好きをかたちにする、新しい住まいのつくり方 vol.4
これから注目の
インテリアトレンドは
“ホテルライク”
今回お話を伺ったのは、住宅デザイナーのタブチキヨシさん。先日同氏がパナソニック内装建材株式会社 群馬工場内でコーディネイトを手掛けた空間展示をもとに、これから注目したいインテリアトレンド“ホテルライク”を取り入れた空間づくりについて、そしてインテリアに使う素材や色選び、素材を生かすコーディネイトについてインタビューしました。
都市型ブティックホテルのような
特別感とシンプルさを取り入れて
タブチさんがパナソニック内装建材株式会社 群馬工場内にコーディネイトした空間。ダイニングルームを切り取ったかたちで、隣には小さなウォークインクローゼット、上階へ続く想定の階段コーナーも備えている
ファッションにもトレンドがあるように、インテリアにももちろんトレンドがあります。最近でいうと、これまで全盛だった“男前インテリア”から、装飾を省き、より洗練された“男前シンプル”“男前モダン”といったスタイルへ移行しつつあるといえるでしょう。
そして、その延長にあるのが「ホテルライク」だと、僕は読んでいます。
ホテルといっても、名門ホテルチェーンのイメージではなく“都市型ブティックホテル”。ブティックホテルといえばコンパクトな佇まいに独創的な空間づくりが特徴で、アメリカ・シアトル発のAce Hotelや、日本では渋谷のTRUNK HOTELが「空間がおしゃれ」と話題になりました。
共通しているのは、“Travel”よりも、週末に気軽に楽しむ“Trip”に使いたいイメージです。洗練されているけれどこなれ感があり、なおかつホテルならではの特別感、ホスピタリティが演出されている。訪れれば“ちょっとした贅沢”な空気感を肌で感じられると思いますよ。
“ホテルライク”な住空間をつくる
ポイントとは?
では、ホテルライクなインテリアって何でしょう? 僕が先日パナソニック内装建材株式会社 群馬工場内にコーディネイトした空間をもとにひもといてみたいと思います。
新しいフローリング材「ベリティスフロアーWハードコート クリア1本溝 アカシアクリア」をはじめとするパナソニックの製品を取り入れて、自由にプランニングさせていただいたものです。つやを抑えた仕上げにトレンド感があり、天然のアカシアの風格が映える床材。“ホテルライク”はこの床材の魅力を表現するのにぴったりなスタイルだと思いました。
素材を選ぶ楽しみと、
素材を生かす空間造作にこだわること
空間づくりには、男前インテリアの要素であるきりっとした色や素材づかいとシンプルさ、加えてホテルにいるようなクラス感を出す“空間造作”を心がけました。
ポイントは、①高めの幅木、②天井高や壁の奥行き、③壁の色づかいです。
海外のインテリアでは、日本で通常使われている幅木よりも高さがあり、ホテルのインテリアも同様です。ここでは、床や壁の色とコントラストがはっきりした白を選んだことで、空間のアクセントにもなって床の存在感が引き立っています。
タブチさんが「ここに命をかけました!」という天井。床の魅力がより映えるように、天井高に変化をつけてスケール感と特別感を演出。奥の壁面も奥行きに差をつけ、壁の色でも変化をつけている。ここに光があたることで陰影ができ、空間がグンと表情豊かに
天井高や壁の奥行きに変化をつけたのも、生活空間として見慣れた四角四面の空間と変化をつけて特別感を演出するためです。空間にスケール感が生まれ、光があたれば陰影がつくので、インテリアにニュアンスが出ますよね。床の存在感に似合う仕上がりになりました。装飾を抑えてシンプルに設えた空間だからこそ、こういった工夫で仕上がりに差がつきます。天井高の演出は空間の広さに関係なく有効で、予算を多くかけずに空間をデザインできるのでおすすめですよ。
今回、この床材をコーディネイトしてみて思ったのは、無垢の床ももちろん魅力的ですが、突き板のフローリング材は天然木の魅力を持ちながらカジュアルな価格で使えるのがいいですね。マットな色と1本溝の存在感は、時代に似合う床のスタイルなので、インテリアにこだわりを持つ僕にも使いやすかったです。従来よりもフローリング材の質も上がっているとも感じました。製品が安定しているうえ、納期が早いのが助かる! アフターフォローがあるし、施主にとっても「インテリアにこだわるあまり輸入品を使って不都合が出た」というトラブルなしに取り入れられるのがメリットだと思います。
また、壁や天井の色を面ごとに変えているのも、同様の演出です。ネイビー、グレー、ライトグレー、そして白。こういった同系色の組み合わせも、最近のトレンドのひとつと言っていいでしょう。シックな色彩ですが、奥の壁に白を取り入れて明るさも意識しています。
