( ドアで魅せる家づくりのヒント集 )

( ドアで魅せる家づくりのヒント集 )VERITIS MAGAZINE

( interview )

徹底的にホテルライクを極める

2023.11.15

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徳 瑠里香
photography
平山 泰二郎

徹底的に
ホテルライクを極める

桜建築

福岡を拠点に、マンションリフォームや新築住宅の設計から施工までを手がける桜建築。

今回、代表の竹内將太さんは、事務所と自宅を兼ねた新築戸建住宅を建てた。広々とした玄関の先には、ストーン調の高級感のあるスタイリッシュな空間が広がる。どんな工程で家づくりを進めていったのか。話を聞いた。

桜建築代表取締役の竹内將太さん
職人目線で、
現場重視の家づくりを

──最初に、桜建築さんの強みについて教えていただけますか。

竹内: もともと私は木造大工でして、長年、共同住宅を中心に現場で家づくりを担ってきました。スタッフも職人出身者が多く、職人目線で設計から施工までを一貫してできることが弊社の強みだと思います。

──具体的に、職人目線は家づくりの現場でどんなふうに生きてくるのでしょう?

竹内: 職人目線で家の細かなところまで目が行き届くし、技術力には自信があります。ほかにも例えばリフォームの現場で打ち合わせをする際も、柱が抜けるかどうかなど構造がわかるので、持ち帰らず、その場で議論を進めることができます。紙面上の設計と工事の現場に距離がないので、話が早いというのはあると思います。

あとは現場での融通が効きやすいかもしれません。お客さまが予算の関係でやりたいことを設計段階であきらめたとしても、現場で多少無理をして叶えることができるなら、喜んでもらうことを優先します。

──現場重視なのですね。今回の物件では、事務所兼ご自宅の新築戸建住宅を手がけられました。

竹内: もともと事務所だけを建てようと思っていたんですが、形は変わっているけど広めの土地が見つかったので自宅も合わせて設計することにしました。1階が事務所、2階が自宅になっているのですが、2階はモデルルームとして、希望があれば見学していただけます。

「エアビューだけは譲れなかった」

──今回の物件は、どんなふうに設計を進めていったのでしょう?

竹内: 事務所部分は私が、自宅部分は妻が主導となって、自分たちの仕事や暮らしの導線と必要なスペースから間取りを決めていきました。まず、事務所と自宅の入り口になる玄関は広くすること。そこから1階はガレージ、事務所の応接室、オフィスと収納スペースを。2階は寝室、子ども部屋、水回り、パントリーとランドリースペース、ウォークインクローゼットを設けて、残りをリビングにしました。

──デザイン面も含め、今回の物件のこだわりポイントは?

竹内: 一番のこだわりは「Air View(エアビュー)」を取り入れたこと。パナソニックショウルーム福岡で初めて見たときに、かっこいい!と痺れまして。事務所をつくると決めたときからエアビューは絶対入れようと思っていました。今回の物件では、応接室の入口に三連で、オフィスの入り口、リビングの入り口と、計5枚のエアビューを採用しています。事務所を訪ねるお客さんも褒めてくれますし、私の一番のお気に入りですね。

左(オフィス入り口):エアビュー スモーク調合わせガラス(HM型)
右(応接室入り口):エアビュー ブロンズ調合わせガラス(HN型)

──事務所だけでなく、リビングにエアビューを採用されているのも印象的です。

竹内: 自宅部分は妻にお任せしていたんですが、リビングのドアをエアビューにすることだけは譲れなかった。理由はかっこいい、それだけですね。妻はVERITIS(ベリティス)のパールグレー柄のドアが気に入っていまして。自宅の子ども部屋やトイレ、脱衣所など廊下に面するドアはパールグレー柄で統一しました。

(リビング) ドア:エアビュー スモーク調合わせガラス(HM型)
(子ども部屋)ドア:ベリティス Plus Label(プラスレーベル)PZ型 カラー:ソリッドカラー・パールグレー柄 ハンドル:P1型 オフブラック色

私と妻の譲れないドアのこだわりから、色味は黒とグレーで統一し、極力木目は取り入れないというデザインの方向性が決まりました。

──木目を取り入れないのはどうしてでしょう?

