( ドアで魅せる家づくりのヒント集 )

( ドアで魅せる家づくりのヒント集 )VERITIS MAGAZINE

( interview )

「土間」がつなぐ家族時間

2024.08.01

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片桐 絵都
photography
森 亮

「土間」がつなぐ家族時間

鶴田さんご夫婦×リズムデザイン

関西国際空港にほど近い大阪府の熊取町。大阪府下の町としてはもっとも人口が多く、自然豊かな住みよい地域として知られている。ここに、鶴田さんご家族が暮らす3階建ての家がある。設計から施工まで一貫して手がけたのは、地域密着型の家づくりにこだわるリズムデザインだ。

白とグレーを基調にしたシンプルモダンな空間は、どのようにしてつくられたのか。鶴田正人さん・弥生さんご夫婦と、リズムデザインのコーディネーター宮本さんに話を聞いた。

土間と格子ドア

──今回、リズムデザインに家づくりを依頼した理由は?

正人さん: リズムデザインにはもともと僕の実家のメンテナンスなどでお世話になっていて、この家の前に住んでいた一軒家のリノベーションもお願いしたんです。

弥生さん: 中古の物件を購入したんですけど、和室と押入れがある昔ながらの間取りだったので、1階の壁を抜いて広いワンルームにして、手入れが大変な畳も全てフローリングに替えていただきました。

おかげさまで快適に暮らせるようになって、8年くらい住んだんですけど、水回りは何も手を入れていなかったので、水漏れが発生してしまいまして。それでリズムデザインに相談したら、壁を壊して水道管を直さないといけないということで、かなり大掛かりになることがわかったんです。

正人さん: その時、リズムデザイン代表の千盤さんが「いっそ建て替えるのはどう?」と。それまで建て替えの発想は頭になかったんですけど、その一言を聞いた途端にテンションが上がってしまいました(笑)。

弥生さん: せっかくリノベーションしていただいたし、もったいないという気持ちも正直あったんですけど、古い家で他の部分にもガタが来ていたので、長い目で見た時に建て替えた方がいいと思い、決断しました。

──間取りや内装のイメージはどのように固めていったのでしょうか?

弥生さん: 前の家は元々の素材を活かしてナチュラルな雰囲気にしていたので、新しい家はシンプルモダンな印象に変えたいと思いました。

宮本さん: 奥さまの中で譲れないポイントがいくつかあったので、まずはそこを起点に進めていきました。具体的な要望を伝えてくださったので、わりとすんなり決まりましたよね。

弥生さん: でも、それを完璧に形にしてくださるのがすごいなと思って。千盤さんが設計してくださったんですけど、図面を見たら、もう私の頭の中にある世界そのまんま!イメージを口頭で伝えただけなのに、しっかり汲み取ってくださって本当にびっくりしました。

──宮本さんがおっしゃった、弥生さんの譲れないポイントとは何ですか?

弥生さん: 一番は、玄関からリビングまで続く「土間」です。私の祖母が家でお店をしていたんですけど、フローリングの横にキッチンまで続く土間があって、すごく使い勝手がよかったんです。昔から、いつか自分の家を建てるなら土間付きにしたいと思っていました。

宮本さん: 土間の和っぽい雰囲気に馴染むように、玄関の建具は格子調のVERITIS Standard label(ベリティス スタンダードレーベル)のHC型を提案させていただきました。抜け感を出しつつ、人の気配も感じられるようにしたかったので、採光部は透明ガラスにしています。

ドア:スタンダードレーベルHC型 採光部:透明熱処理ガラス カラー:ウォールナット柄 引手:C3型 サテンシルバー色

──和室などの建具はやわらかい色味の方が多いイメージですが、なぜ深い色を選んだのでしょうか?

宮本さん: 1階の建具はベリティスのしっくいホワイト柄で統一しているのですが、ここは白だと軽くなりすぎてしまうので、重厚感を出すためにウォールナット柄にしました。

空間の顔になる場所なので、中途半端な色にはしない方がいいと思ったんです。HC型はちょっとお値段が張るんですけど、「玄関だから頑張ろう!」って言ってね(笑)。

弥生さん: そうそう(笑)。もう一つこだわったポイントとしては、土間の素材はタイルではなく洗い出しにしました。

宮本さん: タイルだと雨の日に滑ったり、足跡がついちゃったりしますよね。中学生の息子さんが泥だらけで帰って来ることも多いということだったので、滑りにくさと汚れの目立ちにくさに配慮しました。

キッチン収納は全隠し

──土間と同じくらい存在感を放っているのが、3階まで続くリビング階段です。吹き抜けにした理由は?

弥生さん: 1階から呼んでも上まで声が届くようにしたかったからです。聞こえているくせに、主人も息子も応じない時はありますけど(笑)。階段もスケルトンにしているので開放的ですし、上に誰かいてもほどよく気配を感じられます。ちなみに最初は2階建てにする予定だったんですよ。でも進めていくうちに主人が趣味の部屋もほしいと言い出して……。

正人さん: 僕、釣りが趣味なんです。せっかく建てるなら釣り道具いじりができる場所がほしいなあと(笑)。

弥生さん: 私はとにかく土間の希望が叶えばそれでよかったので、途中から3階建てに変更しました。ただし「3階は好きにしていいから、1階と2階はあんまり口を出さないでね」という条件付きで…(笑)。

宮本さん: でもキッチンの色と形を選ばれたのもご主人でしたよね。

弥生さん: そうなんです!主人はほぼキッチンを使わないのに、なぜか「ネイビーのフロートタイプがいい」って。まあ私も気に入っているんですけどね。

正人さん: 僕はネイビーが好きなんですよ。しかもフロートキッチンってかっこいいじゃないですか(笑)。

──確かにかっこいいです(笑)。キッチンもかなりすっきりした印象ですが、こだわったポイントは?