小物づかいでも
空間に特別感をつくり出そう
インテリアは箱づくりだけでなく、小物づかいが加わって成熟します。ホテルライクな“特別感”を表現するために、アートや照明などの取り入れ方を意識しました。小物づかいで直線的な空間に遊びを加えると、リラックス感につながると思います。
この空間には、3つのフレームを配置しました。ふたつは同サイズ、同モチーフをモノトーンの色違いで配置。もうひとつは、どんと大きい絵画を。思い切ったサイズ感や配置で取り入れることで印象的な空間をつくれます。小ぶりなフレームを縦にしたり横にしたりしながら、たくさんレイアウトしても楽しいですね。
照明もアートと同様に手軽にアクセントにできるアイテムでしょう。この空間にはいくつもの照明を取り入れていますが、まずダイニングテーブル上の照明でインパクトを出しました。大きく丸い照明で直線の多い空間に変化がつき、テーブルとの距離を縮めたことで、座ったときに妙に“こもり感”というか、落ち着いた心地になるんです。
ほかにはペンダント照明をサイズ違いで、ペンダントの長さを変えて配置して四角い空間のバランスを少し崩すようにしました。色を白で揃えているので、煩雑な雰囲気にはならないですよ。
※モールテックス(MORTEX)
モルタルのような色と質感の左官材料で、ベルギーのBEAL社の製品。
ファッションで着崩しを楽しむように
インテリアを自分らしく彩ろう
ダイニングルームをイメージした空間はグレーや黒、白を使ってシックでシンプルなインテリアに仕上げましたが、隣り合う空間に設けたウォークインクローゼットは女性らしさ満開に仕上げて遊び心を加えています。イメージは映画のワンシーンから切り取りました。男性的な色合いの空間に女性的なピンク色が室内窓からちらりと見える。そんな意外性を演出するのも楽しいと思います。
ウォークインクローゼットの隣は、黒いアルミ桟と大理石調の壁面化粧板、グレーのクロスの組み合わせでキリッとした印象にまとめた階段コーナー(アルミオ―プン手すり、システム階段新商品)。タブチさんが「動く壁」と表現するドア「ベリティスプラス」(上吊り引戸片引き)の「しっくいホワイト柄」をウォークインクローゼットの出入口に組み合わせ、さわやかな明るさもプラス。見切り材で4分割にデザインされた壁面化粧板にブラケット照明を2灯採用。壁面は左右均等に割り、照明は右寄せにという“シンメトリー×アシンメトリー”でバランスよく計算されている。階段の上がり口は、ダイニングテーブルと同じモールテックスで仕上げている
メンズライクなライダースに花柄のワンピースを合わせるなど、ファッションで着崩しを楽しむように、インテリアでも意外な組み合わせで個性を表現すると楽しいですよね。そんなときには“テーマカラー”“趣味のもの”“好きな映画やドラマの世界観”などをキーワードにインテリアを考えるのがおすすめです。
住まいはプライベートな空間だからこそ“ワクワク”の要素を入れて、楽しく過ごしたいですね。
ちなみに、パナソニック内装建材株式会社 群馬工場には、僕がつくったダイニングルームのほか、空間デザイナーの坂田夏水さんが「パリの寝室」をテーマにつくった空間や、カリフォルニア工務店の岩切剣一郎さんによる、今大人気のカリフォルニアスタイルで設えた空間も展示されています。どちらもワクワクを感じられるこだわりたっぷりの空間で、見どころ満載です。
空間デザインを手掛ける夏水組の坂田夏水さんが手がけた「パリの寝室」
カリフォルニア工務店のクリエイティブディレクター、岩切剣一郎さんによるカリフォルニアスタイルの空間
\ ドアづかいだけでもこんなに楽しい /
クラフトレーベルで
私たちもインテリアを楽しんでいます
タブチさんが手がけている個人邸のオーナーでもインテリア好きな方が多く、
2018年7月に発売した内装ドア「ベリティス クラフトレーベル」や壁などでトレンドを取り入れながら、
自由に空間づくりを楽しんでいるそうです。
Profile
タブチキヨシ(たぶち・きよし)
住宅デザイナー・
クリエイティブプロデューサー
株式会社attract style代表取締役。株式会社house stage代表取締役。インテリアショップ「THE WOW!」経営。WOW PROJECT FC運営。愛知県生まれ。名城大学建築学科卒業。住宅デザインを仕事の軸として、商品開発、企画プロデュースを全国にて手がける。日本中にハッピーな家をたくさん建てることが夢! カワイすぎずカッコよすぎないデザインを追求しワクワクキャーな家を提案している。インスタグラムでは5.2万人のフォロアーを持つ。
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