竹内: 以前住んでいたマンションは木目が多かったんですが、娘も成長したので生活感をなくしたいと思ったんですね。温かみのある木目より、クールなガラスや石といった素材を使って、モダンでスタイリッシュな雰囲気にしたいと。

ハイドアを起点に、
クールな空間を演出

──まさに、事務所も自宅も地続きで、高級感のある非日常のホテルのような空間ですね。

竹内: 主にこの雰囲気をつくっているのがドアなんですよね。ドアはすべてベリティス プラスレーベルのハイドアにしているんです。天井高は2500mmで高くはないんですが、ハイドアにして上枠をなくし天井とつなげることで、圧迫感がなくなって広く見える。この効果はかなり大きいと思います。

エアビューとパールグレー柄のほかにも、事務所の応接室と裏口をつなぐ扉や、自宅でリビングと寝室をつなぐドアはソイルブラック柄を採用しています。ソイルブラック柄も、立体的で重厚感があるカラーで気に入っています。ドアのデザインはすべてシンプルなPZ型ですね。唯一、子ども部屋のクローゼットだけ凹凸のあるCraft Label(クラフトレーベル)のPC型にしています。

右(寝室入り口)ドア:ベリティス プラスレーベルPZ型 カラー:ソリッドカラー・ソイルブラック柄 引手:ロング引手C3型 オフブラック色
(子ども部屋クローゼット)ドア:ベリティス クラフトレーベルPC型 カラー:ソリッドカラー・パールグレー柄 引手:角型引手C1型 オフブラック色

──エアビューとパールグレー柄とソイルブラック柄。ドアを起点にほかのデザインを決めていったのでしょうか?

竹内: ドアから床、それからキッチンの色を決めました。床はモルタルっぽい雰囲気がよくて、妻がInstagramで「#モルタル」「#グレー」「#ホテルライク」で検索して、フロアタイルを入れる予定だったんです。でも、パナソニックの展示会で「ラピスタイルフロアー」を見て、これがいい!と。見た目だけでなく触れたときの質感にも惹かれて、全面に採用することにしました。

キッチンは、パナソニックの「Lクラスキッチン」で、グレージュレザー柄を選びました。キッチンがリビングのメインになるので、黒を選ぶと強い印象になりすぎてしまうだろうと。素材としてストーン調が多かったので、キッチンは空間全体の調和を意識してこの色柄を選びました。

(床):ラピスタイルフロアー/モルタルグレー(石質仕上げ材)
(キッチン):Lクラスキッチン /グレージュレザー柄

──クールなリビングで、唯一木目のテーブルが際立ちますね。

竹内: 木目は基本使っていないんですが、リビングテーブルと、ウォークインクローゼットの引き出し、事務所の棚の扉といった家具には取り入れていて。ウォークインクローゼットは、パナソニックの「アイシェルフ」を組み合わせています。事務所の棚は「キュビオス」を採用し、上段はオープンにしてカタログを収納し、下段は扉をつけました。

パーツを組み合わせて自由にプランニングできる収納「アイシェルフ」
自由にプランニングできるシステム収納「キュビオス」
「やりたいことはやりきった」
施主としても後悔なし

──空間をつくる要素として、ライン照明も一役買っていますよね。

竹内: これは妻が海外のアカウントで見つけて、取り入れました。見た目がかっこいいという理由で。リビングの天井にも廊下にも、長く真っ直ぐ伸びるライン照明はこだわりの一つですね。

──生活感のないホテルライクな空間づくりを徹底されていますね!選択に迷いはなかったですか?

竹内: これまで現場でたくさんの家を見てきて、自分の好みもはっきりわかっていますから、迷わなかったです。やりたいことはやりきりました。もう少しリビングを広くできたらよかったけど、土地の条件もあるので仕方ない。妥協点もありますが、後悔はないですね。

──潔いです!それにしても今回の物件は、パナソニックの建材をたくさん使っていただいています。どうしてでしょう?

竹内: 建材だけではなく、エアコンなど家電類もパナソニックが多いんです(笑)。ブランドへの信頼があるんですよね。パナソニックはものの質がいい。施工をしていても、暮らしていても、素材がしっかりしているので傷がつきにくい。エアビューやハイドアは予算の関係で採用できないこともあるんですが、積極的に提案はしていきたいと思っていて。自宅に取り入れることで暮らしの中にある実物に触れて、その価値をお客さまにも感じていただけたらと思っています。

──現場での経験に、施主としての経験も加わって、今後桜建築さんとしてのお客さまへの提案の幅も広がっていきそうですね。

竹内: そうですね。現場で多くの家を建ててきた職人目線だけでなく、自分たちが暮らす家を建てた施主目線も持って、家づくりをしていきたいです。

開放感と洗練さを演出するエアビューにハイドア、落ち着いた雰囲気をつくるパールグレー柄にソイルブラック柄。石のクールさが宿るモルタルグレーのラピスタイルフロアーに、ソリッドな印象を与えるライン調の照明。温かみのある木目を極力使わず、色味や素材を絞ることで、生活感のない非日常のホテルライクな空間づくりを極めた。職場と自宅の境界線が曖昧なミニマルな家。桜建築はこの場所で、新たな家づくりを行っていく。