2011年5月25日更新
照明器具の工夫で、空間と生活シーンを演出 当たり前のように点けている部屋の照明。その照明も器具や手法によって温かさ、落ち着き、くつろぎなどさまざまな雰囲気を演出することができます。そんな暮らしに欠かせない照明器具の選び方を、空間ごとに解説します。生活シーンにあわせた照明器具を選べば、暮らしの空間をおしゃれで機能的に演出することができます。あなたのライフスタイルに合った照明のプランをリフォームで実現しませんか。
1.照明器具選びのポイント
新築の場合、照明器具選びは家の設計段階から始まります。既設の器具に取り付けできる照明器具もありますが、空間のデザインを考え、壁や天井、柱と一体になっている照明器具の場合は後から取り付けできません。工事後に照明器具を追加したり位置を変更しようとすると工事のやり直しにもなりかねず、費用負担も増えます。特にデザインにこだわった「建築化照明」や「一室複数灯」(後述)などを導入する場合には、建築計画に照明プランを加えることが重要です。
くつろぐ?楽しむ?そのスペースにあなたは何を求める?
リビングでは「家族みんなでくつろぎたい」。ダイニングでは「料理を囲んで楽しく食事をしたい」。寝室では「ゆっくり静かに。時には落ち着いて読書も」――など、家族や自分のスタイルに合ったスペースの使い方を考えてみましょう。イメージを固めることが、それぞれの用途にふさわしい照明器具を見つけるための第一歩です。
雰囲気づくりに必要な明るさを考える
部屋の広さや、そこにいる人が食事や調理、読書などをする時に適切な明るさを考えてプランを作りましょう。明るければいいというわけではなく、部屋の用途や雰囲気にふさわしい明るさがあります。例えばリビングや寝室などは、少し暗いくらいの方が落ち着くこともあります。
省エネやメンテナンスにも配慮
照明器具の省エネ性やランプ寿命など、経済性や自然環境への影響度にも配慮したいもの。吹き抜けなど天井の高い部分では、ランプが切れた時の交換のしやすさや、LED照明のようにランプ寿命が長く交換の手間が少ないといった点も重要になってきます。
年齢と共に低下する視力のことも考える
視力の低下は、30代半ばから始まり、ほとんどの人が50代で実感します。ご家族に高齢者がいる場合はもちろん、自分が年齢を重ねたときのことも考えて、必要な明るさを確保しておきたいですね。
具体的な照明器具の選び方
照明器具の種類や照明手法などによって、部屋の雰囲気は大きく変わります。
照明(光源)の種類と使い分け
住まいで使う主な照明(光源)には蛍光灯やLED照明があります。その違いと特長を知り、目的に応じて使い分けましょう。特にLED照明は、寿命が長い、消費電力が少ない、器具がコンパクト、紫外線や熱をほとんど出さない――などの特長があります。
あかりの演出
■建築化照明
天井や壁、柱などの建築構造物に照明器具を埋め込み、建物と一体となった照明を建築化照明と言います。照明効果を含めた空間全体をデザインするため、より質の高いあかりの空間が得られます。
■一室複数灯
リビングや居室など、一室で色々な生活を楽しむスペースには、複数の照明を組み合わせてさまざまな雰囲気を演出することができる、「一室複数灯」をおすすめします。必要な照明器具だけを点灯することで、省エネにもつながります。
照明器具のスタイル
照明器具には多くの種類(スタイル)があります。それぞれの特長を知って、雰囲気づくりに役立てましょう。
2.リビング・ダイニング/キッチン/吹き抜け
家族が集まってくつろいだり、おしゃべりやテレビを楽しんだり、時には友人やご近所の方を呼んでホームパーティーをしたり―― くつろぎや団らんなどさまざまな目的に使われ、コミュニケーションの中心になるのがリビングやダイニングです。そんな多目的空間にふさわしい照明器具を考えてみましょう。
リビング・ダイニングの照明器具の選び方
リビングやダイニングは家族の広場です。団らんや食事だけでなく、読書や作業などさまざまな使い方ができるスペースだからこそ、あかりの雰囲気や機能性にこだわりたいですね。
