( interview )
福岡県春日市にショウルームを構える杜プラスは、1960年創業の材木店が運営するリフォーム&リノベーションショップ。これまで培った木のノウハウはもちろんのこと、時代の変化に合わせたプラスαの提案力が強みだ。
「リノベーションは形がないもの。だからこそ、いかにイメージの先にあるものを具現化できるかが鍵となります」
柔らかな物腰でそう話すのは、店長の深町源さん。コーディネーターの齋田理湖さんとの息の合ったチームワークで、数々のリノベーションを手がけている。
今年8月には、最新鋭のデザインと機能性を詰め込んだモデルルームをオープン。杜プラスが提案する「これからのリノベーション」とはーー。
ノウハウを生かした提案
ー杜プラスさんならではの強みは何ですか?
深町: 運営元が材木店のため、木材に関する知識が豊富です。木は家を構成する重要なパーツですので、耐久性や抗菌性など、それぞれの木が持つ特性をしっかりとお伝えして、お客さまの理想に合わせた柔軟な提案をさせていただいております。また木の良さは実際に触れてみて初めてわかるものですので、小さなサンプルをお見せするのではなく、ショウルームで実物の風合いを確かめていただくことにもこだわっています。
ーお客さまとお話しする際には、どんなことを心がけていますか?
深町: とにかく仲良くなることだよね。
齋田: そうですね。そもそも何か困りごとがないと、リノベーションをしようとはならないと思うんですよ。私たちの仕事は、まずそこをじっくりお聞きするところから始まります。相談しているうちに、ご自身でも気づいていなかったさらに奥の課題が見えてくることもありますし、ただご要望を聞くというスタンスではなく、ライフスタイルやパーソナルな部分にも必要に応じて寄り添いながら、信頼関係を築いていくことが大切だと思っています。
ーご相談に来られるのはどんな方が多いですか?
深町: 子育てが一段落して、次のステージをお二人で楽しみたいという50〜60代のご夫婦の世帯ですね。そのため、ゆったりとした空間づくりやバリアフリー設計、環境に配慮した設備などを意識したご提案が多いかな。
齋田: これまでずっと暮らしてきた家をリノベーションされるという方も多いので、みなさま思い入れがとても強いですね。その分、絶対ハッピーになっていただきたいですし、お客さまの思いに最大限応えるために、私たちも一層熱が入ります。
深町: 奥さまはキッチン、旦那さまは書斎など、それぞれ譲れないポイントをお持ちですので、そこも汲み取りながら舵を取っていくというのも私たちの役目かなと思います。
ワンランク上のジャパンディ
ーでは、今回新しくオープンしたモデルルームについて伺いたいと思います。こういった試みは杜プラスさんとしては初めてですか?
深町: そうですね。春日市にある築32年のマンションのリノベーションをご依頼いただきまして、オーナーさまのご厚意で3ヶ月間限定のモデルルームとして開放しております。
オーナーさまは長らく福岡市内で過ごされてきたのですが、リタイアを前に老後の生活について考えるようになり、この物件に出会われました。新たな場所で生活を始めるにあたり、ご夫婦の意見として一致していたのが「自然の中で暮らしたい」けど「福岡市内から離れて今の生活を大幅に変えたくない」ということで、ベランダから春日公園の景色が眺められることや、天神や博多などの中心地まで電車で約20分という立地も、お二人が求めている条件にぴったりでした。
今回はフルリノベーションで、私たちに委ねてくださる部分も多かったため、杜プラスが提案したい「これからのリノベーション」を形にできたのではないかと思います。
ー「これからのリノベーション」とは、具体的にどのようなものでしょうか?
齋田: デザインと性能の二つの側面があるのですが、まずデザインからお話しすると、内装のコンセプトには「ジャパンディ」を取り入れました。
ジャパンディは日本と北欧をミックスしたスタイルで、洗練された温かみのある雰囲気が特徴です。淡い色合いを基調にしているので幅広く愛されるテイストで、ここ2年ほどじわじわとトレンドとして認知されるようになってきました。
今回、全体のトーンはグレージュでシンプルにまとめつつ、異なる質感を組み合わせたり、床材を差し色的に使うなど、さりげなく個性が光るジャパンディを意識しています。
ー床の素材は何ですか?
