( column )
2025.07.01
- text
- 徳 瑠里香
- photography
- 林 直幸
猫と暮らす家づくりの
コツ5選
猫と人がともに心地よく安心して暮らせる空間をつくるには?
猫も人も快適で安全な住まいづくりを提案する一級建築士・愛玩動物看護師のいしまるあきこさんに、建材選びのポイントと活用法を教えてもらいました。
ドアで“出入りOK・NG”を
知らせる
猫が自由に出入りできる部屋とできない部屋を分けるために、役立つのがドア。
かしこい猫はハンドルに手をかけて簡単に扉を開けてしまいます。猫にとっての危険がある、あるいは入られたくない、出入りNGの部屋の開き戸は、猫が手をかけても開けられにくい「握り玉」のドアノブにするのがおすすめです。
いしまるさんの「まるねこ一級建築士事務所」で設計・猫リフォーム施工した猫賃貸の「ecoねこハウス川越」。ドア:Craft Label(クラフトレーベル)MD型 採光部:透明熱処理ガラス カラー:チェリー柄 ハンドル:B1型 オフブラック色
引戸には、表と裏の両側から施錠できる「両側サムターン錠」や片側から操作する「間仕切り錠」を付けることで、猫が開けられない=入れない部屋として猫は理解することができます。
出入りOKの部屋の扉には、くぐり戸(ペットドア)を付けるという選択肢も。くぐり戸が苦手な猫もいるので、最初はのれんを外してくぐり穴を通り抜ける練習をして、慣れてきてからのれんを取り付けるとスムーズです。
「まるねこ一級建築士事務所」で設計・猫リフォーム施工した猫賃貸の「猫と暮らせる高尾の戸建賃貸」。出入りOKの部屋(奥)にはくぐり戸付きのペットドアを、出入りNGの部屋(手前)には引手上部に両側サムターン錠(ドアの表と裏の両側から操作できる錠)をつけて引戸を開けられないようにしている。ドア:Standard Label(スタンダードレーベル)PA型 カラー:ブルーグレーオーク柄 ハンドル:B1型 オフブラック色/引手:C1型 オフブラック色
「わんにゃんSmile」のくぐり戸は、引戸に付けたときに下と横(戸先)に枠がないので、猫の通り抜けと人の引戸の開閉が同時に起きても、猫がくぐり戸(ペットドア)の枠と壁に挟まれる事故が起きにくく、安心です。
「まるねこ一級建築士事務所」で設計・猫リフォーム施工し、いしまるさんが自ら運営する老猫ホーム・猫ホテル・開放型シェルターの「まるねこ」。ドア:スタンダードレーベルTA型(くぐり戸対応) 本体カラー:ブルーグレーオーク柄 枠カラー:ソイルブラック柄 引手:C1型 オフブラック色
室内窓とガラス戸でつくる
安全で心地よい距離感
猫の脱走を防ぐために、玄関まわりには二重にドアを設置できるとよいでしょう。また、猫の安全を守る侵入対策のため、キッチンは個室にするなど独立させられるとよいです。
猫賃貸の「猫と暮らせる高尾の戸建賃貸」。玄関ホールに設置したドア/独立したキッチンドア:クラフトレーベルMD型 採光部:透明熱処理ガラス カラー:グレージュアッシュ柄 ハンドル:B1型 オフブラック色
玄関ホールに設置したドアは、猫がそばに寄ってきたのがわかる大きなガラス面の扉がおすすめです。開け閉めしたときにぶつかる危険を回避でき、家に帰ってきたときに愛猫がガラス越しにお迎えしてくれることもあるでしょう。
独立したキッチンには、室内窓を導入すると、別の部屋にいてもガラス越しにお互いの存在を感じられます。
ガラス扉や室内窓で、仕切った空間をゆるやかにつなぎ、心地よい距離感を保ちながら、安心できる居場所を確保しましょう。
「まるねこ」の玄関まわりの室内窓・ガラス面の扉とインテリアカウンターのキャットウォークのデスク。人も猫も一緒に使える。人と一緒に使える
キャットウォーク・ステップを
猫の快適な居場所を増やせるキャットウォーク・ステップは、人が棚やデスクとして猫と一緒に使う方法がおすすめです。インテリアカウンターは好みの長さ、奥行き、高さで設置ができ、猫のくぐり抜け穴の加工も可能。うまく活用すれば、人と猫がともに使いやすく、過ごしやすい場所をつくれるはずです。
「まるねこ」のキャットウォーク・ステップ。人用の棚と猫の通り道や居場所を兼ねている。方立(縦の板)で猫と人の使用場所を分け、猫も下りやすいつくり。奥行きは30cmで猫同士がすれ違いやすい。
