( interview )
ぼんやり全体のデザインイメージが湧いているけれど、何をどうやってかたちにしていけばいいのかわからない。部分的にこの建材を使いたい、この家具を置きたいと思うものの、全体のバランス感がよくわからない。
悠インテリアの松浦千代美さんは、インテリアコーディネーターとして、リノベーションの際に浮かぶそんな疑問や不安に応えている。
「インテリアに限らず、プランニングや内装まで、お客さまの暮らしに寄り添った家づくりのトータルコーディネートをしていきます」
そう話すインテリアコーディネーター、松浦さんの視点を紐解く。

住まう人の暮らしをトータルでコーディネート
インテリアコーディネーターとして、松浦さんはどのように家づくりに関わっていくのでしょうか?
松浦: 私は建築士の資格は持っていませんので、容積率の計算など細かいことを含む設計はしません。ただ、お客さまの暮らしやすさを軸に、間取りを考えることはします。インテリアコーディネーターは、色味やテイスト、デザイン性から部分的に建材や家具を選び、どこに置くかを提案するだけじゃないんですね。「どんな暮らしをしたいか」を引き出し、全体の空間と少し先の未来を見据えながら、お客さまの暮らしをトータルでコーディネートしていくことが、私たちの仕事だと思っています。
お客さまの家づくりに寄り添っていくときには、どんなことを大事にされていますか?
松浦: まずは、お客さまがどんな暮らしを望んでいるのか、しっかりヒアリングをすることです。お打ち合わせは大体3〜5回ほどさせていただきますが、お客さまの「好き」をうかがっていきます。言葉で表現される「好き」の中には、変わらないものと変わっていくものがあるので、それらを見極めて、これからのお客さまの暮らしに馴染むような提案をしていくんですね。私たちはお客さまに寄り添っていくことはできるけれど、暮らしに入り込むことはできません。暮らすのはあくまでお客さま。そういった立ち位置を大事にしています。
その際、インテリアコーディネーターとしてのプロの目線と同時に意識しているのが、「生活者」の目線です。私は5年前に自宅をリフォームしているのですが、その空間にお客さまを招いてお話することがよくあるんです。やっぱりどうしても、モデルハウスだとそこに生活者がいないので、理想的な空間ではあるものの、実際の生活風景がイメージしにくいんですね。だから私が実際に生活している場所で、なぜこの家具をここに置くのか、なぜ扉がここにあるのかを説明します。アートの飾り方、照明の位置、そのすべてに意図がありますから。

暮らしをつくる
今回ピックアップする物件では、どんな意図をもって、空間をコーディネートされていったのでしょう?
松浦: 今回私たちは、リノベーション物件として再販売するもののひとつのモデル住宅として、空間コーディネートを任されました。物件の想定ターゲットが、30〜40代のご家族ということだったので、現地で環境を確認したうえで、コンセプトは「カフェスタイル」でいこうと決めました。大人向けのカフェでほっと寛ぐように、リラックスして過ごせるような落ち着いた空間にしよう、と。
今回は家具もリースして、配置も考えたんですね。たとえば、ダイニングテーブルの位置。通常、テーブルは利便性を考慮してキッチンの側面にくっつけることが多いのですが、カフェスタイルを演出すべく、空間に余裕を持たせるために距離をとって独立させています。
ほかにも、リビングが4畳半と狭かったので、ソファは背もたれが低く圧迫感がないものを選びました。当初は玄関からつながるドアに背を向けた位置にソファがあって、その前にテレビが置いてあったんですね。でも、ちょっと待ってくださいと。普段の生活を想像してみて、お子さんが「ただいま!」と帰ってきたときに飛び込んでくるのが、テレビ画面の映像や背を向けた親御さんだったらどうですか? 私たちは「フォーカルポイント」と呼んでいるのですが、常に扉を開けたときに真っ先に目に入るものを意識しています。最終的なプランとしては、キュビオスを使ってテレビを奥側に配置し、ソファを扉に対して表向きに、フォーカルポイントには壁面グリーンパネルを飾りました。TVの位置の変更で落ち着いたリビング空間になったと思います。
なるほど。そういった暮らしの導線を考えて、ご提案されるんですね。
松浦: そうなんです。間取りや家具の位置でつくる生活導線だけでなく、照明による光の効果も考えます。たとえばダイニングのコーナーの観葉植物にスポット照明を使って植物を照らし空間を広く見せる効果で「大人カフェ」の心地良さを感じられるように演出しています。