弥生さん: キッチンに限らず空間全体に言えることなのですが、とにかく物を置きたくないのと、収納部分はうまく隠してシンプルに見せたいと思いました。宮本さんに要望を伝えたら、「じゃあキッチンはカップボードをなくして、代わりに連動引戸の収納を設置しましょう」と提案してくださったんです。

収納用建具:3枚連動引戸PA型 カラー:しっくいホワイト柄 引手:C1型 サテンシルバー色

宮本さん: キッチンはパナソニックのラクシーナで、ユニット内に収納できるタイプのカップボードもあるんですけど、よりコストが抑えられる方法を提案させていただきました。

弥生さん: これがもうすっごく使いやすくて!食器はもちろん、電子レンジやお菓子、ストック類なども全て収納できるので、後ろを振り返るだけで必要なものが手に取れます。この家に住んでから、主人と息子に「あれってどこにある?」と聞かれることもなくなってストレスフリーです(笑)。

家族が集う1階、
個性が詰まった2階

──「物を置かずに収納部分をうまく隠す」というこだわりは、リビングにも活かされていますか?

弥生さん: そうですね。「リビングには収納家具もソファーも置きたくない」と話したら、宮本さんがパナソニックの畳が丘を提案してくださいました。いつもみんなここで寝転んでテレビを見ています。息子が宿題をしたり遊んだりするのも畳が丘。自分の部屋はほぼ寝るだけのために使っている感じですね。

宮本さん: ソファーを置いたとしても、意外とその前の床に座ったりしますよね。それだったら、軽く昼寝ができるくらいのスペースがリビングにあった方が嬉しいかなって。それに、リビングで勉強した方が賢くなるらしいですよ。

弥生さん: そうなんや!畳が丘、大正解ですね(笑)。

──2階はまた雰囲気がガラリと変わりますね。

弥生さん: 1階に比べて、2階はちょっとナチュラルというか、可愛らしい雰囲気にしています。ドアはCraft Label(クラフトレーベル)をメインにして、部屋によってデザインを変えました。これも宮本さんの提案で、「2階はあえて自由に、それぞれがお好きなテイストを選んだら楽しいんじゃない?」と言ってくださって。

正人さん: 色はネイビオーク柄と迷ったんですけど、あんまり他の家では見ないような色がいいなと思って、ブルーグレーオーク柄を選びました。

ドア(左から):スタンダードレーベルPA型、クラフトレーベルDF型、クラフトレーベルMG型 カラー:ブルーグレーオーク柄 ハンドル:A3型 オフブラック色 収納用建具:開き扉PA型 カラー:ブルーオークグレー柄 ハンドル:T5型 オフブラック色

弥生さん: 外からは見えない部分ですけど、実はクローゼットの中のクロスも柄入りなんですよ。そんな風にちょこちょこ遊び心を取り入れています。

宮本さん: 開けた時に柄があると気分が上がりますよね。1階とはまた違ったプライベート感があって、ご家族の個性がよく出ていると思います。あと、加湿器の水の補充などが2階でできるように、ホールに手洗い場を設置したのもこだわりです。

地域密着型だからできること

──建て替えから3年が経ったそうですが、今後手を加えたい部分はありますか?

正人さん: ないですね。今のままがいい。「ちょっと変えてみてもいいかな」とすら思わない。

弥生さん: 私も。リズムデザインにお願いして本当によかったです。建てた後もよく困りごとがないか聞いてくださるんですけど、「すっごく気持ちいいです!」っていつも答えています(笑)。

宮本さん: うちのモットーは地域密着型の家づくりなので、建てて終わりではなく、定期的にスタッフがお客さまのお宅に訪問しています。ご提案の時も、ショウルームには必ずコーディネーターの私が同行します。その方が齟齬が生じないし、迷った時にもすぐに代替案をご提案できますので。

大切にしているのは、お客さま一人ひとりに合った家をつくること。今回も鶴田さんご家族らしい家ができたのではないかと思います。

弥生さん: 私たちのキャラもわかった上で提案してくださるし、設計から施工まで一貫してやっていただけるので安心でしたね。

正人さん: 建て替えを決めた時、千盤さんが「かっこいい家にしましょう」と言ってくださったんですよ。それがとても心強くて、信じて委ねた結果、本当にかっこいい家ができました。息子も毎日楽しそうに過ごしてるしな。

弥生さん: そうやな。天井が高くて圧迫感がないから、のびのびできるのかも。この家に住むようになって、家族の会話も増えたような気がします。

宮本さん: うちのチームは鶴田さんご家族が大好きなんですよ。この人たちのために少しでもよくしたいという思いが、この家の細部にまで宿っていると思います。

リビングまで続くスタイリッシュな土間と、印象的なドアづかい。スケルトンの吹き抜け階段が、心地よい開放感を生み出す。鶴田さんご夫婦とリズムデザインの強い信頼関係から生まれた家は、3階建てでありながら、家族の一体感を損なわない。地域密着型の家づくりとは何か。その答えはきっと、この家にあるはずだ。

(左から)リズムデザイン新岡さん / 鶴田さんご家族 / リズムデザイン宮本さん

*記事内でご紹介した商品は、2024年8月1日時点の仕様となっております。
ご検討の際は、ショウルームやカタログ等でご確認ください。