( ドアで魅せる家づくりのヒント集 )

( ドアで魅せる家づくりのヒント集 )VERITIS MAGAZINE

( interview )

家具から設計したナチュラルヴィンテージ

2025.04.01

text
片桐 絵都
photography
林 直幸

家具から設計した
ナチュラルヴィンテージ

秋田ホーム

1979年の創業以来、秋田県の気候や風土に合った住まいを提案し続けている秋田ホーム。機能性の高さはもちろん、洗練されたデザインにも定評がある。

それを最も体現するのが、秋田市内に完成したガレージ付きのモデルハウス。無骨なイメージの強いガレージハウスを、ナチュラルなテイストに昇華させた。

設計を手がけた技術部長の石井誠さんに、空間づくりのこだわりを伺った。

雪国×アウトドアに必須の
ガレージ

──まず秋田ホームさんの強みを教えてください。

石井: 創業以来45年間、施工エリアを秋田県に限定し、地域の特性を知り尽くした上で家づくりを行っていることです。積雪の多い秋田では、暖かで基本性能の高い住まいが求められます。そのため、優れた断熱性を持つ硬質ウレタンフォームやトリプルサッシを標準装備し、強固な構造のツーバイフォー工法にもこだわっています。

──今回ガレージ付きのモデルハウスをつくられたのも、そうした地域のニーズがあったからでしょうか?

石井: おっしゃる通りで、やはり地域柄、自家用車がないと生活できないんですね。さらに雪道でも走りやすい大型車に乗られる方が多いため、ガレージをどう組み込むかは家づくりの重要なポイントとなります。

また割と海が近いので、サーフィンや釣りの趣味を持つ方も多く、コロナ以降はキャンプやバーベキューを楽しむ方も増えました。結果、アウトドア用品の収納スペースに対してもどんどんニーズが高まっています。

そこで今回のモデルハウスでは、玄関に直結する14帖のガレージを設けました。一般的なガレージは6〜10帖なので、かなり広々と使うことができます。また横には3帖ほどの納戸をつくりました。キャンプギアを並べたり、釣り具いじりをしたりと、趣味部屋として活用できます。

(納戸)ドア:ベリティス クラフトレーベルLU型 採光部:透明熱処理ガラス カラー:ソイルブラック柄 ハンドル:A1型サテンシルバー色

──秘密基地のようでちょっとワクワクします。

石井: 「小さくていいから1人でこもれる部屋がほしい」とおっしゃるお客さまは結構多いんですよ。特に男性の方ですね。このモデルハウスはご夫婦と2人のお子さんの4人暮らしを想定していて、「あの人、まだ出てこないよ」などと奥さんにぼやかれながら、黙々と趣味に没頭する旦那さんが中にいるイメージです(笑)。

とはいえ、このスペースはガレージだけでなく玄関にも直結しているので、家の中から声をかければ聞こえる程度の距離感です。旦那さんだけでなく家族みんなが使いやすいよう、動線にもこだわりました。

家具・インテリアを起点に
内装を考える

──ガレージと納戸はインダストリアルな雰囲気ですが、LDKは大きく印象が変わりますね。内装はどう決めていったのでしょうか?

石井: インテリアを起点にして、全体のイメージを固めていきました。ヴィンテージ調のソファやテーブル、照明など、最初に使いたいインテリアを決めて、それらを軸にタイルやネイティブ柄のファブリックなどをバランスよく取り入れています。

クロスもインテリアに馴染むよう、白ではなくグレーに。ワイルドになりすぎないように、床や梁には、家族みんなにとって居心地よい明るいオークの無垢材を使いました。いわゆる“ガレージハウスらしさ”は残しつつも、アメリカンテイストに偏ることなく、ナチュラルなヴィンテージスタイルに仕上げています。

──インテリアから決めるという手法は珍しいですね。どんなコーディネーターさんに依頼したのでしょうか?

