日々を楽しむ小さな工夫 
住宅デザイナー タブチキヨシさんvol.3

日々を楽しむ小さな工夫024-vol3 画一的な間取りよりも家族の個性や時代に寄り添ったものに

「時代が変われば生活スタイルも変わる。
間取りだって変わるんです」

家づくりのなかでも、暮らしぶりや家族構成にフィットした“間取り”を大切にしているタブチさん。時代やライフスタイルの変化など先々を見据えることもポイントで、それを施主と共有して家づくりをスタートしているそうです。
「間取りには建てた時代の特色や文化が映るんです。つまり、古くなるということですね。サザエさんの家をイメージしてみてください。客間があってリビングはない。キッチンは北側の突き当りです。今のマンションや建売住宅で多く見る3LDKや4LDKの間取りとは違いますよね。キッチンの在り方も変わって、“奥さまの城”と呼ばれた時代から、家族が集まる井戸端のような存在になりました」。
LDKという空間が生まれてから、家事動線がよりスムーズになり、共働きの家庭の助けにもなってきました。また、リビング学習のスペースをつくったり、本棚を設けたりと、教育の場も担うように。家に求める役割の変化は時とともに変容し、間取りにも反映されています。

1960年前後に建てた家によく見られるような間取り。
下は1990年前後にポピュラーになってきた間取り。

  • 【施工例より】家族とコミュニケーションをとりながら家事ができるLDKの間取り。サニタリースペースとのアクセスをよくすれば、家事もスムーズ。

  • 【施工例より】洗濯室と扉を隔ててつながる洗面室。洗面台の脇にパウダースペースを設えれば、朝の忙しい時間も家事と身支度がスムーズに。

  • 【施工例より】親の目が届くリビングでの学習を求める家庭も多くなりました。家族共有の多目的スペースとして設ければ、大人のワークスペースにも。

  • 【施工例より】自分のためのちょっとした空間を持つ人も。多目的に使えますが、リモートワークが多くなった今はワークスペースにもなり便利です。

「生活が大きく変わった今は、
“間取り革命2020”真っただ中。
新たな提案が必要になりました」

リモートワークや外出の自粛など、これまで思いもしなかった昨今の生活の変化は、間取りへのニーズにも影響を及ぼしているようです。
「家は暮らしの中心と認識していた人がほとんどだと思いますが、昨今では“衣食住遊働”を求めるようになりました。そして、先行きも読みづらいのが現状です」。
住まいという限られたスペースに、多目的に使うニーズが加わった今、タブチさんが提案したいと考えているのが“可変性のある空間”です。
「例えるなら、多用途に使える公民館のイメージ。最初から空間をはっきり区切らなくても、スペースが必要になった時に生み出せるような間取りにしておくというアイディアです。先々、家族構成などに変化があった時にも対応しやすいですよね。パナソニックの『キュビオス』のように、間仕切りとしても使えて、組み替えもできる収納システムを使うのもおすすめ。デスクコーナーを設けて、必要な時に作業スペースを創出するなど、自由なプランニングができます」。

  • 【施工例より】ロフトつきのLDKをメインにした、シンプルな構成の平屋。ロフトは壁を設けず開放感がありゆるやかなつながりに。多目的スペースとしても活用できます。

  • 【キュビオス施工イメージより】ゆるやかに空間を仕切ったミドルタイプのプラン。奥はテレビ台、デスク、掃除用具の収納など幅広い役割を備えた組み合わせのキュビオスの壁面収納。

「トレンドや人の意見に流されず、
自分で考えて
ジャッジすることが大切です」

時代によって間取りにもトレンドがあるものの、これからは、ますます多様化が進むことが予想されます。それによって“家”の位置づけも変化してくるはず。
「つまり、住まいへの考え方はどんどん自由になり、間取りも限りなく自由に考えていいということ。」。
スタンダードな例に惑わされることなく、この先の暮らし方をデザインする気持ちで家づくりやリフォームに取り組めたら、より一層ワクワクが詰まった住まいになりそうです。

一部画像提供/タブチキヨシ

Fin

次回は、整理収納コンサルタントの
本多さおりさんに登場いただきます。

Profile

タブチキヨシ(たぶち・きよし)
住宅デザイナー・
クリエイティブプロデューサー

タブチキヨシさん 写真

株式会社タブチキヨシ住宅デザイン事務所代表取締役。株式会社house Stage代表取締役。愛知県生まれ。名城大学建築学科卒業。住宅デザインを仕事の軸として、商品開発、企画プロデュースを全国にて手がける。日本中にハッピーな家をたくさん建てることが夢! 施主の意見を大切に、住まう人にとっての“ワクワク、キャー!”な家を提案している。著書に『早く家に帰りたくなる! 最高にハッピーな間取り』『ズボラでも暮らしやすい! 収納上手な間取り』(KADOKAWA刊)

http://attract-style.jp/

@attract7

すむすむはSNSでも
住まいに関する情報をお届け!
ぜひフォローください