家づくりの安心を支える、工法と構造の基本
安心して、心地よく暮らすために。構造から住まいを考えよう
どんなに美しい外観や便利な間取りでも、家の「土台」や「構造」がしっかりしていなければ、安心して長く住むことはできません。日本は地震や台風も多い国。だからこそ、見えない部分こそ重要です。このページでは、家の基礎や地盤のこと、構造の種類、そして快適性や安全性につながる住宅性能まで、家づくりの土台になる知識をご紹介します。
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建物の基礎
住宅の構造
住宅に求められる性能
安心して家を建てるために。地盤と基礎を正しく知る
家づくりの見えない部分――それが「地盤」と「基礎」です。建物の重さをしっかり支え、長く安心して住み続けるためには、この土台部分の適切な判断が欠かせません。設計やデザインだけでなく、「この土地に建てて本当に大丈夫か」「どの基礎工法が適しているのか」といった視点から、しっかり確認することが大切です。調査・設計・施工の各段階で信頼できるプロと協力しながら、慎重に進めていきましょう。
地盤調査で「建てていい土地か」を確認
家を建てるにあたって、最初に確認すべきなのが地盤の強さです。特に以下のような条件に該当する土地では、事前の地盤調査が不可欠です。
- もともと水田や沼地だった土地、埋立地、傾斜地など
- 地下水位が高い地域、周辺に液状化リスクが指摘されている地域
- 盛土や造成が行われたばかりで、地盤が安定していない可能性がある場合
一般的な戸建住宅では、「スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)」という方法で地盤の強度を測定します。調査の結果によっては、建築を安全に進めるために「地盤改良」が必要となるケースもあります。
地盤の安全性を調べるためには、以下の情報も参考にしましょう。
- 国土地理院の「土地条件図」や、自治体が公開している「地盤災害マップ」
- 宅地開発に伴って作成された「造成図」「盛り切り図」などの資料
- 法務局で取得できる登記簿、測量図、公図など
これらをあわせて確認することで、建築予定地がどのような土地だったのか、災害リスクがあるのかを見極める手がかりになります。
地盤が弱い場合は「地盤改良」が必要
地盤調査の結果、十分な強度がないと診断された場合には、「地盤改良工事」によって安全性を確保します。改良工法の選定には専門的な知識が必要なため、信頼できる設計者や施工会社と相談しながら進めましょう。
代表的な改良方法
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表層改良工法
地表から1〜2m程度の浅い地層を固化剤などで固めて強化する。比較的簡易でコストも抑えやすい。
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柱状改良工法
土を掘削せずに地中に円柱状の固化体を造り、建物の荷重を分散。中層の地盤改良に有効。
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鋼管杭工法
鋼製の管を支持層まで打ち込み、建物の荷重を深層まで伝達。重い構造物や高層住宅に適する。
土地の条件、建物の規模や構造、地中障害物の有無によって、採用すべき工法が異なります。調査結果と照らし合わせながら、最適な改良計画を立てましょう。
基礎の種類と特長を知っておこう
地盤が整えば、次に大切なのは「基礎」の選定です。基礎は、建物の荷重を地面に伝える重要な構造で、適切な設計と施工が住宅の耐久性と安全性を左右します。
代表的な基礎の種類と特長
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ベタ基礎
- 建物の床下全面に鉄筋コンクリートを敷設し、荷重を面で支える構造
- 不同沈下に強く、耐震性・防湿性に優れた現在の標準的基礎工法
- 湿気やシロアリの侵入を防ぎやすく、長期的な安心感がある
- 木造住宅からツーバイフォー住宅まで広く採用されている
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布基礎(ぬのきそ)
- 柱や壁の下に帯状のコンクリート基礎を配置する伝統的な工法
- 材料費や工期を抑えやすく、コスト重視の住宅で採用されることもある
- 地盤が強固で不同沈下のリスクが低い土地向き
- 現在ではベタ基礎に比べ採用は少なくなっている
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杭基礎
- 建物の荷重を、地中深くの強固な地層(支持層)に伝える構造
