様々な諸条件によっても価格が異なります。同じ一つの土地でも「一物四価」という4種類の価格がありますが、それらの価格から、購入したい土地の相場を知ることも可能です。
よく耳にする「一物四価」というのは、一つの土地に対して、「実勢価格(取引価格)」、「公示価格」、「路線価(相続税評価額)」、「固定資産税評価額」の4つの価格のことを言います。土地が実際に売買される価格が実勢価格です。その価格が高いのかどうかを知るには、「路線価÷0.8」もしくは、「固定資産税評価額÷0.7」で算出された金額が目安になり、近隣地の公示価格と比較して大差がなければ妥当な価格と言えます。
<実勢価格> | <公示価格> |
---|---|
●実際の取引価格の時価 取引相場を形成する価格 ※「路線価÷0.8」もしくは、「固定資産税÷0.7」程度とされる。 |
●国土交通省実施の公的指標 1月1日現在の土地の価格 ※国土交通省ホームページ、図書館などで閲覧可能。 |
<路線価> | <固定資産税評価額> |
●相続税評価の基準 財務省発表の1月1日現在の価格 ※税務署、図書館などで閲覧可能。 |
●固定資産税評価の基準 市町村発表の3年に1度評価見直し ※市町村役所などで閲覧可能。 |
公示価格は、更地の状態での価格のため、建物が建っている土地を購入する場合は異なります。また、方角や周辺環境、売主と買主の事情(買い急ぎ、売り急ぎなど)によっても左右されるなど、見極めが難しいのが土地の価格です。 正確な価格を知るには、不動産鑑定士に依頼することになります。鑑定料が15〜20万円程度はかかりますが、数千万円の大きな額の取引をするのであれば、安心料と考え、鑑定を頼むと安心です。
(単位%)
平成15年 | 平成16年 | 平成17年 | |
---|---|---|---|
三大都市圏 | △6.5 | △5.7 | △3.7 |
東京圏 | △5.6 | △4.7 | △3.2 |
大阪圏 | △8.8 | △8.0 | △5.2 |
名古屋圏 | △5.6 | △4.9 | △3.3 |
地方圏 | △5.1 | △5.7 | △5.4 |
全国 | △5.8 | △5.7 | △4.6 |
※国土交通省『地価公示』より作成
全国平均で引き続き下落しているものの、下落率は縮小方向へ。
不動産仲介会社をはじめ、住宅情報などの雑誌、広告、インターネットなどで情報を得ることができます。特にインターネットでは、不動産流通業界団体による売主と買主の希望物件をマッチングさせるデータベース(レインズ)が公開されるなど、個人でも情報を集めやすくなってきています。
従来の不動産仲介会社から情報を収集するというスタイルから、個人でも不動産仲介会社と同等の情報をインターネットやオークションなどから、情報を集めやすい環境になってきています。不動産オークションは、株式市場の情報開示の原理を不動産取引に応用したもので、その魅力は、売買に関わる判断材料を事前に入手して検討することが可能です。
売買に関わる情報を収集しやすくなったとは言え、その土地がいい土地なのかどうかは判断がつきにくいのが現状です。そういった背景から、買主の利益を最大の目標にする「バイヤーズ・エージェント」という仲介のキーマンが2002年に誕生しています。期間契約の1人雇い上げのシステムで、買主の利益を優先にジャッジしてくれます。営業マンの執拗な営業に煩わされることなく、いったん不動産屋に入ったら、契約しない限りは出てこられないのではないか、といった不安も解消されます。
それぞれのライフステージや、年齢、予算等もありますが、本当にいい土地を見つけようとするのには、まず、「自分のイメージに合う、ロケーションを探す」ことです。その次に、「建てたい家が実現できるか」ということです。
住宅でもマンションの選定でも、一番大切なのが土地選びです。建物の代金はグレードによってほぼ決まっています。中でも、住宅購入費用に大きく関わってくるのが土地代です。その土地代は何かと言うと、ロケーションのことです。つまり、その地域という環境を買っているのと同じことです。
また、環境は抜群でも、高い建物を建てることができない規制があったりすることもあります。建てたい家が具体的に実現できるかどうかも欠かせない条件です。
※国土交通省『平成17年版土地白書』より
2004年の土地取引件数(売買による土地の所有権移転登記の件数)は、1,600,801件(対前年比0.4%減)。対前年比は、ここ数年で縮小傾向が見られ、「平成18年度地価公示価格」のアップした名古屋圏、東京圏では前年比アップするなど、わずかながら市場の動きが見られる。
土地を探し始めても、自分の欲しい条件を決められない方も少なくありません。仲介者がたくさんの物件をお勧めしても、買主自身が決めていない状態では、意思決定にはつながりません。
広さ、価格、安全、周辺環境、利便性、その地域を離れられない理由(子どもの通学区、親の介護等)など、自分のコンセプトをはっきり絞り込むことが大切です。
地図や公図などの情報ではわかりにくい部分は、実際に自分の目で確かめることが大切です。確認したいポイントには、土地そのものに関わる傾斜などをはじめ、周辺環境に関わる南隣接地の状況などがあります。
特に近隣地の状況は、自分の目で確認を。
実際に目にしなければ分からない部分は、現地に足を運んで確認をします。
チェックしたいポイントには、?@傾斜、?A傾斜が大きい場合はノリ面、?B道路との高低差、?C道路との接点、?D近隣地の状況、?E周辺環境(昼夜の人の流れ、公園・保育園・小学校の有無)、?F交通方法、?G嫌悪施設の有無、などがあります。
中でも重点を起きたいのが、?D近隣地の状況です。広い空き地や駐車場などがある場合、将来、大きな建物に変わることもあります。?Fの交通方法は、一方通行が多く車の出入りが不便な場合などもあり、確認しておきたいものです。
現地に足を運ぶ時は、マイカーは使わずに公共機関を利用するのが鉄則です。最寄り駅から(まで)実際に歩くことで、周辺環境を見聞きすることもできます。1度ではなく、平日、休日、昼・夜間など、異なる条件で何度も行ってみたいものです。
手間はかかりますが、家族で散歩がてらに行くなどし、一人の目ではなく、複数の目で見るとよいでしょう。また、複数物件を比較する場合は、同じ条件で比較するとその土地がよく分かります。
※今号では、土地の探し方のポイントをご紹介しました。次号(2006年6月号)では、実際に選ぶとき、契約するときのコツをご紹介する予定です。