暮らしを楽しむ人の心地よい住まい
麻生圭子さんvol.1

ご夫婦でセルフリノベーション。風の通う、湖畔の住まい

京都の町家に長く暮らしたエッセイストの麻生圭子さんはいま、琵琶湖畔に建つ築50年近い建物を、ご主人とふたりでセルフリノベーションして暮らしています。
麻生さんは、どうして京都の町家を離れ、琵琶湖のお住まいをリノベーションすることにしたのでしょうか。
この住まいへ辿り着いた、麻生さんのDIYへのこだわり、イギリスで出会ったアンティークの魅力、人生の後半を住まいに手を入れながら楽しむ豊かな暮らし方について、4回に渡ってお届けします。

湖からの風が吹き抜ける、光にあふれるリビング

琵琶湖の湖畔にたたずむ麻生圭子さんのご自宅は、もともとのペンキをわざわざ剥がした板張りの外壁と、建物をぐるりと囲むウッドデッキが印象的な建物です。

リビングに面した大きな窓から室内へ入ると、そこは光にあふれるおおらかな空間でした。天井を抜いてむき出しにした、太い梁。白い壁にアンティークの家具が美しくなじんでいます。薄い布のカーテンを揺らして吹き渡る風の心地よさに、しばしうっとりとしてしまいました。
ひとつひとつに思い出という物語のある家具や小物、器の数々。それらがさりげなく、しかもどこから見ても絵になるように美しく住まいを彩っています。

築50年、会社の保養所だった建物をリノベーション

京都に長く暮らし、京文化や町家暮らしの魅力について多くのエッセイを発表してきた麻生さん。その後、建築家であるご主人の仕事の都合で、ロンドンで1年間を過ごして帰国してから、住まいとして選んだのが琵琶湖畔のこの家でした。
「夫婦と猫2匹の暮らしですから、家は小さくていい。ただできるだけ、湖に近い場所をということで探しました」。そうして見つけたのが、1970年代、ちょうど大阪で万博が開かれた頃に建てられた、もとは会社の保養所だったという建物だったのです。

ただし、その時点ですでに築50年近く。季節のいいときだけ使うためか、断熱材も入っていませんでした。また、長く使われないでいたためか、水まわりの床は腐り、建物にからまったツタが部屋の中まで伸び放題だったといいます。

「紹介してくれた不動産会社の人も、当然、壊して建て直すと思っていたみたいで。私たちがリノベーションして住んでいると知って、かなり驚いていましたね」とおかしそうに話す麻生さん。 壊さないで住むと決めた理由のひとつは、斜めに切り立った屋根を持つシンプルなフォルムや、2階に大きく開いた鉄枠のがっしりした窓といった建物そのものの「形」に惹かれたから。 「それに、家を『直して住む』のは私たちにとって『当たり前』のことでしたから」という麻生さん。夫妻はこの家を、一部はプロの手も借りながらセルフリノベーションで直しているといいます。

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vol.2
麻生さんが住まいを「自分で直す」ことにこだわる理由、これまで暮らしてきた
東京・京都・ロンドンでの住まいと暮らしについてお届けします。

Profile

麻生圭子 Keiko Aso

作詞家として数々のヒット曲を手がけた後にエッセイストに。96年に京都に移住し、町家での暮らしを経験。現在は、琵琶湖の畔で、ご主人と愛猫2匹との暮らしを楽しむ。

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