- 軟弱地盤や高層・重量構造の住宅(3階建て・鉄骨住宅など)で採用
- 表層改良や柱状改良では対応できない土地に用いられる
- コストは高くなるが、安全性・安定性を確保できる
基礎は、構造の種類や建物の重さ、地盤の条件によって設計内容が大きく変わります。構造計算や現地調査をもとに、安心して住み続けられる基礎づくりを心がけましょう。
見えないからこそ、大切にしたい「基礎」の品質
建物の基礎や地盤は、完成後には目に見えない部分ですが、そこにこそ家づくりの本質があります。トラブルの多くは、見えないところで起きるもの。だからこそ、信頼できるパートナーとともに、調査・設計・施工のすべての工程で「安心の根拠」を積み重ねていくことが、住まいの安心・安全につながります。
あなたの家はどの構造? 暮らしに合う工法の選び方
家の骨組みをつくる「構造」は、耐震性・耐久性・快適性を左右する重要な要素です。外観や間取りだけでなく、構造によって「どこまで自由なプランが可能か」「災害にどれだけ強いか」「将来のリフォームに対応できるか」といった住まいの性能全体が大きく変わってきます。
現在の住宅は、使われる主な構造材によって大きく分けると「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造(RC造)」の3つに分類され、それぞれの中にさらに複数の工法があります。ここでは、代表的な住宅構造とその特長をわかりやすくご紹介します。
構造と工法の基本分類
住宅の構造は、大きく4つのタイプに分けられます。それぞれに異なる特長があり、設計の自由度や施工方法、住み心地、将来のリフォームのしやすさなどに影響します。
代表的な構造と工法
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在来工法(木造軸組)
日本で長年採用されてきた伝統的な構造。柱と梁で構成され、間取りの自由度が高く、増改築にも柔軟に対応。
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ツーバイフォー(2×4)工法・輸入住宅)
パネル化された壁・床・天井で六面体を形成。耐震・断熱・気密性能に優れ、北米スタイルの意匠にも対応。
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プレハブ住宅
工場で生産した部材を現場で組み立てる方式。高精度で工期が短く、安定した品質が特長。
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RC造・重量鉄骨造
鉄筋コンクリートまたは重量鉄骨を用いた構造で、耐震・耐火・遮音・耐久性に優れたハイグレードな建物向き。
構造体の構成方法にも「軸組工法(点と線で支える)」と「壁式工法(面で支える)」があり、設計自由度や耐震性能、施工性に違いが出てきます。どの構造を選ぶかは、敷地条件、予算、住まい方の希望など総合的な視点で検討することが大切です。
在来工法(木造軸組)
日本で古くから使われてきた構造で、柱・梁・筋交いなどによって骨組みを構成する「軸組工法」の代表です。構造材が点と線で構成されているため、間取りの自由度が高く、敷地の形状にも柔軟に対応できます。近年では、接合部に金物を使用するなど補強を施し、耐震性を高めた仕様も増えています。
特長
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- リビングの吹抜けや大開口も比較的自由に設計可能
- 狭小地、傾斜地、変形地にも対応しやすい
- 将来のリフォーム・増改築にも柔軟に対応できる
- 和風建築との相性が良く、柱や梁を意匠的に見せることも可能
注意点
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- 木材の品質管理や接合部の強度、施工精度により性能が左右される
- 耐震性確保のためには、バランスよく耐力壁や筋交いを配置する設計が必要
ツーバイフォー(2×4)工法・輸入住宅
北米で広く普及している構法で、壁・床・天井をパネル化し、建物を「面」で支える六面体構造。建物全体を箱のように構成することで耐震性・断熱性・耐火性に優れ、開放的な空間づくりが可能です。
特長
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- 面で支える構造により、地震の揺れに強い
- 高気密・高断熱で、温度差が少なく快適な室内環境を実現
- 火災に強く、区画ごとの防火性能が高い
- デザイン性の高い輸入住宅スタイルにも対応可能
注意点
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- 壁が構造体の一部となるため、開口部(窓・ドア)のサイズや位置に制約あり
