日々を楽しむ小さな工夫
稲垣早苗さんvol.3
「キャンドルはヒュッゲの
マストアイテム。
どんなシーンにも欠かせません」
日本でも癒し効果を生むアイテムとしてポピュラーになりつつあるキャンドルですが、デンマークではもっと身近にキャンドルを灯す習慣があります。
「デンマークの住宅は防寒などの都合で窓が少ないからか、灯りを大切にしています。特に、キャンドルは欠かせない存在で、空間や時間がこっくりと深まるように感じますね」と稲垣さん。
キャンドルが傍らにあると、暮らしのさまざまなシーンが一層豊かに彩られていきます。「炎の色やゆらぎなど視覚的なものだけでなく、芯が燃える音やマッチを擦った時の匂いなども含め、五感で心地よさを感じられるのもいいところ。ヒュッゲ(家族や友人と過ごす和やかな時間、場)には必須ですね」。
デンマークの家庭での照明づかい。写真提供/稲垣早苗
「電気のあかりもキャンドルの
炎に近い黄色が定番です」
あたたかな光はキャンドルだけではありません。デンマークの家庭では、電気の照明といえば白熱色が定番。「蛍光灯の青い色は仕事がはかどる色と言われていますが、くつろぎを大切にする住まいには、キャンドルの炎に近い電球が選ばれますね」と稲垣さん。キャンドルと組み合わせて空間を照らしたり、シェード選びで明かりの色や彩度を調整したりと、照明選びに対しても強いこだわりを感じるそう。
「デンマークの家々の窓辺を見るのは、
旅の楽しみのひとつです」
「灯りづかいだけでなく、デンマークのインテリアで印象的なのが窓辺の演出です」。各家庭の窓は、キャンドルや電気スタンドのほか、季節の草花、雑貨、絵画などさまざなもので個性豊かに彩られるそうです。もともとリビングの窓辺にカーテンをつけない家庭が多いため、住まいの内と外からダブルで眺めて楽しめるのも特長なのだとか。「家族が心地よく過ごせるように飾るのはもちろんですが、道行く人を喜ばせたいという気持ちもあるのではないでしょうか。特にクリスマスシーズンはディスプレイが賑やかになって、外を歩くのが楽しみですね」。窓辺のディスプレイは、くつろぎを大切にするデンマーク人だからこその演出術なのかもしれません。
屋内からも、屋外からも眺めて楽しい窓辺の景色。
写真提供/稲垣早苗
デンマーク人の定番アイテムで空間を彩る
ホルダーや小物と合わせてキャンドルを印象的に演出
- 火を灯すと、ふわっと星空が浮かび上がる、夜の森をモチーフにしたラウンド型のキャンドル。その景色を存分に楽しめるようにフラットな和の器を敷いて。
- 「背の高いテーパーキャンドルと、脚の長いキャンドルホルダーの組み合わせは、高い位置から空間を照らせるように古くから灯りとりを目的としていたものです」。窓辺から室内を照らして。
- 北欧製のキャンドルホルダー。「昔のキャンドルにはこのホルダーのような形をしたものもあったそうですよ」と稲垣さん。
- アンティークのキャンドルホルダーに生のハーブを添えて。清々しい香りを漂わせてリラックス効果をアップ。
球根植物は、冬から春にかけての
定番アイテム
「デンマークでは球根の水耕栽培が昔から人気。大切に育てて、しっかり根を伸ばした様子を誇らしげに見せたりするんです」。稲垣さんもヒヤシンスやムスカリ、スノードロップなど、さまざまなサイズの球根を、ガラス作家が作ったバルブベースで楽しんでいます。ディスプレイに加えることで、春を待つ楽しみが一層盛り上がりそう。多肉植物も水耕栽培できるそうで、「根だけに水が浸かるようにするのがポイント」。
Fin
次回は、
料理家のワタナベマキさんに
登場いただきます
Profile
稲垣早苗 Sanae Inagaki
ギャラリー&ショップ「ヒナタノオト」にて、染織、金工品、木工品、陶磁器、ガラス製品、革製品など、日本の手仕事による品々を紹介。そのほか、日本毛織株式会社在籍中に立ち上げたニッケコルトンプラザ(千葉県市川市にある複合施設)にて行われる屋外展示会「工房からの風」のディレクターとしても、手仕事を紹介している。著書に『手しごとを結ぶ庭』『北欧の和み・デンマークの扉を開けて』(アノニマ・スタジオ刊)など。
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