法律
敷地の規制
自治体から「建築確認」が得られる土地であること
家を建てる場合、自治体からその土地にそういう家を建ててもいいという「建築確認」を得なければなりません。建築確認が得られる土地、つまり家が建てられる土地かどうかは、「用途地域」や「道路」が重要なポイントです。
用途地域が「工業専用地域」の場合は家が建てられない
その土地(地域)の利用目的(用途)を法的に定めているのが「用途地域」です。用途地域の種類は下の表のとおりで、それぞれの地域で建てられる建築物の種類や高さなどが決まっています。住宅については「工業専用地域」以外ならどの地域でも建てることができます。
●用途地域の種類
住 居 系 | 第一種低層住居専用地域 |
---|---|
第二種低層住居専用地域 | |
第一種中高層住居専用地域 | |
第二種中高層住居専用地域 | |
第一種住居地域 | |
第二種住居地域 | |
準住居地域 | |
商 業 系 | 近隣商業地域 |
商業地域 | |
工 業 系 | 準工業地域 |
工業地域 | |
工業専用地域 |
市街化区域・市街化調整区域とは
市街化調整区域内の土地には、原則として家を新築することができないので注意が必要です。
- 都市計画区域
- 人口1万人以上の市町村、またはその他の要件を備えた市町村の将来一体の都市として総合的に整備、開発、保全する必要がある区域を、「都市計画区域」として都道府県が指定しています。「都市計画区域」を定めている市町村のうち、とくに建設大臣が指定する人口10万人以上の都市およびその周辺の市町村は、「都市計画区域」をさらに「市街化区域」と「市街化調整区域」にわけることになっています。なお、土地区画整理事業は、この都市計画区域内の土地についてのみ施行することができることになっています。
- 市街化区域
- すでに市街地を形成している区域、およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域のこと。市街化区域内の農地は、農地法上、知事の許可を経ずに農業委員会への届出をもって宅地などへの転用や譲渡することが認められています。
- 市街化調整区域
- 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域で、土地区画整理事業をはじめ市街地開発事業などの開発行為は、特別の条件に適合する場合を除き原則として禁止されています。つまり、市街化調整区域内の土地には原則として家を新築することはできません。
用途地域とは
「用途地域」とは、土地の使いみち(用途)をあらかじめ決めておいて、住宅はこのエリア、工場はこちらのエリア、という具合に街づくりを計画どおりに進めていくためのものです。都市部のほぼ全域と、その近郊のほとんどの地域で用途地域が定められています(種類と各地域の目的は別表参照)。12種類の地域のうち「工業専用地域」では住宅を建築できませんが、それ以外の地域では建築が可能です。なお、地域ごとに「容積率」「建ぺい率」「絶対高さ制限」「斜線制限」「日影制限」「外壁の後退」等の規定が異なっていますので、注意が必要です。
●用途地域の種類と趣旨
種類 | 趣旨 | |
---|---|---|
住居系 | 第一種低層住居専用地域 | 低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域。 |
第二種低層住居専用地域 | 主に低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域。 | |
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域。 | |
第二種中高層住居専用地域 | 主に中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域。 | |
第一種住居地域 | 住居の環境を保護するための地域。 | |
第二種住居地域 | 主に住居の環境を保護するための地域。 | |
準住居地域 | 道路の沿道という特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するための地域。 | |
商業系 | 近隣商業地域 | 近隣の住民に対する日用品の供給を行うことを主な内容とする 商業その他の業務の利便を増進するための地域。 |