- リフォーム時、構造壁の移動や撤去が難しい場合がある
プレハブ住宅
工場であらかじめ部材を生産し、現場で組み立てる建築方法。品質のバラつきが少なく、施工期間が短縮できる点が魅力です。プレハブには、鉄骨系・木質系・コンクリート系といった構造材料の違いに加えて、「ユニット方式」「パネル方式」「軸組方式」など、組み立て方の違いもあります。
特長
-
- 工場生産により高精度・高品質な部材を使用
- 天候に左右されにくく、短工期で完成できる
- ハウスメーカーごとに独自技術があり、安心の品質保証体制が整っている
注意点
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- プランがあらかじめ規格化されており、設計の自由度が制限される場合も
- 各社独自構法のため、将来のリフォームには制約が出ることもある
- 道幅や搬入条件によって、施工が難しい土地もある
RC造(鉄筋コンクリート造)・重量鉄骨造
鉄筋とコンクリートを組み合わせたRC造、または断面の厚いH型鋼などで構成する重量鉄骨造は、いずれも耐震性・耐火性・遮音性・耐久性に優れた高性能構造です。マンションやビルに多く用いられますが、近年は3階建てや都市型住宅にも選ばれています。
特長(RC造)
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- 外壁や間仕切りにコンクリートを使い、非常に高い耐震性と遮音性を実現
- 火災時の延焼リスクが低く、安全性が高い
- 劣化しにくく、建物寿命が長い
特長(重量鉄骨造)
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- 強度の高い鋼材により、大空間・大開口の設計が可能
- 柱や壁を減らすことで自由な間取りに対応できる
- RC造に比べて施工が早く、コスト調整もしやすい
注意点
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- RC造は型枠工事やコンクリートの養生期間が必要で、工期・コストともに大きくなりやすい
- 鉄骨造では、防錆処理は必須。規模や用途によっては耐火被覆が求められる
暮らしに合った構造を選ぶために
構造ごとに性能・コスト・設計の自由度・リフォーム性などに違いがあるため、どれが「優れている」というよりも、自分たちの暮らし方に「合っているかどうか」が最も大切です。
- 将来的に間取り変更やリフォームを検討しているか
- 家族構成やライフスタイルに合わせて、どれだけ自由な空間が必要か
- 地域の気候条件や地盤状況に構造が適しているか
これらの視点をもとに、建築士や施工会社と相談しながら、自分たちにとって最適な構造・工法を選びましょう。家の骨組みは、長く住むための安心の基盤。構造をしっかり理解しておくことが、後悔しない住まいづくりへの第一歩です。
ずっと快適に住み続けるために。住宅に必要な“基本性能”とは?
家は建てたら終わりではなく、そこから始まる暮らしを、どれだけ心地よく、安心して続けていけるかが大切です。そこで注目したいのが「性能」。住宅には見た目や広さ以上に、構造的な強さ、耐久性、住み心地、そして光熱費や快適性を左右する断熱・気密性能など、見えにくいけれど暮らしに深く関わる性能が求められます。
ここでは、住まいの4つの基本性能「耐久性」「安全性」「住み心地」「断熱・気密性」について説明します。
見えないところから、家の寿命を守る「耐久性」
家を長く保つためにもっとも重要なのが、湿気やシロアリなどによる劣化を防ぐ“耐久性”の確保です。特に木造住宅では、木部の腐食や蟻害(ぎがい)をいかに防ぐかがカギになります。
主な対策とポイント
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- 木材には防腐・防蟻処理を施し、土台や柱、浴室・台所周辺など湿気が多い箇所では、加圧注入材や防蟻材の使用を検討する
- 地面からの湿気を抑えるために、防湿シートの敷設やコンクリート打設など、床下の防湿対策を実施
- 基礎の高さは地盤面から30cm以上確保。跳ね返った雨水で土台が濡れるのを防ぐ
- 床下・小屋裏の換気をしっかり設計し、空気の滞留によるカビや腐朽を防止
- 外壁や屋根の防水性、排水設計(軒や庇など)にも気を配る
加えて、建てた後の定期点検と早めのメンテナンス対応が、建物の長寿命化には欠かせません。特に水廻りや床下は数年に一度のチェックが推奨されます。
万が一の時も家族を守る「安全性」
地震や火災などから命を守るのが「安全性」。住宅は建築基準法に基づき、一定以上の耐震性・耐火性・耐風性が求められますが、長く安心して住むためには、さらにプラスαの対策を考えておくことが理想です。
