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2008年12月22日更新

「こんな暮らしがしたい!」あなたの夢や希望を実現するスタイルをご紹介します。

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空気の質をデザインした住まい

愛知県名古屋市のベッドタウンとして、30数年前から大規模な宅地造成が進む春日井市に建つH邸。施主のHさんご夫婦と社会人のお子さんが暮らす住まいです。施主のHさんの「快適な住まいには空気環境も大切」との思いから、“空気の質”を優先して建てられた住まいです。高気密・高断熱住宅の特性を最大限に活かすために、居室から床下までの計画換気をはじめ、風通しや日射のための間取りや庇、窓や戸など開口部の工夫が随所にされています。全館空調システムで通年、シャツ1枚で過ごせる、家族も住まいにも快適なH邸をご紹介します。

Point

  • 1.室内の空気がきれいな家に住みたい!
  • 2.敷地に対して斜めに建てた総2階建てプラン
  • 3.24時間換気冷暖房で温熱環境抜群の空間
  • 4.お手入れもラクラク、人も住まいも快適に

1.室内の空気がきれいな家に住みたい!

住宅街の坂道を登り切ったT字路の突き当たりに建つH邸。坂道に沿って吹き上げる自然の爽やかな風が流れ込む立地で、将来の住まいづくりのためにと、20数年前に取得していた土地です。住まいが変わることで転校をしたくないと言う、お子さん達が高校生になるのを待って住まいづくりがスタートしました。
Hさんご夫婦の新居への思いは、「快適な住まいは、間取りやデザインだけでなく、家の中の空気の質も大切」というものでした。夏に涼しく、冬に暖かい高気密・高断熱住宅は、快適さや省エネ効果をもたらす一方で、逃げ場のなくなった湿気対策がカギになります。湿気の放置や換気不足はカビの原因にもなり、室内の空気を汚して住宅の傷みを加速させてしまいます。
Hさんの要望は、高気密・高断熱住宅の特性を活かし、「換気・除湿・加湿・冷暖房を計画的に取り入れた質のよい空気環境」と言えます。特に家にいる時間が一番長い奥様にとっては、心地よい室内の空気環境の実現は切実なものでした。
そのためHさんは、家族が過ごす時間の多いキッチンとリビングを日当たりのよい2階に配置、建材もできるだけ天然素材を使うことで快適で健康的な空間を実現。さらに全館24時間換気冷暖房とオール電化にすることで暮らしの中で質のよい空気環境の維持が可能と考えました。高気密・高断熱住宅で、全館換気空調を採用しているので、家中がほぼ同じ温度になり、計画換気で家の中で発生する蒸気を外に排除し、家の中の湿度を一定にすることで、温度と湿度のバリアフリーが実現されています。

居室側をできるだけ南に向けるように斜行して建てられたH邸。


2.敷地に対して斜めに建てたられた総2階建てプラン

造成された住宅街の高台に建つH邸は、敷地の北西側が道路に面しています。2階の面積が1階とほとんど変わらない総2階箱型の家は、居室側をできるだけ南に向けるように斜行して建てられています。冬に暖かい日差しを室内に取り込もうという配慮です。代わりに夏は強い日差しを浴びることになりますが、これは庇でさえぎることで冷房効率を高めるようにしました。
総2階建てにし、屋根や壁面の面積も少ないことから熱損失が最小に抑えられ、形状が地震の揺れにも強いなどのメリットもあります。また、外断熱の高気密高断熱住宅ですので、大空間でも均一で快適な空間を可能にしています。
1階は、天井高2m55cmもある玄関ホールから親子ドアを介して、ゆったりとした廊下(幅1m30cm)が奥へと延びています。廊下の南側には和室、子ども部屋2室が並び、北側にはトイレ、洗面室・バスルームの水まわりが集められています。
2階は、日当たりに恵まれた南側に広いリビング・ダイニングと寝室があります。北西の角にはキッチン、北東の角にはユーティリティー、トイレがあり、2階だけでお風呂以外の普段の暮らしができるように計画されています。また、リビング・ダイニングは間仕切りを最小限にし、南北両側に開口部を大きく取ることで、夏に南東からの風が通り抜けやすくなっています。冬は、隙間風が気にならないように気密性の高い複層ガラスにしています。