商業地域 | 主に商業その他の業務の利便を増進するための地域。 | |
工業系 | 準工業地域 | 主に環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するための地域。 |
工業地域 | 主に工業の利便を増進するための地域。 | |
工業専用地域 | 工業の利便を増進するための地域。 |
接道義務とは
建築基準法では、都市計画区域内で建物を建てる際には、その敷地は原則として幅員4m以上(特定行政庁が指定する区域内においては6m以上)の「道路」(自動車専用道路を除く)に2m以上の幅で接していなければならないと定めており、これを「接道義務」といいます。ここでいう道路とは、建築基準法上の道路であり、以下のいずれかに該当するものでなければなりません。
●建築基準法上の道路
- ・道路法に基づく道路(幅員4m以上)
- ・都市計画法、土地区画整理事業等による道路(幅員4m以上)
- ・建築基準法が適用された時(昭和25年11月23日)に既に存在していた道路(幅員4m以上)
- ・都市計画事業などにより、2年以内に築造する予定のもので、特定行政庁が指定した道(幅員4m以上)
- ・土地を建築敷地として利用するために新たにつくるもので、特定行政庁に申請して道路として位置の指定を受けた道。一般的に「位置指定道路」と呼ばれています。(幅員4m以上)
- ・建築基準法が適用された時(昭和25年11月23日)に既に建物が立ち並んでおり、一般の人が自由に通行していたもので、特定行政庁が指定した道。一般的に「42条2項道路」または「みなし道路」と呼ばれています。(幅員4m以上)
なお、共同住宅などの特殊な建築物や大規模な建築物、または専用通路(路地状敷地・敷地延長)が長い場合には、接する形態や幅員に別の規定が設けられている場合がありますので注意が必要です。
セットバック(後退)
接道義務を定めた法律が施行される前から存在する道路には幅が4m未満のものも多く、こうした道路を都道府県や市町村などが指定して道路とみなす場合があります。これを一般的に「みなし道路」あるいは「42条2項道路」と呼びます。敷地が接している道路の幅が幅4m未満の場合、道路幅4m以上を確保するため、道路中心線から敷地側に水平距離2m(道路の反対側が崖または川などの場合は崖地等の道の側の境界線から道の側に4mの線)を道路の境界線とみなします。これが「セットバック(後退)」とよばれるもので、セットバック部分には家や門や塀を建てることはできません。また、セットバック部分の面積を敷地面積に含めることはできないので、敷地面積によって規定される建蔽率や容積率制限により、建てられる家の面積がその分小さくなります。
●路地状部分のある敷地(東京都建築安全条例の場合)
- ※耐火建築物および準耐火建築物については、「建物延べ面積200平方メートル以下」の条件が敷地面積に関係なく適用されます。
- ※上記は東京都に所在する土地の場合です。その土地が所在する都道府県の条例を参照してください。
敷地にはいろんな法的規制が
敷地が市街化区域内では道路に2m以上の幅で接していなければ家が建築できないし、敷地が接する道路幅が4m未満なら道路中心線から2m以上敷地を後退(セットバック)させなければならないなど、建築法規上さまざまな制限があります。またどれだけの広さの家が建てられるかについても敷地によって異なってきます。その主要な基準となるのが建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)と容積率(敷地面積に対する延べ面積の割合)であり、それぞれに敷地面積を掛けたものが、その敷地に建てられる建築面積、延べ面積の上限になります。
家の高さを制限する法規制も
都市計画区域内で日照の悪化を防ぐ目的で決められたのが斜線制限。これにより前面道路や隣地境界線から引いた一定のこう配斜線によって家の高さが規制されています。また北側に接する敷地の環境を保護するための北側斜線制限も設けられています。どんな規制が適用されているかについては、土地売り主の不動産会社で確認できますが、管轄の役所で調べることもできます。
道路付けが重要ポイント
まず敷地の東西南北どの方向に道路が接しているかをチェック。この道路付けにより間取りはかなり影響を受け、住み心地も違ってきます。一般的には南側道路、東西に広がる長方形の敷地が理想とされていますが、価格的にやや高くなる傾向にあるようです。道路付けにより玄関位置、駐車場がおのずと決まってきますが、間取りを工夫することによって採光を高め、プライバシーを守り、理想の住まいを実現することも可能です。
