「おうち時間」をもっと楽しむための間取りトレンド2022

住宅デザイナーのタブチキヨシさんが、気になる間取りのアレコレを解説。
第二回は2022年の最新トレンドや間取りの変移をご紹介します。

「お客様へのもてなし」から
「家族の幸せ」を感じる
3LDK/4LDKの家へ。

女性の声が間取りを変えた。

時代によって間取りが変わることは前回お話ししました。では、実際にどのような変化があったのか、少し具体的に振り返ってみましょう。

まず、これは1960年頃の標準的な間取りです。いかがでしょうか。昭和のアニメやドラマを思い出させますよね。当時、家を建てる人の念頭にあったのは、「お客様をお迎えするのに恥ずかしくない“箱”にする」ということ。おおむね玄関が広く、必ずといっていいほど応接室や客間を設けているのは、そういう心理に基づいていたのです。当時は、キッチンで食事を用意するのは女性の仕事。家の女性は裏玄関を使って出入りすべきとの考えも決して珍しくありませんでした。

1960年頃の標準的な間取り。お客様をお迎えしても恥ずかしくないように、というおもてなしの心が色濃く出ています。

それが変わってきたのが1990年頃です。女性の社会進出と連動するように、間取りに対して女性の意見が反映されはじめました。その代表的な声が「子どもを見ながら料理したい」というもの。こうして登場したのが対面キッチンです。この頃から、間取りの主流は3LDKや4LDKにシフト。核家族が一般的になり、和室は客間というよりも、別居の祖父母が泊まれる部屋として位置付けられるようになりました。「お客様へのもてなし」より「家族の幸せ」をといったところでしょうか。

リビングの様子を見守りながら料理ができる対面キッチンは1990年代から普及し、現在ではスタンダードに。女性の社会進出が間取りにも反映されている。

そして現在、3LDKも4LDKも、住む人のニーズにマッチしなくなりつつあるというのが実感です。その流れは、新型コロナウイルスの影響を受けてさらに加速したように思います。ではここで、間取りの最新トレンドをご紹介しましょう。

多目的に使うために
目指す姿は、あいまいな“箱”。

これからの家が目指すべき姿は、あいまいな“箱”です。この言葉にはさまざまな視点が含まれています。

かつての「マイホーム」を、お父さんにフォーカスしてイメージしてみましょう。月曜から金曜までは夜遅く帰宅し、子どもたちの寝顔を見るだけ。連日の通勤で疲れ、週末は居間でついお昼寝。そんなところでしょうか。でも今は、お父さんが週2日ぐらい家で仕事していてもおかしくありません。お母さんがママ友を自宅に招いて親睦を深める機会も増えました。欧米並みにアウトドアのスタイルが定着しつつあり、仲間内での自宅バーベキューや「おうちキャンプ」も人気です。さらに、動画配信サービスが普及し、自宅は映画館代わりになりました。暮らしが大きく変わる一方で、あえて昔ながらの土間や縁側を設置して、そのスペースを家族との団らんやお友達との交流に使いたいという要望も少しずつ聞くようになっています。
つまり家は、仕事や社交、遊びの場を兼ね、多目的に使われるようになってきているのです。あいまいな“箱”とは、このことを意味しています。

家は住むだけではなく、仕事や社交、遊びの場に。近年はリビングの一角にワークスペースを設置するケースも多く見られる。

私は、3LDKや4LDKの次に「中庭付き平屋」が来ると予想しています。最近、とある県で50棟を超える中庭付き平屋の分譲住宅が即完売になったというニュースもありました。コの字型やロの字型で作られる中庭のメリットは、生活と庭が一体になり、身近に外光や外気を感じられること。ロの字型にすればプライバシーも保たれるため、入浴後のラフな格好のままで外気浴もできます。中庭は、家の“内”と“外”をあいまいにするものともいえるでしょう。

コンパクトでも中庭があれば、外からの視線を気にせずに光や風に触れることができます。

お互いを思いやっているからこそ
ベッドを別にすることも、

先入観にとらわれず考えよう。

人のライフスタイルや価値観は、時代とともに移り変わります。だからこそ先入観にとらわれず、間取りを考えることが大切です。

例えば、夫婦は同じ寝室の同じベッドで就寝すべきでしょうか? 「それは当然だ」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、「お互いを思いやっているからこそ別にする」という考え方も確実に広がっています。ライフスタイルが多様化し、夫婦が寝起きする時間は必ずしも同じとはいえなくなりました。共働きなら出勤や帰宅の時間も異なるでしょうし、食事を一緒にとるのも簡単ではないかもしれません。相手を思いやるから、合わせない。これもひとつの夫婦愛です。1日をどのように家族とシェアするのか。それを見定めるためにも、施工前のしっかりとした話し合いが必要になってきます。

壁で仕切るのではなく、収納で仕切ればお互いの存在感を感じながらも自分のタイミングで就寝ができる。

心豊かな暮らしを求めて。
間取りはウェルビーイング重視へ。

自分の生活になにが必要なのか。これを考えることから間取りの検討が始まります。そうしたとき、浮かび上がってくる旬のキーワードは、「ウェルビーイング」ではないでしょうか。
※心身、社会的に良好な状態であること

最近はダイニングとリビングを壁で区切らず、代わりに仕切り窓を設置するのが人気です。ドアを極力使わず素通りするような間取りが増えています。空間をゆるやかに区切ると、多目的に使いやすくなると同時に、視界が広がり、光や空気の通りも良くなるのが利点です。エアコンの機能、建材の断熱性は向上していますから、そんなにしっかり区切らなくても暑さや寒さの対策上は問題ありません。

間取りをなるべく開放的に。この傾向は、ウェルビーイングを求める心理に起因しています。先に述べた中庭のニーズも同様です。さらに、海外で盛り上がりつつあるのが、アール(曲線、曲面)を活かした間取り。見た目に柔らかな印象を与え、癒しや安らぎをもたらしてくれます。この動向も、昨今のトレンドを表すものです。

私はかつて仕事第一の人間でした。運動不足がたたり、体重が大幅に増えてしまったため、ダイエットを目的に毎朝5キロ走るようになります。すると、ランニングそのものの気持ちよさに目覚め、仕事より優先したいぐらいの心境に。本当に劇的な変化でした。今、多くの方が、そういう経験を求めていると感じます。

心豊かな暮らしを実現したい。そのためにはウェルビーイングが欠かせないと考える人は、着実に増えています。間取りの最新トレンドは、ウェルビーイングが鍵を握っているといえるでしょう。

MADORI POINT

  • POINT 1

    中庭をつくって
    光と風に触れる

  • POINT 2

    寝室は壁 or 収納で
    ゆるやかに仕切る

  • POINT 3

    趣味や仕事ができる
    デスクスペースを設ける

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