( ドアで魅せる家づくりのヒント集 )

( ドアで魅せる家づくりのヒント集 )VERITIS MAGAZINE

( interview )

76平米の“成長するリノベ”

2025.03.01

text
片桐 絵都
photography
平山 奏二郎

76平米の
“成長するリノベ”

はぴりの

福岡都市圏を中心に、年間50件以上のリノベーションを手がける「はぴりの」。物件探しからワンストップで家づくりをサポートし、これからの時代のニーズを捉えたモデルルームの設計も行っている。

今回、インテリアショップ・アクタスの協力を得て、子育て世代のためのモデルルーム「子どもと成長する家」が誕生した。

家族とともに時間を刻む空間とは、一体どのようなものなのか。設計のポイントを広報の竹内健太さんに聞いた。

物価高の時代に寄り添う
家づくり

──なぜアクタスさんとモデルルームをつくろうと考えたのでしょうか?

竹内: 弊社ではさまざまな企業と協業して、毎回テーマの異なるモデルルームをリリースしています。お互いの専門分野を掛け合わせ、多様化する暮らしのニーズに応えるのが目的です。今回アクタスさんをパートナーに選んだのは、リノベーションにインテリアの目線を取り入れるため。設計段階からインテリアを考えることで、空間の解像度がより上がると考えました。

──テーマを「子どもと成長する家」にした理由は?

竹内: 物価高で土地も建材も高騰し、マイホームが持ちづらい時代になっています。都市部であればなおさらです。何とか購入できたとしても、子どもが増えて部屋数がさらに必要になるかもしれない。金銭的に十分な余裕があれば、最初から広い家に住んだり、住み替えたりすることも可能ですが、全員がそうとはいきませんよね。

そこで今回、子どもの成長に合わせて家具の配置を変えることで、部屋数や用途を変化させられるモデルルームをつくることにしました。現実的な予算で購入でき、ライフシーンが変わっても住み続けられる家です。

──なるほど。まず物件選びで重視した点は何ですか?

竹内: 2人の子どもがいる家族が暮らす想定で、立地と価格にこだわりました。場所は福岡市の中心地にほど近く、子育て世代に人気の閑静な文教エリア。部屋が広くなるほど取得費もリノベ費用もかさむため、76平米のコンパクトな物件を選びました。インテリアは全てアクタスさんのセレクトで、それらの費用を全て入れても近隣の新築と比べて半額程度に収まるようにしています。

柔軟に用途が変わる
半個室空間

──具体的にどんな工夫をされたのでしょうか?

竹内: 70平米台の家に家族4人が快適に住み続けるには、無駄な部屋をつくらず、空間に柔軟性を持たせる必要があります。そこで用いたのが「4D設計」です。

──「4D設計」とは?

竹内: 通常、縦と横と奥行きでプランニングする「3D設計」が一般的ですが、そこに時間軸の概念をプラスしたのが「4D設計」です。

同じ子どもでも、1歳と高校生とでは必要な個室は異なります。さらに子育てが終わって夫婦だけの生活になると、また必要な間取りは変わってきます。そこでまず、リビングの一角に半個室の空間を設けました。あえてゆるやかに区切ることで、子どもの成長に合わせて用途を変えられるようにしています。

Before
After
Before
After

──開放感がありながら、個室のムードもしっかり備えていますね。

竹内: キッチンで料理をしていても見える位置にあるので、乳幼児期はここでお昼寝をさせて、小学生になったら宿題をするスペースに。家族の書斎やワーキングスペースとしても活用できます。子どもが巣立ったら夫婦の趣味部屋や収納スペースにしてもいいですし、帰省した子どものベッドスペースとしても使えます。

──リビング横のスペースとは別に洋室が設けられていますが、ここにも「4D設計」が活かされているのでしょうか?

