( interview )
![キッチンとハイドアをつなぐ憩い場](img/050/main_pht.jpg)
家具の一大産地として名高い福岡県大川市。クラフトマンシップが息づくこのまちで、shokoさんは自宅の一軒家を開放してパン教室を営んでいる。
ワイルドオーク柄のハイドアを開けると、澄みきった明るさと突き抜けるような開放感が広がる。深呼吸したくなるほどに清々しい空間はどのようにして生まれたのか。家づくりのこだわりを聞いた。
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4年前の2020年、義実家に隣接する土地に家を建てたshokoさん。子育ての環境を整えることが第一の目的だった。利便性を考慮し、子ども部屋とゲストルーム以外は1階に集約した。
shokoさん「この家が完成した当時、長男は1歳で、次男はまだお腹の中。寝室や収納もすべて1階に配置したのは大正解でした。今のところ2階に行くことはほぼありません。
便利なのはもちろん、自然と1階に家族が集まるので、この間取りにして本当によかったと思っています。生活動線が1階で完結すれば、老後も安心ですよね」
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リビング横には6畳の和室も備えている。リビングとは一体化せず、あえて入り口を狭くした。
shokoさん「実際にできあがってみたら、入り口、ちっちゃくない…?って感じだったんですけど(笑)、将来的に仏間にすることを考えると、このくらい奥まっていた方がいいかなって。おかげでプライベート感のある空間になりました。死角になる壁もできて、多少ゴチャッとしていても気にならないので、息子たちの写真や作品はそこに飾っています」
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造作でなくても理想が叶う
家の顔となるリビングドアは、VERITIS Craft Label(ベリティス クラフトレーベル)のLH型を採用。当初は造作のドアにするつもりだったそうだが、なぜベリティスを選んだのか。
shokoさん「毎日人が通る場所なので、リビングドアは絶対に大きなサイズにして、手作りのリースを飾ろうと決めていました。最初はすごく凝った木彫りのデザインにするつもりだったんですけど、工務店さんいわく、そういった造作のものは経年変化でたわみやすいデメリットがあるそうで。そこでイメージに合う既製品をInstagramで検索していたら、ベリティスの存在を知ったんです。
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運命的な出会いで、これだ!と思いました。古材っぽい質感がすごくいいなと思ったのと、クラフトレーベルのワイルドオーク柄ならあとから色を塗ることができるので、カスタマイズの余白があるところも気に入りました。本当は階段の色に合わせてグレージュに塗るつもりだったんですけど、実際に設置してみたら、え、このままの方が可愛いじゃん!って(笑)。
パン教室の生徒さんもインテリア好きの方が多いので、まずドアに注目されますね。第一声は必ず『素敵なドアですね!』です。これだけ高さのあるドアをなかなか目にすることがないのと、質感も珍しいので、みなさん造作だと思われるんですよ。『実はベリティスのクラフトレーベルという既製品なんです』と言うと驚かれます」
ドア横の印象的なワイヤーアートは、アクセサリー作家のお姉さんの手によるもの。
shokoさん「玄関を可愛くしたいと姉に話したら、手持ちの工具でササッと作ってくれました。幸運が舞い込むようにという願いを込めて、ツバメのモチーフに。ドアの雰囲気とよく合っていて、キュートな仕上がりに大満足です」
採光部を透明ガラスにしたのもshokoさんのこだわりだ。
shokoさん「子どもの頃、実家で母が喫茶店を営んでいて、そのドアにも透明のガラスがついていたんです。帰ってきた時に、窓から中にいる母の姿が見えて、すごくホッとしていたのを覚えていて。そういう原風景みたいなものを、息子たちにも与えてあげたいと思いました。
2人とも帰ってくると必ず、格子窓から中をのぞいて『ただいま』って言うんですよ。ニコニコしながら。ちょっとしたやりとりなんですけど、私にとってはすごく大切で愛おしい時間です」
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豊かな時間を提供したい
家を建てたもう一つの目的は、自宅でパン教室を開くこと。shokoさんがずっと昔から夢見てきたことだという。