明暗のアクセントをつける
全体照明のシーリングライトに加え、壁面にブラケット、コーナーにスタンド、間接照明などで明暗のアクセントを付けると、色々な雰囲気を楽しめます。華やいだ雰囲気にしたいのならシャンデリアもおすすめです。 部屋に絵画や置物、観葉植物を飾るなら、ダウンライト、スポットライトまたはフロアスタンドで強調しましょう。紫外線や熱をほとんど出さないLED照明なら、大切な美術品や植物を傷める心配もありません。
一室複数灯でさまざまなシーンを演出
複数の照明を組み合わせてさまざまなシーンを演出することができる「一室複数灯」は、幅広い用途に使われるリビングやダイニングにぴったり。ワンタッチでお好みの照明モードを選ぶことができる「調光器」を取り付ければ、さらに便利です。「照明器具が複数になれば電気代もかさむのでは?」と思われがちですが、用途や雰囲気に合わせて必要な照明器具だけを点ける「一室複数灯」は、むしろ節電につながります。
料理を美味しく見せる
ダイニングでは、演色性(※)に優れた照明を使うと、美味しい料理がいっそう引き立ちます。演色性のよい製品が出ていますので、省エネ性も考慮した上で、どれを選ぶか検討するといいでしょう。
※演色性:照らされたものの色の見え方のこと。色を忠実に再現し、自然な色合いに見えることを「演色性がよい」と言います。
「あかりだまり」で気持ちをひとつに
ペンダントなどでダイニングテーブルに「あかりだまり」を作ると、みんなの視線や気持ちをテーブル中心にひとつにまとめることができます。
吹き抜けの照明器具の選び方
光を上方に向けて拡散するブラケットなどで天井面を照らすと、吹き抜けならではの"広がり感"を強調できます。器具の取り付けは、ランプ交換などを考えて、できるだけお手入れしやすい高さに。電動昇降装置を使うと、メンテナンスが楽になります。またランプ寿命の長いLED照明なら、ランプ交換の手間自体が大幅に減ります。傾斜角度によっては取り付けできない器具もあるので、天井の勾配と取り付けできる器具を確認しましょう。
キッチンの照明器具の選び方
キッチンはベースライトで空間全体を明るくした上で、手元の明るさも確保したいですね。明るく白い色の照明がおすすめですが、オープンキッチンの場合はリビング・ダイニング側に光が漏れないように配置し、リビングやダイニングの落ち着いた雰囲気を壊さないようにしましょう。センサで自動ON/OFFする照明器具なら、汚れたり濡れたりした手でスイッチに触れずに済み、清潔で安心です。
3.内玄関/廊下・階段
廊下など移動のためのスペースは、足元が見えにくいとつまずいたり、転んだりの事故につながりかねません。安全は快適な暮らしの原点。内玄関や廊下、階段など移動空間(動線)の、安全性を重視した照明器具を考えてみました。
内玄関の照明器具の選び方
帰宅時や来客時、まず目に入る玄関は、いわば"家の顔"。「家に着いてホッとする」「お客様に良い印象を持ってもらう」―― そんな雰囲気をつくる照明器具を選びたいですね。もちろん段差でのつまずきにも注意。"足元まで明るく"は基本です。
暖かく迎えるには
暖かい雰囲気でお客様を迎えるには、電球色の蛍光灯やLED照明が適しています。また、お客様と迎える側、お互いの顔に影が出ると暗い感じになりますので、照明器具は隅ではなく顔をあわせる場所の上部に取り付けましょう。人を感知して自動的に点くセンサ付きの照明器具を使えば、夜帰ってきたときに暗いところでスイッチを探さなくても済みます。
スポットライトの効果
靴箱の上や壁のくぼみなどに花や置物を飾り、スポットライトやダウンライトで照らせば印象的な空間になります。また玄関自体は明るくても、正面の奥の壁が暗いと沈んだ雰囲気になってしまいます。スポットライトやダウンライトで奥まで明るくするといいでしょう。
廊下・階段の照明器具の選び方
歩きなれた廊下や階段でも暗いと不安なものです。安全性を考えて"足元まで明るく"しましょう。
足元までハッキリ!
