住まいづくりの基礎知識

法律

環境・建築協定

街並みや景観の美しさも快適さや資産価値の一部

家を建てる際、間取りや採光・通風といったそこに住む人に直接かかわる部分には長い時間をかけて検討が繰り返されます。そこに住む人=家を建てる人ですから、当然といえるでしょう。ただし、それだけでは十分ではありません。外観や外構といった外回りにも気を配ることが、よりよい環境づくりや資産価値を維持・向上させることにもなります。
これから建てようとする家は、その地域や環境を形成する一つの要素となるわけです。落ち着いたたたずまいの家が続く中に、突如モダンでカラフルで奇抜な家が登場すると、その地域で長年にわたって培われてきた景観や街の雰囲気が損なわれてしまいます。損なわれるだけならまだしも、その家が引き金となって次々と奇抜な家が登場、すなわち乱開発がはじまってしまったら、その地域は雰囲気のまったく異なる街へと変貌してしまいます。一度壊れてしまった景観や環境を元に戻すのは、並大抵のことではありません。
これから家を新築あるいは改築する場合には、すでにそこにある街並みや景観に調和することにも十分配慮することが大切です。そしてその気配りは、その地域に暮らす住民の一員になることの意思表示であり、近隣住民との円滑なコミュニケーションを図る手立てにもなります。

「建築協定」は景観への配慮を住民の総意でルール化したもの

さて、景観に配慮するといっても、配慮のとらえ方には個人差がありますし、何をどうしたらよいのかわからないという場合もあるでしょう。そんな背景もあって登場したのが「建築協定」です。建築協定は建築基準法に基づくもので、建築基準法で定められた建築物に関する基準に上乗せする形で、地域の特性などに応じて一定の制限を、そこに暮らす住民自らが設けることのできる制度です。たとえば、一定の区域を定め次のような協定内容を定めます。

(例)

  • ・建物の用途は住宅に限るなど、用途を制限する
  • ・階数や高さの基準を定める
  • ・道路や隣地からの後退距離を定める
  • ・敷地の大きさの基準を定める
  • ・建ぺい率や容積率を建築基準法より厳しく定める
  • ・かわらや外壁の色を、ある程度制限する
  • ・エアコンの室外機が直接見えないようにするなど、美観維持に向けた制限を設ける

こうした協定を住民たちが守っていくことによって、将来にわたって地域の住環境が保全され、魅力ある個性的な街づくりが行われます。なお、建築協定を結ぶには、協定を結ぼうとする区域内の土地の所有者などの全員の合意が必要であり、市長の認可を得て成立することになります。その地域にどのような建築協定があるかは、自治体の建築担当課で調べることができます。

日照権とは

「日照権」はなじみのある言葉なので法的に認められた権利だと思われがちですが、実は日照権を明文化したものはなく、つまり日照権を明確に規定(保護)した法律は存在しないのです。日照権が取りざたされるようになったのは、都市部におけるビルやマンションなど高層建築物の建設ラッシュにより、建設地の近隣住民の日照が妨げられるようになったからです。

日照権と建築基準法は直接関係しない

日照権問題の最大の要因は、日照権と建築基準法とが直接関係していない点にあります。家を建てる側にしてみれば、日影制限をクリアするなど建築基準法を遵守しているのだから、何の問題もなく家が建てられると思うはずです。しかも、建築基準法に即している以上、行政も建築確認書を交付せざるを得ません。それでも、近隣住民が「受忍限度」を超える日照妨害が生じると判断すれば、設計変更や工事の差し止めなどを要請し、双方に歩み寄りがない場合には訴訟となってしまうのです。訴訟となった場合、これまでの判例ですと、建築基準法などの関連法規をすべて遵守していた場合でも敗訴になったり、逆に若干の法規違反があっても勝訴となったケースもあったりと、まさにケースバイケースの状態です。

受忍限度
日照権をめぐる訴訟においては、日照被害の程度、建物が建っている地域の状況、被害を受けるに至った事情、加害者の加害行為の内容・程度・社会的評価、加害行為を行うに至った事情、加害者に加害の意志があったか、なかったか、などを裁判所が総合的に検討して決定します。

近隣への配慮と誠意をもって話し合うこと

日照権のトラブルを未然に防いだり、トラブルが生じた場合の最善の解決方法は、やはり近隣への配慮と、互いに妥協点を見出そうという謙虚な姿勢をもち、誠意をもって話し合うことです。仮に訴訟で勝ったとしても、その後の近隣との関係はどうなるでしょう。近隣から孤立したままで暮らし続けていかなければならないとしたら、せっかくのマイホームも快適な住環境から遠ざかってしまいます。ただし、無理難題や不当な要求に対しては、弁護士に相談するなど毅然とした態度で臨むことが大切です。

建築協定とは

住宅地としての環境または商店街としての利便を高度に維持増進するなど建築物の利用を増進し、かつ、土地の環境を改善するため、市町村の条例に建築協定の締結に関する旨が定められている場合に、土地所有権者及び借地権者等は、自主的にその全員の合意により、その区域について一定の区域を定め、その区域内における建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠又は建築設備に関して、一般の建築基準法の規定より厳しい基準を定めた「建築協定」を締結することができます。建築協定を締結しようとする土地所有者等は、その全員の合意により、協定の目的となっている土地の区域、建築物に関する基準、協定の有効期間、および協定違反があった場合の措置を定めた建築協定書を作成し、特定行政庁の許可を受けなければなりません。

建築協定で定める内容

  1. 1.建築協定の及ぶ区域
  2. 2.建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠または建築設備に関する基準
  3. 3.建築協定の有効期間
  4. 4.建築協定に違反した場合の措置

建築協定は、本質的には私法上の契約であって、建築基準法第3章の制限とは性格が異なります。したがって、建築協定の中に定められた建築物に関する基準は建築確認の際の審査の対象にはなりませんし、協定の違反に対しても是正命令を適用する余地はありません。違反に対しては、協定遵守の説得等に努めるほか、最終的には、裁判所の判断に基づき契約上の義務の履行を求めることになります。

建築協定における行政の役割

建築協定締結に向けての支援をはじめ、協定書の受け付け、公聴会の開催、認可および公告を行います。

地域住民の役割

建築協定はそこで暮らす住民が中心になって、自ら建築物や敷地の条件に関して、厳しいルールをつくるものです。そのため、事前の十分な話し合いや、協定締結後の協定維持運営のための場(協定運営委員会など)が必要です。また、建築協定の決定や変更には、土地所有者などの全員の合意が必要です。さらにそこで合意されたことは当事者間だけでなく、後に新しく住民になった人々に対しても効力が及びます。

この内容は2004年2月16日現在のものです。

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