石井: 実は、設計を担当した私がインテリアもほぼ全てセレクトしました。コーディネーターを入れると完璧にまとまりはするのですが、今回はあえてひとクセある尖った感じを出したかったので。

──なるほど!設計者自らインテリアを選ぶことで、内装と間取りの発想もさらに広がりますね。

石井: そもそもガレージハウスのテイストは好みが分かれやすいですよね。正直、このモデルハウスもそこは割り切ってつくったんです(笑)。ただお客さまの反応を見ていますと、こういったテイストがお好きじゃない方でも「このポイントは好き」「こんな組み合わせ方があるんだ」など、新たな発見やヒントが得られるようです。そういった意味では、今の時代感やニーズにうまくフィットしたのではないかと思っています。

ヴィンテージ調に馴染む
パールグレー柄&
ソイルブラック柄

──ドアは全てVERITIS(ベリティス)を採用されたそうですが、色柄はどう選びましたか?

石井: 全体的にミックス感のある内装なので、基本のドアはなるべく主張を押さえたいと思い、グレーのクロスに馴染むパールグレー柄を選びました。

(左)ドア:ベリティス クラフトレーベルMD型 採光部:透明熱処理ガラス カラー:ソイルブラック柄 引手:C3型オフブラック色(中)ドア:ベリティス クラフトレーベルPC型 カラー:パールグレー柄 ハンドル:A1型オフブラック色(右)ドア:ベリティス クラフトレーベルPC型 カラー:パールグレー柄 引手:C1型オフブラック色

──インテリアともよく合っていますね。

石井: アクセントにしたいドアだけソイルブラック柄を採用したのもポイントです。マットな質感なので、適度な重厚感と上品さが出るのがいいですね。ベリティスのドアは色柄だけでなくデザインも豊富なので、使う場所によってベストなものをセレクトできます。

また、ドア以外ではキッチンもパナソニックを採用しました。扉に選んだのは、全体のコンセプトにマッチするヴィンテージメタル柄です。こちらは少し表情のある色なので、空間に程よく味わいを与えてくれます。

贅沢なくつろぎ空間を随所に

──LDKでひときわ目を惹くのがタイル貼りのダウンフロアスペースです。

石井: 普通なら小上がりの和室などを設けるところですが、逆に30cmほど床面を下げてファイヤースペースに。リビングとは一線を画した空間にして、雪国らしいくつろぎ方ができるようにペレットストーブを設置しました。

炎を眺めながらうつらうつらしたり、コーヒーを飲みながら本を読んだりと、さまざまな使い方ができます。また対面の階段下にはヌックを設けているので、ここで昼寝をするのもいいですね。

──リビング上の天井は吹き抜けになっていますね。明るくてとても気持ちがいいです。

石井: 片流れの屋根に合わせた勾配天井にしているので、デザイン性が高く開放感もあります。また吹き抜けにすることで生まれた2階のフリースペースは、セカンドリビングとして活用しました。

──ファイヤースペースとヌックだけでなく、2階にも贅沢なくつろぎ空間があるんですね。ただ吹き抜けにすることで、断熱性に影響はないのでしょうか?

石井: 建物自体の断熱性・気密性がしっかりしているので、1階の暖気が上に上がることによって家全体が暖まります。むしろ使うエアコンの数が少なくて済むので、電気代も抑えられますよ。

──確かに今、ちょっと暑いくらい暖かいです(笑)。

石井: これは秋田の県民性かもしれませんが、冬でも家の中だとTシャツ1枚で過ごす方が多いんですよ(笑)。それくらい「秋田の冬の家は暖かくて当たり前」という意識があるんじゃないかと思います。長年住むことを考えると、基本性能を高くしてランニングコストを抑えるのは、この地域の家づくりにおいてとても重要なことです。これからもお客さまのニーズに応えながら、新鮮な驚きを提供していきたいですね。

ヴィンテージ調のインテリアを起点に、さまざまなテイストが競演するガレージハウス。パールグレー柄とソイルブラック柄のドアが、色とりどりの個性を上品にまとめる。時代によって志向やムードは変わっても、そこに吹く風や人々の笑顔は変わらない。そんな地域の“らしさ”に常に寄り添いながら、秋田ホームは進化を続けていく。

*記事内でご紹介した商品は、2025年4月1日時点の仕様となっております。
ご検討の際は、ショウルームやカタログ等でご確認ください。