暮らしを楽しむ人の心地よい住まい
麻生圭子さんvol.3

「直す」から手に入る、自分だけの美しい暮らし

ロンドンでの暮らしを経て、帰国した麻生さんが辿り着いたのが琵琶湖畔の家。築50年近い建物を、ご主人とセルフリノベーションしました。ほどよく年月を経たようなビンテージ感に、どこから見ても絵になるインテリア。麻生さんの住まいづくりの美意識に迫ります。

光と風に満たされた一体型ウォータールーム

「本当は帰国したくなかったんです(笑)。一生、住みたいと思っていたくらい」というほど、ロンドンの気候、水辺のある風景、自然と親しむ人々の暮らしに魅了されていた麻生さん
。そこに少しでも似ている場所を探してたどりついたのが琵琶湖畔の家でした。

麻生さんのリノベーションのこだわりがいちばん出ているのが、ご自身が「ウォータールーム」と呼んでいる水まわりの部屋。「元が会社の保養所だったので、浴室もトイレ、洗面所も広かったんです。それを1室にまとめたのはイギリスで泊まったホテルがヒントになりました。部屋のなかに浴室があるようなインテリアで、床は絨毯張り、バスタブもトイレも、備え付けではなく、ひとつの家具のように置かれていました。ただ日本だとやはり湿気が心配なので、浴室乾燥機を取り付けました。でも窓が3面、デッキへの外扉もあるので、今のところ大丈夫です。観葉植物を置いたり、タオル掛けや化粧品、収納もアンティークの家具を選んだり。絵も飾って、部屋のように楽しんでいます」と、麻生さんは語りました。

イギリスで出会った「ラスティック」の魅力

ロンドンで見つけた本で、麻生さんは「ラスティック」という言葉と出会いました。飾り気のない、田舎風の、粗削りな魅力を大切にするインテリアスタイルです。「日本でも、アンティークのドアなど『ペンキの剥げた雰囲気がいいから、塗り直さないで』と頼むケースが最近は増えているみたいですね」と麻生さん。ちょっとゆがんでいたり、傷んでいたり、そうした古いものを美しいと感じる人が増えているのかもしれません。
この家でも構造的な工事はプロに任せながら、あとはご自身で行っているのも、「プロにお願いすると、どうしても『きれい』に仕上がってしまうでしょう(笑)。この家では、ほどよく年月を経たようなビンテージ感を出したかったので」と話す麻生さん。
ダイニングキッチンは、もともとのシステムキッチンは撤去して、窓辺を利用したシンプルなキッチンに。収納は、レンガに棚板を渡しただけ。カフェをイメージしてレイアウトしました。他にも、玄関のドアはアンティークのダブルドアに付け替え、麻生さんご自身でペイントをし直しました。鉄細工がいかにもイギリスらしい、麻生さんお気に入りのドアに仕上がったそうです。

美しく飾る、絵になる部屋にする

のびやかな開放感と、ざっくりとしたラフな仕上がり。そんな吹き抜けのダイニング空間を美しく彩るのが、麻生さんが選んだ家具や小物たちです。
玄関からキッチンが丸見えになるのを防ぐため、カウンターとビンテージの脚立に古い楽譜で裏打ちした額入りの黒板を付けることで目隠しを。脚立は、猫がロフトへ上るキャットタワーも兼ねているそうです。また、ロンドンの骨董市で買った象牙のカトラリーは壁飾りに。こうした遊びのアイディアはロンドン時代に吸収したものだとか。「東ロンドンのショップやカフェは、ラスティックそのもの。ディスプレイに遊びがあって買い物するのが本当に楽しかった。この家も、住んでいることが楽しくなる、そんな家にしたいんです」と麻生さんは語ります。

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vol.4
今年の夏、念願だったウットデッキを完成させた湖畔の住まい。
最終回は、ウッドデッキの楽しみ方やこれからの住まいの夢について麻生さんに伺います。

Profile

麻生圭子 Keiko Aso

作詞家として数々のヒット曲を手がけた後にエッセイストに。96年に京都に移住し、町家での暮らしを経験。現在は、琵琶湖の畔で、ご主人と愛猫2匹との暮らしを楽しむ。

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