耐震性
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- 建物の重心バランスや形状、基礎の強さ、柱・梁の配置が重要
- 耐力壁の量と配置、接合部の補強(金物使用など)により、耐震性能を確保
耐火性
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- 外壁材・屋根材・内装材に不燃・難燃性の高い材料を選択
- 延焼防止設計(隣家との距離や開口部の大きさ)も重要
耐風性
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- 台風などの強風時の影響を抑える屋根形状、開口部の強度に配慮
防犯性
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- テレビドアホン、防犯ガラス、シャッター、外構計画による視線コントロール
- セキュリティ会社のシステム導入やスマートロック連携も選択肢に
住宅性能表示制度や耐震等級、劣化対策等級などの基準も参考になります。数字や等級で比較することで、家の「見えない安心」を可視化できます。
毎日の心地よさを左右する「住み心地」
性能というと構造ばかりに注目しがちですが、「快適に暮らせるかどうか」は日々の心地よさにも直結しています。採光、通風、遮音性は、図面段階から意識しておきたい要素です。
採光・日当たり
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- 建物の向き、LDKや主寝室の配置を南向きに
- 窓の高さや数、位置の工夫で光の入り方を調整
- 吹き抜けやトップライトで明るさを確保する方法も
通風・換気
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- 窓の対角配置による自然通風の確保
- 高低差のある窓配置で「煙突効果」を活かす
- 結露やシックハウス対策として24時間換気システムの設置が必須
遮音性
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- 外部の騒音対策には複層ガラスや気密性の高いサッシを採用
- 室内の音(生活音・上下階の足音)は間取りや床材で軽減
- 隣接する寝室・リビング間には間仕切りの断熱材・防音材をプラス
「住み心地」は家族それぞれの感じ方もありますが、後から変更しづらい部分が多いため、初期段階からの設計配慮が重要です。
快適性と省エネを両立する「断熱・気密性能」
住宅の省エネ性能と快適性を大きく左右するのが、断熱と気密。冷暖房に頼りすぎない住まいを実現するために、設計段階からしっかりと考えておく必要があります。
断熱性能の要素
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- 天井・壁・床に断熱材をしっかり充填(グラスウール/吹付断熱/フェノールフォームなど)
- 開口部(窓・ドア)は複層ガラス+断熱サッシが標準仕様に
- 外断熱 or 内断熱の使い分けでエリアに合わせた対応が可能
気密性能の要素
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- 壁・屋根・床の継ぎ目、窓まわりの気密施工で“すきま風”をブロック
- 気密性が高まることで断熱効果も向上し、部屋ごとの温度差を軽減
- 高気密住宅には「熱交換型の24時間換気システム」が必須。空気を循環させつつ、室温を逃がさず新鮮な空気を取り込む
プラスαの視点
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- 国のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や次世代省エネ基準への対応で、将来の光熱費や資産価値にもプラスに
- 断熱等性能等級や一次エネルギー消費量等級など、性能表示で比較検討も可能
性能は“見えない資産”。設計段階から意識を
住宅の性能は、完成してしまえば見えにくくなる部分がほとんどです。しかし、そこには日々の暮らしや安心、住まいの価値を支える重要な「見えない資産」が詰まっています。
単に「住めればいい家」ではなく、「快適で、安全で、長く住み続けられる家」をつくるために。素材や設計、施工精度、そして暮らし方まで見据えて、住宅性能にもしっかり目を向けてみましょう。
この内容は2025年8月現在のものです。
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