まぶしさを感じない、しかし足元までハッキリ見える明るさが必要です。特に階段では、照度を上げて踏面に影ができないようにしましょう。足元を照らすフットライトを使えば、夜中にトイレに立つときなども安心感があり、まぶしさがないので眠気を覚ます心配もありません。人が通るときだけ点灯するセンサ付きの照明器具なら、省エネ性にも優れています。
階段には、お手入れのしやすいものを
ランプ交換のために階段で脚立を使うのはとても危険。照明器具を手で簡単に上げ下げできるものや、スイッチひとつで照明が降りてくる電動昇降装置が便利です。またLED照明などランプ寿命の長い照明なら、ランプ交換の必要性自体を大幅に減らすことができます。
4.バスルーム/洗面化粧室/トイレ
鏡に映った顔が見えにくくて不便を感じたことはありませんか?
お風呂で髭を剃る時、はっきり見えずイライラしたことはありませんか? 浴室や洗面化粧室、トイレなどの水まわりで、機能性を最優先にした「明るく・清潔・安全」な照明器具を考えてみました。
バスルームの照明器具の選び方
くつろげる雰囲気づくりと共に、安全や防湿・防水の対策がポイントになります。
湿気に強い「防湿型・防雨型」が基本
湿度の高いバスルーム。サビが出ると漏電や故障の原因にもなるので、「防湿型」「防雨型」の器具を選びましょう。また床が滑りやすく転倒事故が起こりやすいので、足元も明るく。ランプ交換などの作業時も滑りやすいので、照明器具はブラケットなどラクに手が届くものを選びましょう。取り替えの手間が少なくて済む長寿命タイプのランプを選ぶのもいいですね。
ミラーライトは、顔の表情や手元がはっきり見えるものを
ミラーまわりは顔や手元がはっきり映るようミラーライトを設置し、特に明るくしましょう。器具の側面を光が透過するよう透明にして、まぶしさに配慮しながら手元の明るさを確保したものもあります。バスルーム全体を電球色の照明にしてミラーまわりの照明と切り替えられるようにすれば、くつろいだ雰囲気を保つことができます。
照明を切り替え、バスルームでくつろぎの雰囲気づくり。
洗面化粧台の照明器具の選び方
洗面化粧台は手洗いやお化粧などのほか、洗濯場や脱衣室としても使われる多目的の作業スペースです。明るくて顔の表情や服の色柄がはっきり見える照明器具を選びたいですね。
基本は「防湿型」。湿気対策を忘れずに
洗面化粧室は手を洗ったり、顔を洗ったり、頻繁に水を使う場所です。照明器具は、湿気に強い「防湿型」と表示されたものを選びましょう。
より明るく見やすく。ベースライトとミラーライトの組み合わせ
洗面化粧室の照明器具は、全体を明るく照らす昼白色のベースライトと顔を照らすミラーライトの組み合わせで、明るく作業のしやすい空間づくりに心がけましょう。ミラーライトには、人の肌が自然に見える演色性のよい照明がおすすめです。
センサ付きなら安全
人の気配を感知して自動点灯・消灯するセンサ付きなら忙しい朝でも消し忘れがなく、安心です。スイッチを直接触る必要がないので、手が濡れたり汚れたりしていてもスイッチまわりを汚す心配がありません。
トイレの照明器具の選び方
トイレも湿気が多いスペースです。照明器具は「防湿型」やサビに強いものを選びましょう。またトイレは出入りも多く、照明がすぐに点いて欲しいスペースです。LED照明ならスイッチONと同時に点く上、省エネ性に優れているのでトイレにぴったりです(蛍光灯は点灯・消灯の回数が多いと寿命が極端に短くなります)。人の動きを感じるセンサ付きなら、夜中のトイレでスイッチを探すことも消し忘れもありません。
また夜中は明るさを落として、まぶしさを抑えましょう。まぶし過ぎる照明は目を覚まさせてしまうので禁物。安全性を確保しながら、ほどよい明るさを選びたいものです。
5.ベランダ・バルコニー/外まわり
外まわりの照明器具には、防犯という重要な役割があります。ベランダやバルコニー、ガレージなど、外から見通しの悪い死角を明るくすることで、不審者が侵入しにくい環境を作りましょう。ベランダ・バルコニー、外まわりの照明器具選びについて「魅せる照明」と「防犯」をポイントに考えてみました。
ベランダ・バルコニーの照明器具