shokoさん「お気に入りのインテリアに囲まれた環境でレッスンをするのが長年の夢でした。単にレシピを教えるのではなく、パン作りを通して豊かな時間を提供したいという思いが強かったので、訪れた人みんなが心地よく過ごせるよう、光と風が通ることを家のコンセプトにしました」
天井は吹き抜けにし、リビングをL字型にすることで複数方位に窓を設置。一際目を引くのは、陽光が降り注ぐ明るいフルフラットキッチンだ。
shokoさん「イメージとしては、キッチンがステージで、窓から差し込む光はスポットライト。ここに立っていると、ちょっとだけ主役になったような気分を味わえるんです」
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キッチンの面材はグレージュ。やわらかな色味が空間によく馴染んでいる。
shokoさん「散々悩みましたが、『温かみのある色の方がshokoらしいと思うよ』と旦那さんに言われて、床材との相性も考えてグレージュを選びました。
今でこそくすみカラーが浸透していますけど、当時はまだあまり事例がない頃だったので、正直不安もありました。でも、結果的にはこの色で間違いなかったと思います。背中を押してくれた旦那さんに感謝ですね」
シェヴロン柄に貼ったキッチンバックのタイルも、shokoさんのお気に入りだ。
shokoさん「パキッとしすぎず、ほどよいアクセントになるように、マットな質感のタイルとグレーの目地を選びました。また、生徒さんにはカフェに立ち寄るような感覚でレッスンを受けていただきたいので、カップボードには極力家電を置かないようにしています」
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この家に住むようになってから、お子さんたちとの関係性にも変化が生まれた。
shokoさん「“ダメ”というフレーズをあまり使わなくなりましたね。一軒家なので走り回ってくれて全然OKだし、のびのび過ごしてほしいので柵も設けていません。
私が目の前で料理をするのも息子たちには当たり前の風景になっていて、気がつくと近くに集まってきているんですよね。『このパンはお母さんが作ったの?』『そうだよ。食べてみる?』みたいな会話が生まれて、キッチンが親子のコミュニケーションの場所になっています」
家族のつながりは年季の入ったアンティーク家具からも感じられる。
shokoさん「テレビ奥に置いている鏡は、もともとは叔母の嫁入り道具のドレッサーについていたもの。馬の形をした藤の椅子は、義実家の倉庫で眠っていたものを持ってきました。ほかにも、母が昔編んだ藤の籠や、祖母のものだったガラスの容器なども使っています。
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また、家族のものではありませんが、リビングに置いている1人掛けの椅子は、家を建てる過程で仲良くなったコーディネーターさんに、私物の2脚のうちの1脚を譲っていただきました。
新しいものだけでなく、古いものも上手にミックスしながら、この家ならではの温かさが表現できたらいいなと思っています」
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パン教室を始めてもうすぐ1年。手探りのスタートだったが、徐々に展望が描けるようになってきた。
shokoさん「レッスンではパン作りと一緒にテーブルコーディネートも提案しているんですけど、独学で身につけたので感覚的にやっている部分が大きいんですね。技術を言語化してお伝えできればレッスンの幅も広がるので、今後は資格取得なども視野に入れていきたいと思っています。
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息子たちは『おうちが大好き!』と毎日言ってくれますし、この家を“パワースポット”と呼んでくださったり、『ドアを通るだけで特別な気持ちになります』と言ってくださる生徒さんもいらっしゃるほど。人と人をつないで、幸せを伝染させていくような役割をこの家が果たせているのかなと思うと、すごく嬉しいですね」
ワイルドオーク柄のハイドアの先に広がるのは、明るい日差し、爽やかな風、焼きたてのパンの香り。子どもたちの笑顔がこぼれる格子窓から、日々の物語が紡がれる。家族も客人も、みんなが帰りたくなるような家に仕上がった。
大手料理教室やカフェでの経験を経て、2023年に少人数制の自宅パン教室をオープン。今後もパンのメニューや空間をアップデートしながら、豊かな暮らしを提案していきます。
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*記事内でご紹介した商品は、2024年6月1日時点の仕様となっております。
ご検討の際は、ショウルームやカタログ等でご確認ください。