( ドアで魅せる家づくりのヒント集 )

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( interview )

都心で叶う「究極に気持ちいい」暮らし

2022.10.15

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徳 瑠里香
photography
きるけ。

都心で叶う「究極に気持ちいい」暮らし

株式会社house stage

名古屋市を代表する歓楽街のひとつ今池。独自性ある作品を上映するミニシアター、ジャズやブルースのバンドが演奏するライブハウス、個人経営のギャラリーが集う文化の発祥地でもある。

飲食店が軒を連ねる繁華街を抜け、緑豊かな公園の前に建つ築40年のマンションの7階。扉を開けると、都市の洗練さと自然の不整合さが共存するやわらかい空気が満ちる。コンセプトは「究極に気持ちいい暮らし」。

物件のリノベーションを手がけた住宅デザイナー・株式会社house stageタブチキヨシさんと壁紙デザイナーのTOMOMIさんに、空間のこだわりを語ってもらった。

「気持ちいい」ことを
ルーティーンに

──今回ピックアップする物件のコンセプトから伺えますか。

タブチ:「究極に気持ちいい暮らし」をつくること、ですね。このマンションは名古屋駅から電車で10分ほどの今池駅に近く、飲み屋街もあるけど、目の前に公園が広がる好立地にあります。ペルソナは30〜40代の女性で、都心で働き、夜の街やカルチャーを楽しみながら、家ではとことんリラックスしたい、というニーズを想定しています。

瞬間的な「Happiness」だけでなく持続的な「Well-Being(ウェルビーイング)」を念頭に、究極に気持ちいい暮らしが叶う家をコンセプトにしました。

──なるほど。本を読む、ソファで寛ぐ……と暮らしのシーンがイメージできる空間ですよね。

タブチ:通常モデルハウスをデザインする際は、「カリフォルニアスタイル」とか「ジャパンディ」とかインテリアトレンドを軸にすることが多いんですが、今回は「情緒」をキーにしているんです。

具体的には、読書とかヨガとか、自分にとって心身が癒される“気持ちいいこと”が毎日のルーティーンになる暮らしが実現する空間をつくりたい、と思ったんですね。

壁を造作することで、
曲線をつくり、線を減らす。

──「究極に気持ちいい暮らし」。このコンセプトをどんなふうにカタチにしていったのでしょう?

タブチ:ドアや床の建材、壁紙、家具、照明、あらゆるものを「究極に気持ちいい」を意識して選びました。その中のこだわりの一つが「線」。細かい話になるんですが、今回の物件は結構壁を造作しているんです。

たとえば、玄関入ってすぐ、アイキャッチ的に「R(アール)の壁」を造作しました。マンションはどうしても無骨な印象になりやすいんですが、Rの壁で曲線をつくることで、空間に地球や自然のイメージにつながる不整合なやわらかさが生まれる。また、玄関収納のコンポリアと壁の段差をなくし、線を減らしています。今回はできるだけ「線を減らす」ことにもこだわっていて。線が減るとより空間がシンプルでモダンな印象になるんですね。

──曲線をつくり、線を減らす。神は細部に宿る、こだわりですね。

タブチ:まさに。たとえばダイニングとつながるライブラリーも、壁面収納「キュビオス」に合わせて壁を造作したんです。梁を隠すためでもあるんですが、キュビオスと壁面の凸凹をフラットにして線を減らしています。この場所は扉を斜めに置いて、空間が台形になっているんですが、あえて不整合にすることが、究極のリラックスにつながると考えています。

ナチュラルで甘過ぎない、
広々としたLDK

──今回のリノベで間取りも変更したそうですが、それぞれの空間のデザインのこだわりについても教えていただけますか。

タブチ:はい。まず、ダイニングは究極にリラックスできるように、都心でありながら自然を感じられる「アーバンナチュラルスタイル」を意識しました。床はベリティスフロアーW クラフトのナチュラルグレー色を採用。ダイニングとライブラリーの仕切りには、ベリティスクラフトレーベル MH型のイデアオーク柄のドアを3枚並べました。