竹内: おっしゃる通りです。もともとあった2部屋を1部屋にして、子どもが小さいうちは家族みんなで広々と使える寝室にしました。中央にカーテンレールを取り付けているので、成長に合わせてカーテンで仕切ることもできます。完全に個室にしたければ、壁を造作することも可能です。子ども2人にそれぞれの部屋が必要になった場合には、リビング横のスペースを夫婦の寝室として使う方法もあります。

Before
After
(洋室)ドア:ベリティス スタンダードレーベルDB型 カラー:しっくいホワイト柄 ハンドル:P1型サテンシルバー色 (クローゼット)収納用建具:折れ戸 PA型フラットタイプ カラー:しっくいホワイト柄 取っ手:T5型サテンシルバー色
白のドアとキッチンを
差し色に

──内装のイメージはどのように固めていったのでしょうか?

竹内: 長く住むことを考え、流行に左右されないナチュラルな雰囲気を重視しました。床を起点にするため、最初にVERITIS(ベリティス)マイスターウッドシリーズのアッシュクリアをセレクト。そこから空間の基調となるカラーをグレーに決めました。

内壁はモルタルなどの選択肢もありますが、コストを抑えるために全面クロスを採用。濃淡の異なるグレーを組み合わせて表情を出しています。空間の統一感が保てるよう、サンゲツさんの同一シリーズのクロスを使って質感を揃えたのもポイントです。

(リビング)ドア:ベリティス クラフトレーベルLU型 採光部:透明熱処理ガラス カラー:しっくいホワイト柄 ハンドル:A1型サテンシルバー色 (床)マイスターズウッドフロアー トリプルコート カラー:アッシュクリア

──ドアとキッチンを白で統一した理由は?

竹内: 白はベーシックであると同時に、輝度が高く主張の強い色です。例えば真っ白な冷蔵庫や洗濯機などは、意外と存在感がありますよね。その性質を利用して、グレー空間のアクセントに白を使うことにしました。

建具は全てベリティスのしっくいホワイト柄でまとめ、リビングドアは大きなガラス窓が印象的なCraft Label(クラフトレーベル)LU型に。ラクシーナのキッチンとLクラスのカップボードも、同じホワイトで揃えています。

Before
After

──奥まっていたキッチンが、リノベによって見事に生まれ変わりましたね。

竹内: 今回のテーマは「家族」が重要なポイントになるため、コミュニケーションの取りやすい対面式に。ファミリー物件で要望の多いパントリーも設置しました。ただ、そうするとキッチンがリノベ前よりもリビング側に少し出っ張ってしまうため、L字型にしてスペースを有効活用しています。

家族の安全・安心を
つくる家

──インテリアのセレクトはどのように進めていったのでしょうか?

竹内: 「4D設計」で作成した間取りをもとに、アクタスさんに最適なインテリアを提案していただきました。背もたれを動かせるソファ、サイズが調整できるベッド、座る場所がフレキシブルなダイニングテーブルなど、ライフシーンの変化を見越した家具が中心です。

──どれも洗練されていて、モダンな中にも温かみを感じます。

竹内: 子どもの安全面に配慮して、なるべく角の丸いインテリアをセレクトしていただきました。温かみを感じるのはそのためではないでしょうか。全体のテイストとしては、内装と同様、流行に左右されないナチュラルなデザインを意識しています。

──今回のモデルルームは最終的に販売されるそうですね。どんな暮らしが生まれていくのか、楽しみです。

竹内: 家族が安全・安心に暮らすためには、家のデザインや機能性だけでなく、コスト面についても考える必要があります。過剰に予算を割いて金銭的な余裕がなくなれば、心の安定まで損なわれてしまう。この「子どもと成長する家」なら、それぞれのご家族のペースで素敵な未来を描いていただけると思います。

グレーの陰影の中で存在感を放つ、真っ白なドアとキッチン。洗練されたインテリアが、その時々で空間に違った役割を与える。理想と現実の美しいバランスを保ちながら、住まう人の変化に寄り添う家が生まれた。

*記事内でご紹介した商品は、2025年3月1日時点の仕様となっております。
ご検討の際は、ショウルームやカタログ等でご確認ください。