空間をコーディネートしていく中で、ドアはどんな存在ですか?
松浦: ドアは暮らす人が出入りする場所で、毎日触れるし目にも入る。空間づくりにおいても大きな意味を持つ存在だと思っています。暮らし始めて数年経って、少し雰囲気を変えたいなと思ったときに、家具の配置変更や壁紙の張り替えはやりやすいけれど、床材や建具は気軽に変えられません。そういう意味でも、今後の家づくりのベースにもなっていくものになります。
そうした視点からも今回、1階の玄関とリビングに面したドアと2階の寝室のドア、2箇所でベリティスを採用したのはどうしてでしょう?
松浦: ベリティスのドアはまさに今回の空間づくりの起点になっています。選んだ理由としては、実は個人的にもベリティスのドアをずっと使ってみたかったんです。新登場したときは衝撃でした! ただおしゃれなだけじゃなくって、暮らしを彩る遊び心がある。私は昔から海外の映画を観て、居室ドアの室内側、裏側の色が違うことに「インテリアの楽しみ方」として憧れがあったんですね。ベリティスの塗れるドアなら、それが実現できる!なんてすてきなことでしょう!これで日本のインテリア、そして暮らしが変わるって思いましたから。5年前に我が家をリフォームしたときに選択肢にあったら、絶対使ってました。
ブルーグレーオーク柄の色味を選んだ理由はありますか?
松浦: 私の中では、ドアの色味は最初から最後までこの一択でした。レストランやカフェではお目にかかるけど、自宅ではなかなか見かけない、個性的だけど暮らしにも馴染みのある色。このドアなら暮らす方もインテリアの自慢ができるんじゃない?って、空間を想像しただけでわくわくしちゃいました。

全体がぬくもりある空間に
実際にベリティスのドアを導入してみて、印象はいかがですか?
すごくいいです。やっぱりベリティスの魅力はなんと言ってもこの質感ですよね。手触りとぬくもりがある。今回床材も心地いい足触りでぬくもりがあるベリティスフロアーWクラフトを選んで揃えたんですが、ドアとの組み合わせによってぐっと「グレイッシュインテリア」空間の質感が高まって、全体にあたたかさが醸し出されています。現場に床材が貼られたときに靴下のまま歩いたんですが、その質感とカラーからぬくもりを感じましたから。
ベリティスのドアは今後、松浦さんがお客さまの暮らしに寄り添っていく際の新たな選択肢になっていきそうでしょうか?
はい、もちろん。私たちにご相談くださるお客さまは、リノベーションの際、もともとある空間のどこかに不足を感じていて、変えたいと思っているけど、自分たちが選んだものがこれでいいのか確かめたいという思いを持っている方が多いんですね。ベリティスのドアは「この雰囲気が好きなんですね」「DIYも興味があるんですね」とお客さまの好みを受け止めたうえで、「ではこのドアはどうですか?実は、塗れるんですよ」といったふうに、お客さまの選択肢をさらに広げていける。それは私たちとしても、とっても嬉しいことなんです。
私は、家は家族の思い出、大袈裟に言えば文化をつくっていく場所だと思っているんですね。家や家具が世代を超えて受け継がれていくこともあるでしょう。だからこそ、そこに住まう人、その家族が暮らしやすい場所であってほしい。インテリアコーディネーターとして、これからもお客さまの暮らしを豊かにする選択に寄り添っていきたいです。
カフェのような落ち着いた空間に馴染みながらも、目を引くベリティスのブルーグレーオークのドア。床材と相まって、全体の空間の温度を上げてぬくもりを演出している。「家は家族の文化をつくっていく場所」。悠インテリアの松浦さんは、生活者の視点を大事に、その第一歩となる家づくりにこれからも寄り添っていく。
(一社)日本インテリアコーディネーター協会認定トップコーディネーター










