暮らしを楽しむ人の心地よい住まい
有賀薫さんvol.1

毎朝、スープのある食卓

スープ作家の有賀薫さんが20年近く暮らしたマンションをリフォームしたのは、「新しいキッチンのあり方」を考えたかったからだといいます。日々の食を豊かに、楽しく、そしてシンプルに。有賀さんの提案する、「スープのある暮らし」と「これからの時代の食のスタイル」についてうかがいました。

7年間、毎朝スープを作ってきた有賀さんの新しいキッチン

優しい朝の光がたっぷりと降り注ぐリビング・ダイニング。その一角に、テーブルのように椅子に囲まれた、小さな「キッチン」がありました。スープ作家の有賀薫さんが、「わが家をある種の実験場にして(笑)」、これからの時代を生きる人たちにとって、本当に使いやすく、美味しく食べられて、しかも家事がラクになる「新しいごはん装置」を考えてみたというのです。
95×95センチの四角いテーブルは、中央にIHコンロ、脇に小さなシンクがついています。シンクで洗った野菜をまな板で切り、コンロにかかった鍋に加えていく有賀さん。できあがればそのままテーブルに配って、パンもみんなへ切り分けて。さあ楽しい食事の始まりです。

365日撮りつづけたスープが新しい道を拓いて

「あ、その前に(笑)」とスマホを取り出して、出来上がりのスープをパシャリ。そうして朝のスープづくりを、有賀さんは2011年から毎日SNSで発信してきました。「もともと絵を描くのが好きで、それもお菓子や料理など食べ物ばかり(笑)。スープも、入れる材料によって色が違ってきれいでしょう。それを毎日アップしていたら、周囲でも面白がってくれる人がいて。ちょうど1年たったころに、写真と絵をあわせた個展を開いてみたんです」
365日、カレンダーのように並べたスープの写真。それを観たお客さんたちの「こんなスープは自分も作ったことがある」「美味しそう」と会話がはずむのを見て、「スープっていいなと、あらためて思いました」という有賀さん。そこで、自分から出版社をまわって最初のレシピ本を発表。そこから、スープ作家としての新しい人生が始まっていったのです。

料理が「大変!」と感じる人にスープを通じて伝えたいこと

スープ作家としてレシピを伝える立場になったとき、有賀さんは「皆さんが、スープって大変な料理と思っていることに驚いてしまって」といいます。ブイヨンを何時間も仕込んだり、いろんな材料を時間差で入れて、複雑に味付けをしたり。「そういうスープは、料理屋さんのスープ。家でつくるスープは、お味噌汁のように作ればいいんです。出汁は煮干しや昆布でも、ベーコンやソーセージでもいい、もちろんインスタント出汁でもいい。それで季節の野菜を煮て、最後に味噌を入れたらお味噌汁になるし、塩とオリーブオイルで味付けしたらスープになりますよ」。豚汁のように肉を入れたり魚を入れたら、ボリュームたっぷりのメイン料理。パスタやご飯を入れたら、お腹にやさしい夜食にも。

「今の時代だと、家族が時間差で食事をすることも多いでしょう。焼き魚や炒めものは、その度に作らないと美味しくありません。でもスープなら、何度でも温め直せますし、どちらかといえば後の人ほど煮込まれて美味しくなっています(笑)。味の好みも人それぞれ。薄味に作って、塩やスパイスは自分で調節すればいいんです」。

ひとり暮らしの人などは、大鍋にたっぷり作って味を加えていったら数日間は楽しめます。「コンロひとつ、お鍋ひとつで作れる手軽さもスープの良さですよね。そうしてスープを通じて、『料理って大変』と思っている人に、そんなことないよ、簡単だって美味しい料理はできるんだよって伝えるのが、私の仕事かもしれないと思うようになりました」。

身体にやさしくて、あったまる!有賀薫さん冬のおすすめスープ

緑野菜のミネストローネ

材料(4人分)

たまねぎ 1/2個
にんにく 1片
ほうれんそう 1/3束
ブロッコリー 1個
かぶ 小2個
ズッキーニ 1/2本
じゃがいも 1個
ソーセージ 3~4本
オリーブオイル 大さじ3
塩 小さじ1と1/2

作り方

  • ①たまねぎ、にんにくを、みじん切りに。ほうれんそうとブロッコリーは(軸も含め)、細かく刻む。かぶとズッキーニ、じゃがいもは1~1.5センチぐらいの角切りにする。かぶの葉は刻む。ソーセージは細かく切る。
  • ②オリーブオイルを鍋に入れて中火にかけ、たまねぎとにんにくを炒める。2~3分炒めたらブロッコリー、ズッキーニ、かぶを加えて炒める。ほうれんそう、かぶの葉を加えてさらに炒める。
  • ③約5~6分、全体がしんなりとしたら、水800mLとじゃがいも、ソーセージ、塩を加えて煮る。30分ほど煮て、ブロッコリーが煮崩れたら味を見て、塩で調節する。

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vol.2
毎朝スープをつくる有賀薫さんが「つくる・食べる・片付ける」理想のキッチンを求めて、
どのようにキッリンリフォームを行ったのか、そのプロセスをご紹介します。

Profile

有賀薫 Kaoru Ariga

2012年から家庭で朝のスープを作り始め、50歳で「スープ作家」に。各種媒体にスープのレシピを提供するとともに、執筆やイベント、展覧会などで活動中。『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』(文響社)で第5回レシピ本大賞入賞。最新刊『朝10分でできる スープ弁当』(マガジンハウス)もたちまち重版、好評発売中。

https://note.mu/kaorun

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