( interview )
祖父母が暮らした築50年ほどの日本家屋をリノベーションした津田さま邸。峻佑さん・加奈絵さんご夫婦がふたりの娘さんと暮らしを営む。
設計デザインから施工、インテリアまでを手がけた住宅デザイナー・株式会社house stageのタブチキヨシさんは、「この家がもともと持っている価値を高める“アップサイクル”をテーマに、人と人がつながる場を意識した」と話す。デザインのコンセプトは日本と北欧の要素を融合させた「ジャパンディスタイル」。
京都を流れる桂川のほとり、小学校と緑豊かな公園に子どもたちの声がこぼれる住宅街。瓦屋根に土壁の日本家屋の中には、外観からは想像できない空間が広がっていた──。

リビングに併設するアトリエを
玄関を開けてすぐ、右側に構えるVERITIS Craft Label(ベリティス クラフトレーベル) LH型 ピュアワイルドオーク柄の引き戸。奥にはまるでお店のような、シックで甘やかな空間が覗く。

タブチキヨシさん「津田さんから相談を受けたとき、最初に旦那さんが、地域に開かれた、人が集まれる場所があるといいよねっていう話をしたんです。目の前に小学校があって、公園があって、子どもたちが集う駄菓子屋や寺子屋のような場所があったら、と。企業に勤められているから現実的ではないんだけど、今すぐに何ができるかを突き詰めるのはナンセンスで、そういう想いがあるよということを空間として表現したい、と思いました」

津田峻佑さん「僕はここで生まれ育ってきたのですが、祖父が商店を営んでいたんです。僕らは同じ敷地内に親が暮らしていて娘たちも行き来していますが、共働き夫婦が増える中、地域に学童以外に子どもが集える場所が少なくなっていると感じます。僕ら家族だけでこの場所を使うのはもったいないから、何かできないかなぁとぼんやり思っていたんです」
そんな想いをベースに打ち合わせを重ねる中で、タブチさんが目を光らせたのが、加奈絵さんがつくる繊細な幾何学模様のアイシングクッキーだった。
タブチさん「加奈絵さんが娘さんたちの喜ぶ顔が見たいからと、趣味でつくり始めたアイシングクッキーがどんどんレベルアップしていって、デザインにも自分の世界観が生まれていることに驚きました。だったら、このアイシングクッキーをつくる“アトリエ”を設けたらどうかと提案をしたんです」


津田加奈絵さん「子育てをしながらお家でできる仕事があればいいなあと思っていたんですが、タブチさんがコンサルティングをするように、アドバイスをくれて。家づくりをする過程でより具体的になっていって、このアトリエができました。まずはアイシングクッキーの販売から始めて、ゆくゆくは教室も開きたいです」
床を打ち抜いた土間に位置するアトリエは、ベリティス Standard Label(スタンダードレーベル)PA型 パールグレー柄のドアを通じて、リビングにつながる。扉を開ければ、子どもたちの姿も見える。

アップサイクルした、ジャパンディスタイル
玄関から左方向に回ったリビングの入り口にはベリティス クラフトレーベル MD型 パールグレー柄のドア。天井を張る太い梁とのコントラストがありながらも、不思議と融合するよう。リビングも縁側の磨りガラスほか、所々にもともとの日本家屋の名残を感じる。
タブチさん「リノベをする前に訪ねた際、この家が持つオーラや日本家屋ならではの良さを感じました。もともと持っている価値を高めてアップデートする“アップサイクル”の感覚でリノベをする。梁や柱、昭和の磨りガラスほか、残すものは残して生かしたいと考えました」


日本家屋の“アップサイクル”を前提に、デザインのキーワードとして上がってきたのが、Japanese(日本)とScandinavian(北欧)をミックスした「Japandi(ジャパンディ)」というスタイルだった。
タブチさん「伝統的な日本家屋に、温かみのある北欧のデザインを掛け合わせる。ソファダイニングのスタイルで、全体的な色味も黒は使わず、グレーやベージュをベースにしています」

スタイリッシュで温かみのある空間を演出
ジャパンディスタイルを演出するのに一役買ったのが、ベリティスの新色、パールグレー柄だったという。

タブチさん「奇跡的なタイミングで、ベリティスから新色のパールグレー柄が登場して、一目見てこれしかない!と。すっごくいい。これでジャパンディスタイルが決まるなと感激しましたね」
壁紙デザイナーのTOMOMIさんも、パールグレー柄のドアが壁紙を選定する一つの基準になったと振り返る。
TOMOMIさん「“かわいい”や“カジュアル”よりは、品があってスタイリッシュ。でありながら、温かみをもって暮らしに溶け込む。お洋服もモノトーンやベージュが多く、線が少ないシンプルなものを好まれる加奈絵さんをはじめ津田家のみなさまのイメージにぴったり重なって。パールグレー柄からの連想で壁紙の色もいい流れで決まっていきました」


加奈絵さん「タブチさんとTOMOMIさんが好みを熟知してくださっていたので、ドアも壁紙も自分たちにとって心地のよい選択ができました。パールグレー柄のドアは、のっぺりしたグレーじゃなく、素材感があって、目を凝らすと貝殻のような輝きがあって美しいんです」
リビングにつながる2箇所のドアを天井まで伸びるガラス戸(MD型)にしたのは加奈絵さんのこだわり。
加奈絵さん「背の高いドアは、開放感があって空間を広く見せてくれます。玄関や階段につながるドアをガラス戸にしたのは、子どもが帰ってきたときや2階の部屋から降りてくるときなど、ちゃんと気配を感じたいと思ったから。同じ色で統一しながら、ドア一つ一つのデザインを選べるのも魅力的ですよね。選択肢の多さと見た目のデザイン性だけじゃなく、ソフトクローズで引き戸がバンっと閉まらず、使い心地がいいところもお気に入りです」
タブチさん「そうそう。ベリティスのドアは、施工もしやすくてズレが生じにくいし、ドア自体が軽くて開け閉めがスムーズ、ソフトクローズでスッと閉まる。デザイン性だけじゃなくて、モノとしての精度がめちゃくちゃ高いんですよ」

リビングにつながる3箇所のドアのほか、廊下に連なるトイレや洗面所、寝室のドアもベリティス クラフトレーベルのパールグレー柄で統一した。


洗面室の中のドアは、ベリティス クラフトレーベル DE型 ホワイトオーク柄を採用。
自分たちの暮らしをつくる
京都市内のマンションからこの家に引っ越してきて3ヶ月ほど経つ津田さん一家。暮らし心地は?
加奈絵さん「空間が広々していてゆとりがあるので、自然と心も穏やかになりました。時間がゆったり流れているような気がします。子どもたちも庭で駆け回ってのびのび過ごしていますね」
峻佑さん「とても快適です。大工の友だちに手伝ってもらって庭にウッドデッキをつくったり、祖母が使っていた古い棚をリメイクしたり。週末はDIYで忙しい(笑)。家族で家づくりを楽しんでいますね」

タブチさん「完璧な空間にリノベをしたわけではなく、余白を残しているので、ライフスタイルに合わせて家もこれからどんどん変化していくんでしょうね。この家をベースに自分たちに合った暮らしをつくっていってもらえたら、嬉しいです」

ベリティスのパールグレー柄が基調となった、日本家屋と北欧のデザインが融合した“ジャパンディスタイル”。重厚感を残しながらも、スタイリッシュで温かみのある空間は、住まう人の時間の流れ、ライフスタイルまでも変えていく。加奈絵さんがアトリエを解放し、この場所に地域の人たちが集う日もそう遠くはないだろう。










