日々を楽しむ小さな工夫 
おむすび研究家
大倉千枝子さんvol.1

日々を楽しむ小さな工夫008-vol1 おむすびはシンプルだからこそ心を満たす味わいが伝わる

「お米をいちばんおいしく
いただける料理は
おむすびだと思うんです」

おむすび好きが高じて、20年前から子どもたちと楽しむおむすびワークショップを始めたという大倉さん。その後、研究家へと歩みを進め、その魅力を伝えるワークショップや地域の農産物を生かした食の企画、イベントなど、おむすびを軸に活動を広げています。
「魅力を語れば尽きませんが、まずは、お米をおいしく食べるのに最高の料理であること。しかも、使う材料は驚くほどシンプルなんですよね」と大倉さん。また、その背景にある歴史や文化も奥深く、長年活動していても飽きることがないと語ります。起源をたどってみると、弥生時代の化石の中に、おむすびの原型と思われるものも発見されているとか。その後も脈々と引き継がれ、江戸時代になると米が広く普及したことから、現代のように庶民にも親しまれるようになったのだそう。
「日本人にとってお米は貴重な栄養源であり、収穫祭などの祭事があるように特別なものでした。両手でにぎる行為はそんな心のあらわれとも受け取れませんか? また抗菌・殺菌作用が期待できる笹の葉で包むなど、当時から衛生観念がしっかりあったことにも驚きます」。

「心を込めるからおいしくなる。
誰かに作る喜びは、
作る人の心も満たします」

子ども向けのワークショップは、文化やうんちく抜きに、作る楽しさと食べる喜びを伝えることが目的です。
「最初の手順は手を洗うこと。食と衛生の関係を伝えることも大切にしています」。
ごはんが炊き上がる音や匂い、にぎったごはんの触感、塩の辛さや甘さ……。作り始めれば皆夢中になり、五感をフルに使いながら楽しみます。
「子どもって、自分で作れると自然に自分以外の大好きな人のために作り始めるんですよ」。
だからこそ、おむすび作りは家族間のコミュニケーションとしてもおすすめだとか。
「親子で、夫婦で、兄弟で。家族と一緒に作るのはいいと思います。一緒に作る時間を持つことで、きっと新鮮な発見がありますよ」と大倉さん。これだけでも、おうちごはんが一層楽しくなりそうです。

基本の塩むすび

にぎりたてはもちろん、冷めてもおいしい点もおむすびの魅力。シンプルだからこそ、ひとつひとつの工程を丁寧に実践してみましょう。

にぎり方

  1. 手を洗い、炊き上がったごはん、塩、手水を用意する。
    ごはんを飯台(ボールで代用可)に移し、しゃもじで切るようにしながら広げ、粗熱をとる。
  2. 手に水をつけてまんべんなく手のひらを湿らせ、塩を手にとる。中指の第⼀関節にたっぷりついた量が目安。
    手のひらを擦り合わせてしっかりのばす。
  3. 茶碗に軽く⼀杯分のごはんを手のひらにのせ、両手の中で弾ませ転がすようにごはんをまとめる。強くにぎらずに指を屈伸させながら、手のひらでまとめるのがポイント。
  4. 最後に2、3度しっかりにぎって形を整える。

おいしくいただくポイント

・炊き立てのごはんの粗熱をとってからにぎる
ごはんは冷めるとデンプン化し、粘りが出て米粒どうしがくっつき、固まってしまいます。ポイントは“ちょっと熱いけれどにぎれる”程度になったら、冷めないうちに一気ににぎること。
・あとで食べる時は、冷めてから包む
お弁当など時間をおいて食べる場合は、冷めてからラップやアルミホイルなどで包むとおいしく保管できるうえ、傷み予防にもなります。特に気温が上昇するこれからの時期は、ごはんに梅酢をスプレーして仕上げると、梅の殺菌・抗菌作用が期待でき、風味もよくなります。

写真協力/品田裕美、村山玄子、おむすびまるさんかく

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こだわりについてクローズアップ

Profile

大倉千枝子 Chieko Okura

大倉千枝子さん 写真

おむすび研究家。La via Ltd.代表。食とライフスタイルを豊かにするための企画、商品を展開する「creative market(omusubi garden)」主宰。おむすびを通じて食の楽しみを伝える子ども向けのワークショップを続けた後、2001年に東京・神宮前におむすびと汁、漬物をメインにした食事と自家製の加工品を扱う店「おむすびまるさんかく」をオープン。2020年1月に閉店した後は、店舗は持たず各地に出向いておむすびを供すスタイルで活動し、食の企画、商品企画も行う。著書に『むすんでみませんか?おむすび。- おむすびの話あれこれ -』(ピエ・ブックス2005年刊)。

http://omusubi-garden.com/

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Omusubi Garden-おむすびまるさんかく

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