■建物配置イメージ

敷地に対して斜めに建物を配置することで、南からの日差しを取り入れやすくしている。

通常は1階と2階の間に配置される、配線設備を床下にすることで、2m55cmの天井高を確保した1階。奥のドアは玄関ドアからの外気が室内に流れ込むのを防ぐ間仕切りドア。


3.24時間換気冷暖房で温熱環境抜群の空間

高気密・高断熱住宅で欠かせないのが梅雨時の湿気対策です。換気だけでは、外気温が高く、逆に湿気が入ってきてしまいます。そこでH邸では、室温を変えないで除湿する、全館熱交換気を採用しています。
換気で排出される汚れた空気から回収された熱と、外気の新鮮な空気が、一緒にフィルターを通り、室内に取り込まれます。冬は冷たい外気が予熱されて室内に給気される仕組みです。1階に7カ所、2階に6カ所設置された換気・空調用の空気吹き出し口からきれいな空気が取り入れられます。逆に汚れた空気は、トイレの排気専用空気取り入れ口から排出されるシステムです。
1つの吹き出し口から出る空気の量は、「エアコンの6分の1から10分の1程度と少ないので、風も音も気にならない」とHさん。
H邸では、高気密・高断熱住宅向けの24時間換気システム「気調システム」の室内機を1階床下と2階のロフトに設置しています。1階床下は、シロアリ対策用の床下換気を設置し、人が入ってメンテナンスできるように70cmの高さを確保しています。通常は、1階と2階の間に配置される配管やダクトも床下にすることで、1階の天井高は高めの2m55cmになっています。
家全体が24時間換気冷暖房のため、年中快適な室温・湿度が保たれています。部屋と廊下の温度差もなく、寒い冬の夜などに心配なヒートショックの心配もいりません。

冬は南面開口部から日差しが差し込む、日当たり抜群のリビングダイニング。西面は小さな開口部にして熱損失を防いでいる。


4.お手入れもラクラク、人も住まいも快適に

空気を汚す原因となる湿気対策以外にも、H邸ではさまざまな対策がされています。
家の基礎部分(断熱材)の結露を防ぐため、全館空調を行ないます。家全体の除湿や冷房を行うと空気の流れができます。床下にも乾燥した空気が入りこむことで、湿気を防ぎカビの発生や基礎部分の腐食を防いでいます。
シックハウス症候群でよく問題となるVOC(揮発性有機化合物)対策では、できる限り自然の素材をそのまま使っています。クロスや合板をできる限り避けて、居室にはパインのムク材を壁面に張ったり、和室では天井や押し入れに調湿効果のあるヒノキを採用。壁は、天然の海藻を主成分にしたじゅらく仕上げにするなど、自然素材にこだわっています。ムク材はコストがかさみがちですが、場所・用途に応じて適切なものを選び、短い木材や節のある材料を使うことで、質感は変わらずにコストダウンを図っています。
「空気がきれいだとホコリなどの汚れが少なく、お掃除も楽で快適です」と言う奥様。きれいな空気環境を実現したH邸では、温度・湿度のバリアフリーだけではなく、お掃除も楽な快適な住まいを実現しています。

2階の南東部分は6畳大のロフトには、東角部分に気調システムのダクトスペースが設けられている。


■建築概要

所 在 地

愛知県春日井市

設計・監理

丸七建築設計事務所

施   工

丸七ホーム

構   造

木造(軸組工法)2階建て+ツーバイフォー(屋根部分)

敷地面積

314.50m²

建築面積

70.87m²

延床面積

158.24m²(カーポート含まず)

竣   工

2000年12月

工 事 費

2,400万円

●主な外装仕上げ

屋根:
平板瓦葺き 屋根下地合板
ルーフィング22Kg張り(換気棟付)
外壁:
サイディング張り

●主な内装仕上げ

壁:
クロス パイン羽目板張り
じゅらく壁
床:
カラーフローリング
天井:
クロス

●主な設備機器

IHクッキングヒーター、エコキュート、24時間換気冷暖房

●エネルギー

オール電化

■平面図

■24時間換気冷暖房