──広々とした気持ちいい空間ですね。

タブチ:キッチンはもともと壁付けだったのを対面に変更しました。前面にブラックオーク柄の羽目板を立てることで、友人が遊びに来たときなどはバーカウンターにもできるんですよ。キッチンの奥にも「Rの壁」を造作してやわらかさを演出しています。床は配線の関係で一段高くしていて、水にも強いラピスタイルフロアーのモルタルグレーを採用しました。

自分の“好き”が詰まった
“KAWAII ROOM”

──在宅ワークが増える中、リビングに隣接するワークスペースもありがたいですね。

タブチ:在宅ワークをリビングでするケースは多いとは思うんですが、寛ぐ空間であるリビングに仕事を持ち込みたくない、という需要もあると思うんですよ。スイッチングできるように、しきり窓を立てて、室内窓で空気を循環させつつ、空間をゆるやかに切り替えています。

タブチ:そうそう。今回の物件のこだわりの一つに「KAWAII ROOM」があるんです。

──KAWAII ROOMってなんですか?!

タブチ:いわゆる趣味部屋ですね。究極に気持ちいい暮らし、ウェルビーイングな状態の中には、自然に癒されるとかヨガをするとかだけじゃなく、自分の好きなことに夢中になることも含まれていると思うんですよ。アースカラーに癒されるけど、花柄や可愛いものが好きといった面もある。だからペルソナの女性を意識して、トルソーと鏡を置いて、有孔化粧ボードやフレームシェルフを設置し、好きなものを飾れる、自分だけの空間として「KAWAII ROOM」をつくりました。

床はアーキスペックフロアーW パーケット フレンチへリンボーンセットオーク色、ドアはベリティス プラスレーベル PJ型のパールグレー柄を取り入れました。

アンバランス、
だけど
奇抜にならず飽きさせない

──空間全体がゆるやかにつながりながらも、それぞれ雰囲気や表情が異なりますね。

タブチ:奇抜ではないアンバランスが大事だと思っているんですが、その空間をつくる決め手になっているのが、ベリティスのドアと床、そしてTOMOMIさんが選ぶ壁紙なんです。この物件、17種類の壁紙を使っているんですよ。

──そんなに!?壁紙を変えると奇抜になってしまうこともあると思うんですが……。TOMOMIさんはどんなことを意識して壁紙を選んでいるのでしょう?

TOMOMI:量産的な分譲住宅ではないので、特別な空間を提案したい。かといって壁紙は脇役でなければならない、と思っているんですね。だからでしゃばり過ぎず引き過ぎず、そのバランス感覚を意識しています。壁紙は違うんだけど、どこの部屋にいても違和感がないように。

──具体的に今回の物件の壁紙はどのように決めていったのでしょう?

TOMOMI:先にドアや床が決まっていたので、ドアのカラーをヒントに壁紙の色柄を選んでいきました。まずLDKはイデアオーク柄と馴染むように、グレージュやシアー、クリーム色などアースカラーを選びました。KAWAII ROOMは好きを詰め込んだ宝箱をイメージして、パールグレーに合う綺麗めなボタニカル柄を。ワークスペースは、築40年のマンションということでヴィンテージをイメージしたタイル柄を採用しました。洗面室につながるブラックオーク柄のドアをキーに、全体に黒を散りばめて甘さを抑えて空間を引き締めています。

タブチ:働く女性をペルソナにしましたが、親子でも夫婦でも、ここに住まう人がゆったりと自分の時間を過ごし、究極に気持ちいい暮らしを実現してもらえたら嬉しいです。

ベリティスのイデアオーク柄(MH型)、パールグレー柄(PJ型)、ブラックオーク柄(PK型)のドア。色柄もデザインも違うドアの先には、具体的な暮らしのシーンが想像できる空間が広がる。それぞれ表情は異なるのに、奇抜すぎず違和感もない。長い視点で、1日1日、年を経るごとに変わっていく、住まう人の「情緒」に寄り添った“究極に気持ちいい暮らし”。その風景が心に浮かんだ。

株式会社 house stage