日々を楽しむ小さな工夫
文筆家 甲斐みのりさんvol.2
「“好きノート”を作ったことが、
物事を加点法で見る訓練になりました」
常に探求心にあふれ、ワクワク感を持って日々を過ごしている甲斐みのりさん。“好き”の幅はとどまるところを知らず、今も広がり続けています。聞いてみれば、これほど多くの“好き”に気づけたのは、あるルーティーンがきっかけだったそう。
「大学時代、将来に思い悩んで引き籠りがちな時期があったんです。そんな時に、スケッチブックを買って“好きノート”を作りました。“好き”と感じたモノやコトを書き綴り、1冊を埋められたら、思い描いた道に進めるというジンクスを勝手に作って……」。
ところが、書き始めてみたものの、1冊を埋めるほどのネタは見つけられなかったそう。そこで、もっと真剣に自分の“好き”を探求しようと思い立ち、もともと好きだった街歩きをしながら探すようになったのだとか。回数を重ねるうちにノートは埋まり、“好き”が増えることに心強さを感じることができたと言います。
この習慣から学んだのは、加点法で物事を見るメリット。
「最近、何でも星の数で評価する傾向を感じますが、それは他人がつけたものであり、マイナスを探して評価する減点法。それよりも、自分に響くいいところを見つけて加点する方が断然いい。日常には“楽しい”や“好き”があふれていることに気づけます。『ここには、何もないよ~』なんて言われる土地でも、何かしら自分に響く宝物を見つけられる自信はありますね」。
子どもの頃の旅ノート。“好きノート”のように、何かを記録するのは子どもの頃から好きだったよう。
「旅も大好きなコトのひとつ。
土地に根差したモノを
見つけるのが幸せです」
そんな甲斐さんが、新たな“好き”に最も出合えるのは、やはり旅先。
「知らない土地では気になるモノがたくさんあるし、早く出合いたいという想いに駆られて、小走りになることもあります(笑)」。
喫茶店、レトロ建築、地元パン、お菓子、土産物、工芸品……。その土地ならではの物語が感じられる個性的なモノを見つけるのが得意な甲斐さん。情報源はSNSに一切頼らず、現地で自分の足で探したり、オーソドックスな地元の観光パンフレットを参考にしているそう。
遠方への外出がしづらい昨今では、地図アプリを活用して行きたい場所を見つける“エア旅行”に夢中。実際に訪ねられないことは残念ですが、そこはマイナスと捉えず、将来のために情報をストック。マップ上に、まだ出合っていない楽しみがたくさんあることにワクワクしています。
「散歩を通して、気持ちや情報を整理する
時間をつくっています」
旅が遠のきがちな昨今、新しい習慣になったのが近所歩き。元々街歩きは好きでしたが、地元を日常的に歩くのはこの2年の間で習慣化したこと。新しい発見もあるうえ、考え事を整理したり、先の計画を練る時間にも充てられるので有効活用しているそう。
「時には、途中で喫茶店に入って情報を整理したり……。“好き”と向き合う時間を楽しんでいます」。
また、週末にはさらに時間を取って“1万歩歩く”を目標にした散策を実践しているとか。
「自分が住んでいる土地のあらゆるスポットを行き尽くす感覚を楽しんでいます。メディアに取り上げられるような有名店ではなく、自分にとってのお気に入りが増えることがうれしいですね」。
自分の足と自分の視点で見つけた“好き”だからこそ、癒しやときめきを感じられる___。そんな姿勢は、“好きノート”を作った時から一貫して変わりません。
一部画像提供/甲斐みのり
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vol.3 甲斐さんの3つ目のルール
「モノを管理するための
自分なりのルールを持つ」をご紹介
Profile
甲斐みのり Minori Kai
文筆家。雑貨やイベントなどを企画するプロダクション「loule」主宰。旅や散歩、地元パン、お菓子や包み紙、クラシック建築、雑貨など、心ときめかせるモノやコトをテーマに、執筆活動や商品プロデュースなどを行う。著書に『くらすたのしみ」(ミルブックス刊)、『日本全国おみやげおやつ』(白泉社刊)、『地元パン手帖』『お菓子の包み紙』(ともにグラフィック社刊)など。
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