敷地形状にも注目したい
建物をバランスよく配置でき、庭もそれなりに確保できる間口と奥行きの割合が2対3の敷地が理想と言われています。たとえば約200平方メートルの敷地なら、間口約12mに対して奥行き約18m。これなら建物の形もスッキリするし、前面に花や樹木を配した庭を確保すれば建物全体が引き立ちます。また密集した市街地では隣家や道路との境界が不明確な場合もあり、敷地図や実測図を手に入れ境界杭が打たれているかも、後々トラブルを招かないためにチェックしておきましょう。
隣家など周辺環境も要チェック
たとえば敷地がどのように道路に接しているか、隣に建物がどのように建っているかということも、きっちりとチェックしておきたいことがらです。道路幅は駐車場の位置までを想定して、車の出し入れがスムーズかどうか。また隣の家の窓やトイレ・キッチンの換気扇、各室の室外機の位置を確認しておけば、実際家を建てる際に役立つはずです。さらに用途地域により、建設できる建物の種類が決められています。たとえば第1種低層住居専用地域は低層住宅を中心とした良好な住環境の保護を目的とした地域として位置付けられているというふうに、用途地域を知ることによって、ある程度の周辺環境が予測できるわけです。
隣との境界
家を建て替えたり、あるいは新しく塀や垣根をつくろうとしたときに、土地の境界がはっきりせず、隣近所の方と争いになることがあります。土地の境界を特定するための手段としては、塀や垣根の設置があります。しかし、相続で代替りしたり、大規模な宅地造成が行われたため、その目印がなくなり、境界が失われてしまう場合があります。土地の境界を明確にするためには、境界標の設置(埋設)がもっともよい方法です。境界標がなかったために、土地を巡るトラブルが起こりやすくなっています。なお、不動産登記法施行細則では、土地の分筆の登記の申請などの際に提出する地積測量図の図面上に境界の位置関係を表示すべきことになっています。この位置関係を明確に表示するのが境界標です。
境界標には永続性のあるものを使用
測量の際には通常木杭が打ち込まれますが、これはあくまで仮のもので、何年か経つと腐ってしまったり、動いてしまったりします。もっとも有効な手段は、境界石やコンクリート標といった永続性のある境界標を埋設することです。都市部のように住宅が密集し、境界標を地中に打ち込むのが困難な場合は、ブロック塀やコンクリートなどに直接打ち込める金属鋲(びょう)を使って表示することもできます。境界標を設置しようとする場合は、最終的には登記と結びついてきますので、登記に関する調査・測量の専門家である土地家屋調査士に相談・依頼するとよいでしょう。なお、境界標の破損や移動があったり、構造物をつくるなどの理由で、境界標の修正や入れ替えが必要な場合には、その境界に関係する土地の所有者の立ち会いのもと、同意を得た正しい位置に埋設することで、後々のトラブルを防ぐことになります。
私道とは
不動産取引や住宅建築の場合における私道とは、私人が所有し、維持管理する道路を指し「接道義務」を満たすために所有地の一部に設けられるケースがあります。接道義務においては、敷地が幅4m以上の道路に2m以上接してなければなりません。元々は一つの大きな敷地だったのを分割(分筆)した場合など、道路から離れてしまっている敷地については、敷地の一部を道路にあて、それを建築基準法上の道路として特定行政庁(都道府県知事や市町村長)に認可してもらいます。この道路(私道)のことを「位置指定道路」と呼び、所有地の一部ではあっても、そこに庭をつくったり、敷地に再編入するといった変更や廃止は勝手に行うことはできません。また、私道部分の面積は敷地とならないので建ぺい率や容積率の計算から除外されるなど、土地の利用に際して大きな制約を受けることになります。
- ※私道負担
不動産取引において、売買等の対象となる土地(敷地)の一部に私道の敷地が含まれている場合に、この私道敷地部分を「私道負担」といいます。私道には前述の位置指定道路となる私道以外にも、通行地役権の目的となっているようなものが含まれます。また、私道について所有権や共有持ち分を持たずに、利用するための負担金を支払うことになっている場合や、将来生じることになっている私道負担も私道に関する負担に含まれます
この内容は2004年2月16日現在のものです。