日々を楽しむ小さな工夫
薬膳料理家・食養研究家 山田奈美さんvol.1
「中医学や薬膳を学んだことで
和食の魅力を改めて知りました」
中医学や薬膳理論について学び、著書やテレビ、教室を通じて和食薬膳レシピや発酵食を提案している山田奈美さん。
現在は自然豊かな神奈川県・葉山の古民家に暮らし、地産のものを多く生かした手づくりの食生活を楽しんでいます。
「昔からある和食は、身体にかかる
負担が少ない料理が多いんです」
薬膳を学び、改めて和食が理にかなっていると感じることが多いそう。たとえば食材の組み合わせ方。
「きんぴらごぼうをとっても、薬膳でごぼうは体を冷やす食材ですが、体をあたためる唐辛子を添えることでバランスがとれるようになっているんです」。
また、発酵食品が豊富なことも和食のメリット。「ぬか漬けなどに含まれる乳酸菌の特長は近年、見直されている通り。ぜひ日常的に取り入れていただきたいもののひとつです」。
先人たちの知恵が詰まった和食の魅力を日々感じながら、中医学や薬膳理論を日本古来の食文化や食材にあてはめて、和食薬膳料理のアイディアをふくらませています。
山田さんおすすめの手作り 発酵食や漬物
おいしさ、滋養、保存性を備えた伝統食。
手づくりで一層魅力を感じて
- ぬか漬けとたくあん。ぬか床は20年も育てています。
- 梅干しも定番の保存食。写真は小学1年生の長男が生まれた年に作り、毎年誕生日にひとつ食べることにしているもの。
- キッチン脇に控える手づくり味噌。なんと、裏庭ではしょう油も作っています。
ぬか床を上手に管理するには?
発酵食品としておすすめのぬか漬け。「作ったけれどうまくいかず断念した」という人も多いのでは? 基本のぬか床レシピと困ったときの対処法を伺いました。
《基本のぬか床》
- 材料
- ・生ぬか(無農薬がおすすめ。炒りぬかで代用可能)……1kg
- ・塩……100(冬季)~120g(夏季)
- ・水(煮沸して40℃くらいに冷ましたもの)……1L
- ・昆布……5~6cm角を2枚程度
- ・唐辛子……2本
- ぬか床の作り方
- ぬかに塩を入れて混ぜ、味噌程度の固さになるように少しずつ水を加えて混ぜる。さらに昆布と唐辛子を加えてよく混ぜる。
- 《ぬか床の管理》
- 夏は毎日、冬は少なくても2日に1回は、底からしっかりかき混ぜる。終わったら野菜が見えないようにぬかを被せ、空気を抜くように押さえてふたをする。山田さんのお宅では、通気性のいい和紙をふたがわりに使用。
- 刺激臭がしますが大丈夫?
- ぬか床は主に上から産膜酵母、乳酸菌、酪酸菌の三層の菌で構成されています。シンナーのような刺激臭は表面にいる酸素の好きな産膜酵母の、蒸れたくつ下のような臭いは底にいる酸素の嫌いな酪酸菌の増殖によるもの。いやな臭いはかき混ぜ不足が主な原因です。まずは底から天地をひっくり返すように、しっかりと時間をかけてかき混ぜてあげてください。2~3日で臭いがなくなってくるはずです。
- 水っぽくなってもそのまま使い続けてもいいですか?
- 野菜の水分が多く出て水っぽくなると、過発酵の原因になります。水っぽいときや、過発酵で酸っぱくなったときには塩分7%の足しぬかをしましょう。干し椎茸や高野豆腐、大豆などの乾物を足して、水分を吸わせる手もあります。
- カビが生えてしまったら?
- カビが生えた部分のぬかごとすくって完全に取り除けば、使い続けて問題ありません。
- 仕上がりが苦くなってしまいました
- きゅうりなど苦味のある野菜ばかりを漬けていると苦味が出ることがあります。そんなときは、にんじんやかぼちゃなど甘みのある野菜や、うま味のある食材(干ししいたけ、昆布、にんにく、大豆など)を加えるとしだいに苦味がやわらいでいきます。
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vol.2 春におすすめの食養生に
クローズアップ
Profile
山田奈美 Nami Yamada
薬膳料理家。食養研究家。国際中医薬膳師。「食べごと研究所」主宰。北京中医薬大学日本校卒業。神奈川県葉山市の「古家1681(coya iroai)」にて「和食薬膳教室」「離乳食教室」「発酵教室」「季節の仕込みもの教室」などを開催。著書に『旬を楽しむ梅しごと』(家の光協会)、『ぬか漬けの基本。はじめる、続ける』(グラフィック社)、『疲れた日のスープ、頑張る日のスープ』(文化出版局)など。
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