日々を楽しむ小さな工夫 
稲垣早苗さんvol.1

日々を楽しむ小さな工夫003-vol1 日本の暮らしに取り入れたい“ヒュッゲ”の豊かさ

「“家での時間”に愛着を持つ
デンマーク人の暮らしに
感銘を受けました」

ギャラリーやイベント、執筆活動などを通して、30年近く日本の手工芸を紹介し続けている稲垣さん。日々手仕事への造詣を深める一方で、魅せられ続けているのがデンマークの生活文化です。
「30代のはじめに旅行で訪ね、暮らしぶりに感銘を受けました。以来、毎年訪ねています」。冬が長く寒いデンマークでは、家での時間を充実させるために居心地よくしつらえ、家族と和やかに過ごすことを大切にしています。
「そういったライフスタイルを象徴するのが“ヒュッゲ”です。家族や友人と和みつつ、いい時間を持つこと、またその空間を指します」。
日本の手工芸のあたたかさを生かしたインテリアと、デンマーク流のライフスタイル。稲垣さんの暮らしはしだいに両国の文化をミックスしたかたちになったそうです。

デンマークの家庭のクリスマスの装い
画像提供/稲垣早苗

「時を経て大切に受け継がれて
きたものに惹かれます」

冬のヒュッゲにはクリスマスが大きく関わっています。
「宗教的な重要性はもちろん、冬至を過ぎたばかりのこの時期は“春を待つ喜び”が相まって気分が盛り上がります。空間づくりにもその喜びが表現されています」。特長的なのは、ツリーの演出。市販の製品を使った画一的なデコレーションではなく、家族の好きなものや、子どもの絵など思い出の品を飾るのだそう。ツリーの背面や下には布を張ったり敷いたりして彩ることが多く、大抵はおばあさんが昔織った敷物や刺しゅうした生地などを使います。
「こうして手づくりの品を受け継ぐ文化や、大切に残された物に魅力を感じますね」。日本の工芸品にも共通する“受け継ぐ心”に惹かれる気持ちが、稲垣さんの仕事や暮らしの原動力なのかもしれません。

手仕事を取り入れた稲垣さんのヒュッゲ空間

自分らしい品々で飾るデンマーク流の
クリスマスツリー

  1. スウェーデンのアンティークリボン、デンマークの国旗でクリスマスらしい赤、グリーンの色合いに。
  2. 蚤の市で気に入って購入したアンティークの糸。
  3. デンマークで昨年初めて展示会をした際に知り合った、ペーパーアート作家によるオーナメント。
  4. 女性の竹細工作家が、クリスマスツリーに飾ってと贈ってくれた小さな竹カゴ。

デンマークで見つけたお気に入りの
アンティークや工芸品

  1. 集めているアンティークの書籍。「デンマークの家庭では本を色別に収納したり、好きな本のデザインを見せるように飾ったりと、インテリアの一部にしているんです」。
  2. ポットはデンマークの陶芸作家の作品。日常の 生活で紅茶を入れたり、飾ったり。
  3. 蚤の市で見つけた古いキャニスター。「時を経て味のある色に変化しているところが好きなんです」。その存在感を生かしてディスプレイアイテムとしています。
  4. 「1920年代くらいのものでしょうか。当時は嫁入りに備えて針仕事の練習をした布のようです」。壁に掛けるなどしてインテリアのポイントに。

生活用品は日本の工芸品を中心に揃え、
手仕事のあたたかさを取り込んで

  1. もともとニットの仕事に携わっていた稲垣さんが思い入れの強いアイテムのひとつ、染織物。写真は岩手県の作家が織った作品で、フリンジをフェルトのように処理したネックウエア。置いてあるだけで空間の彩りに。
  2. 「デンマークにはない日本の工芸と言えば、塗りです」。漆器は和食にも洋食にも積極的に使っているそう。写真は、トレーにもなる重箱の蓋と、三角形の小皿、銘々皿、スプーン。

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vol.2 ティータイムの
楽しみについてクローズアップ

Profile

稲垣早苗 Sanae Inagaki

稲垣早苗さん 写真

ギャラリー&ショップ「ヒナタノオト」にて、染織、金工品、木工品、陶磁器、ガラス製品、革製品など、日本の手仕事による品々を紹介。そのほか、日本毛織株式会社在籍中に立ち上げたニッケコルトンプラザ(千葉県市川市にある複合施設)にて行われる屋外展示会「工房からの風」のディレクターとしても、手仕事を紹介している。著書に『手しごとを結ぶ庭』『北欧の和み・デンマークの扉を開けて』(アノニマ・スタジオ刊)など。

https://hinata-note.jp/

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