「まるねこ」のシンプルな3段のキャットウォーク・ステップ。奥行き30cmで人のデスクも兼ねている。キャットウォーク・ステップを使い続けてもらうためには、窓の外を眺められる、隣の部屋に行く通り道になっている、人の様子を観察できる、寝床になるなど目的をつくって飽きさせない工夫が必要です。
窓際に設置する場合は、猫が外の景色を眺められる高さに。デスクまわりに設置する場合は、人の目線より少し高めに。奥行きは1匹なら20cm以上で2匹以上なら30cmがおすすめです。寝床も兼ねる場合は40cmはほしいところ。段差は、猫たちが負担なく降りられて、人が使いやすいA4サイズの本などがおさまる35〜40cmほど(一般猫、大型猫)がよいでしょう。短足猫なら15〜20cmで段差を小さくして下りやすくします。
多頭の場合、仲があまり良くない猫同士が行き止まりでケンカをしたり、上から弱い猫が落とされたりするので、複数のくぐり穴を設けて、複数の逃げ道を用意しましょう。
また、猫の安全と衛生管理のため、人が椅子に乗って手が届くような範囲の高さにとどめます。猫の落下によるケガを防ぎ、猫が体調不良でうずくまっても救出でき、猫毛や吐き跡などの掃除がしやすいように高さは控えめにしましょう。
「まるねこ」のキャットウォーク・ステップにある水平面の猫のくぐり抜け穴。横長で猫がのぼりおりしやすいサイズ。滑りにくい床で
足腰の負担を軽減
家中を歩き、走り回る猫の足腰への負担を軽減し怪我から守るために、導入したいのが滑り配慮した床材。
「ベリティスフロアー わんにゃんSmile」は、滑りにくい表面仕上げに加え、抗ウイルス加工で床暖房にも対応。汚れがつきにくいため、食べこぼしやそそうなどがあっても、さっと拭きとり、簡単な手入れで清潔が保てます。フローリングの目地もコーキング材を入れる施工方法のため、水分が染みこみにくいつくりです。
フローリングを張り替えるのは大がかりですが、厚みが1.5mmのリフォームフローリング USUI-TA[ウスイータ]なら既存の床に貼るだけで、滑り配慮が完了。貼ったらすぐに使い始めることができ、施工時間が短いので猫を待たせる時間が短いのも大きなメリットです。
ツルッと滑りやすい床は、元気な若い猫が走ったりジャンプで着地したり、足腰が弱ってきた高齢猫が歩く際の関節の負担になりやすく、思いがけない怪我や病気につながる危険も。滑りにくい床で猫の健康に配慮しましょう。
「まるねこ」猫が映えるブルーグレー
猫たちが映える色のひとつが、猫の毛色にないブルー。人の目にもやさしいブルーグレーを取り入れると、猫たちのかわいさが一層引き立ちます。
キャットウォーク・ステップの背面の壁をブルー系にしたり、ブルーグレーオーク柄のベリティスのドアを選んだり。その前を通るたびに、猫たちのかわいさにキュンとするはずです。
「まるねこ」ほかにも、こんな配慮ができると、猫と人がより心地よく安心して暮らせます。
・断熱材や床暖房、二重窓で寒さ・暑さ対策をして適温をキープ
(猫にとっての適温は、室温20〜28度、湿度40~60 %)
・壁は爪とぎで傷つきにくく消臭効果がある漆喰も
・ウスイータを壁に貼って爪とぎ対策とすることも
・水を交換しやすいように各階に洗面台や手洗器などの水まわりを設置
・猫トイレは頭数+1個の数を用意し、静かで狭すぎない置き場所が理想
・猫トイレ置き場に換気扇を設けてニオイが広がらない工夫
・猫が乗らないようにカーテンレールは天井付けがおすすめ
・カーテンは爪が引っかかる事故が起きるため、アルミブラインドを使用するのもひとつの手
・コード類は噛まないように隠せる収納を活用
「ecoねこハウス川越」の洋室。窓上の収納下部にカーテンレールを設けて猫が乗らない工夫をしている。人のライフスタイルや住まい、猫の性格や頭数などによって、できる・できない、向き・不向きがあります。「わんにゃんSmile」はそれぞれの「人と猫と快適な暮らし」に寄り添うさまざまな選択肢を用意しています。今回のPOINTを参考に、「我が家だったらこれができるかも」とピンと来たもの、取り入れられるものからぜひ試してみてください。
*記事内でご紹介した商品は、2025年7月1日時点の仕様となっております。
ご検討の際は、ショウルームやカタログ等でご確認ください。










