日々を楽しむ小さな工夫
住宅デザイナー タブチキヨシさんvol.2
「家もファッションのように個性が
あった方がいいと思います」
タブチさんが代表を務める工務店を立ち上げたのは、2009年のこと。意外にも当初は「どんどん売って年間200棟(!!)を販売する会社の社長になろう」と目標を掲げていたのだとか。ちょうどその頃に建てた自邸も、ハイスペックな設備で固めた大きな二世帯住宅でした。そんな発想を180度覆すような出来事となったのが、素晴らしい棟梁が心を込めて手がけた家との出合いでした。
「現場が裸足で歩けるくらいきれいでキリッとした空気に包まれていて。当然出来ばえも素晴らしく、施主も大満足。いい家には人の“気持ち”が入るべきなんだと気づかされたんです」。
以来、タブチさんが新たに目指したのは、施主が「ワクワク、キャー!」を感じられる家づくりのサポート。楽しんで作った家には、個性も魅力も宿るもの。施主の想いを丁寧に引き出し、それを形にするためのサポートに徹しようと心に決めたそうです。
「間取りを検討するなら
家事動線最優先で。
光や風も大切な幸せ要素ですね」
施主の想いを引き出すために、とことん会話するタブチさんですが、特に注力しているのが、家庭や家事を知り尽くしている人が暮らしやすい家を目指すこと。その多くが女性ですが、意見や生活スタイルをしっかりヒアリングしたうえで、効率的な動線を考え、フィットする設備や収納を提案するととても好評なのだとか。
「たとえば洗濯ひとつをとっても、洗濯する→干す(乾燥させる)→しまう、の流れを細かく割り出すことが大切。ベランダで干したいのか、浴室か、乾燥機を使うのか。干す場所にアクセスしやすいように洗濯機や収納の位置を設定すれば一連の作業が楽です」とタブチさん。
「動線がスムーズなら時間も有効に使えてゆとりが生まれます。実は、日々のHAPPYを生む仕掛けは動線にあるとも言えますね」。
動線のほかにも、家づくりでタブチさんが重視しているのが、光や風の抜け。室内に居ながら心地よく暮らすにはとても大切な要素です。
「ご要望がなくても、必ず意識します。東側に窓を設けて朝日を感じたり、テラスや中庭を設けたり___。外出が減った今は特に重要視されていますね」。
「インテリアは、特に
“ワクワク”を高めてくれる要素だから、
真剣に検討したいですね」
もうひとつ、住まいにHAPPY要素をもたらすことといえば、インテリアや内装の選択。
「家づくりは、壁や床材、設備などを決めることから始まると考える方も多いですが、僕はダイニングテーブル上の照明、ラグ、クッションカバー、絵やポスター、観葉植物の5つの要素を核に話を広げます」とタブチさん。経験上、身近なインテリアアイテムから好みを探ることで、サッシや床材といった周囲の設備も決めやすくなり、最終的にインテリア全体のイメージが見えてきて判断が楽になると言います。
もうひとつ大切なのは、トレンドなどに流されず、自分が好きなものをとことん掘り下げること。
「家とは長いつき合いになるので、ベーシックな部分は、この先の好みの変化にも対応する飽きの来ないスタイルをすすめています。白、黒、グレー、オークやウォールナットが人気ですね。また、すべてに予算が回らないとしても、どこか1点でもこだわりの物を選ぶことも大切。それだけで、満足度がかなり高くなるんです」。
機能、インテリアともに施主の想いを詰めて家づくりをすれば、“ワクワク”にあふれたマイホームが見えてきそうです。
一部画像提供/タブチキヨシ
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vol.3 タブチさんの3つ目のルール
「画一的な間取りよりも家族の個性や
時代に寄り添ったものに」をご紹介
Profile
タブチキヨシ(たぶち・きよし)
住宅デザイナー・
クリエイティブプロデューサー
株式会社タブチキヨシ住宅デザイン事務所代表取締役。株式会社house Stage代表取締役。愛知県生まれ。名城大学建築学科卒業。住宅デザインを仕事の軸として、商品開発、企画プロデュースを全国にて手がける。日本中にハッピーな家をたくさん建てることが夢! 施主の意見を大切に、住まう人にとっての“ワクワク、キャー!”な家を提案している。著書に『早く家に帰りたくなる! 最高にハッピーな間取り』『ズボラでも暮らしやすい! 収納上手な間取り』(KADOKAWA刊)
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