齋田: アカシアです。色の濃淡がはっきり出る素材なので、お部屋の表情が豊かになります。その分、縦の面にも木目がくるとウッド感が出過ぎてしまうので、ドアはVERITIS(ベリティス)のマットなパールグレー柄を採用しました。パールの入り方が絶妙で、凛とした雰囲気と高級感を演出できるところが魅力だと思います。
その他の建具も全てベリティスを採用し、基本的にはフラットなデザインで統一しているのですが、玄関からLDKへ続くドアだけは背を高くしてガラスを入れ、光が優しく差し込むようにしました。
細部にこだわった“耐久性”
ーベリティスのドアの魅力はどんなところだと思いますか?
齋田: 私はやっぱりデザインが好きですね。木の質感がリアルで美しいですし、色柄のバリエーションも豊富ですし。とにかくビジュアルが好きなので、ついついそこを中心にお客さまにおすすめしてしまうのですが、機能面はいつも店長がしっかりフォローしてくれます(笑)
深町: 私は表面の強さが魅力だと思いますね。傷がつきにくく、経年劣化しづらく、汚れにくく、掃除もしやすい。
ー無敵?(笑)
深町: そうなんです。正直なお話をすると、私の自宅のドアはベリティスではないんですよ。だから逆に、ベリティスの耐久性の高さがわかるんです。自分が使っていないからこそ、お客さまに自信を持っておすすめできるという(笑)
ー説得力がありますね。
齋田: 強さつながりでいくと、私は仕上げの方法が好きです。
深町: ああ、小口の巻きの形状とかね。
ーん?小口…巻き……?
深町: ドアの側面部分のシートが、巻き込むようにして貼られているんです。パッと見はわからないけど、あそこもこだわっているよね。
齋田: そうなんですよ。シートの切り口がなくてクッと巻き込まれているので、剥がれにくいんです。ドアの側面って剥げたことありません?
ーあります!接着剤で応急処置をしたこともあります(笑)
齋田: ですよね!そういう部分って長く使っていくと違いが出てくるので、小さなことながら重要だなと思いますね。
ー暮らしやすさへの配慮も行き届いていますね。間取り的に一番大きく変わっているのはLDKの部分でしょうか?
齋田: そうですね。オーナーさまがもともとのリビングを少し窮屈に感じていらっしゃったので、和室を取り込んで広々とした空間を確保しました。閉鎖的だったキッチンも対面にして、リビング全体を見渡せるようにしています。視線の先には窓があり、お料理中でも春日公園の桜や新緑を楽しんでいただけます。
深町: またどうしても発生してしまうのが「リビングのどこにテレビを置く問題」で、あえて壁面を作ることでテレビの位置を最初に決めてしまうというご提案もさせていただきました。
齋田: 視線が集中する場所なので、この面だけ塗り壁材を採用し、職人さんに塗っていただきました。上から照明を照らすと綺麗な凹凸が出て、空間に表情が生まれますし、異素材が入ることで高級感も増します。
暮らしやすさを追求
ー図面を見ると、収納スペースもずいぶん増えているようですね。
齋田: そうなんです。今回「適材適所の収納」も大きなテーマでして、例えばリビングで使うものはリビングで完結できるよう、収納スペースを各部屋に設置して、しまう場所が分散しないようにしています。
深町: 先程お話ししたテレビ用の壁面の後ろにもスペースがありますので、リビング収納としてお使いいただけます。
ーデザイン性と機能性をうまく兼ねているんですね。
齋田: そうですね。また、50代のお二人暮らしということで、相手が何をしているかわからなかったり、空間の中で独りぼっちになってしまうことがないよう、あえて間仕切りを減らしているのですが、それが同時にデザインの自由度にもつながっていると思います。
深町: とは言え、それぞれが思い思いに過ごす時間も、ご夫婦の次のステージにはとても重要な要素になりますよね。プライベート感はありつつも相手の存在は何となく感じられるような、緩やかな空間の隔て方にも気を配りました。お二人らしい程良い距離感で、ゆとりのある暮らしを楽しんでいただけたら嬉しいですね。
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ジャパンディな空間に溶け込む、ベリティスのパールグレー柄。ソリッドな質感と絶妙な色合いが、ミニマルな中にさりげない個性を生み出す。杜プラスはこれからも、お客さまの今と未来に寄り添いながら、時代に合った「ゆとり」を提案していく。