洗濯物を干すなどの作業スペースだったり、鉢植えを飾ったり、くつろいだり、使い方はさまざま。防犯や省エネに配慮しつつ、目的に合った照明器具を選びたいですね。
センサ付きの照明器具で防犯・省エネ
人を検知してパッとフラッシングで不審者を威嚇する照明器具や、人を検知して自動点灯・消灯するセンサ付きの照明器具をおすすめします。防犯効果に加え、必要なときだけ点灯するので省エネです。
くつろぎ空間としての雰囲気づくりも大切
飾ってある鉢植えなどをライトアップすれば、お部屋の中から幻想的な光景が楽しめます。またベランダの照明器具には、お部屋を広々と見せる効果もあります。虫を寄せ付けにくいタイプもありますので、ベランダやバルコニーでくつろぐときはありがたいですね。
外まわりの照明器具の選び方
街の景観の一部ともいえる外まわりの照明器具は、住まいの外観に合ったものを選びましょう。昼間は器具自体がはっきりと見えますので、器具自体のデザイン性や取り付けの場所もよく考える必要があります。
「防雨型」で、お手入れのことも考えて保守性に優れたものを
雨などに対応できるよう、必ず防雨型の器具を選びましょう。また耐久性に優れてさびにくいものだと、器具の美しさが長持ちします。
門まわりの照明器具はデザインも大切に
わが家の夜の印象は、門まわりの照明器具が大きな役割を果たします。玄関のポーチライトは、好印象を与えられるデザインのものを選び、鍵穴が見えやすいように必ずドアの取手がある側に取り付けましょう。高さは1.8mくらいがおすすめです。表札を見やすくすることも大切です。
また外回りは防犯にも配慮しましょう。センサ付きの照明器具なら消し忘れの心配がなく、人が近づくと点灯するので不審者を威嚇する効果もあります。防犯灯は暗がりをつくらないよう、取り付け位置にも注意しましょう。
6.寝室/子供室/和室
プライベートスペースとしての寝室や子供室、和室の照明器具の選び方について紹介します。お部屋の雰囲気づくりに欠かせない照明器具は、さまざまなシーンを演出する必須アイテムです。自分のライフスタイルにあわせ、思わずホッとする「心地よさ」を演出しましょう。
寝室の照明器具の選び方
一日の終わりを過ごす部屋は、何よりも"安らぎ"を最優先に考えましょう。暖かみがある電球色の照明なら、落ち着いた雰囲気で眠りに入りやすくなります。また、照明器具の位置を低くすると、さらに落ち着いた感じになります。
"まぶしくない照明"が基本
光源が直接目に入るとまぶしくて眠りの妨げになります。全体照明はカバー付きのシーリングライトがおすすめです。さらに、目に優しい拡散光や間接光は、くつろぎ感を与える効果があります。リモコンで明るさの調整やスイッチのON/OFFができるタイプなら、横になったまま最適な照明環境に調整ができます。ダウンライトを取り付ける場合は、光が直接目に入らないよう、足元に取り付けましょう。
常夜灯には足元灯で安全対策を
夜中、トイレなどで部屋から出るときのことを考え、足元灯の設置をおすすめします。ただしベッドから光源が見えないよう、取り付け位置には注意しましょう。LED照明なら、消費電力が少なく、一晩中点けたままでも電気代が抑えられます。
子供室の照明器具の選び方
寝る、遊ぶ、勉強するなどさまざまな目的で使われる子供室。お子様の成長やライフスタイルに応じて、照明器具を選んでいきたいですね。
目に優しい照明器具を
成長過程のお子様の目を守るために、全体照明は明るいものを選びましょう。照明を消すと動物や星、月などの模様が浮かび出る蓄光イラスト入りのカバーを使ったものもあり、子供室におすすめです。
全体照明は天井直付けシーリングライトで安心・安全
子供は模型を飛ばしたり、ボールを投げたり、予想外の動きをします。全体照明はお子様の大胆な動きにも耐えられるような、天井直付けのシーリングライトを。ガラスより割れにくいアクリル製が特に適しています。
和室の照明器具の選び方
和室の照明器具は、純和風からモダンと和の組み合わせ、和洋融合まで、さまざまな工夫が考えられます。暮らし方にあわせた照明器具を選びましょう。また、高齢者の個室として使われることもあるので、明るさや使いやすさにも配慮したいですね。
天井の構造にあわせて選びましょう
角材を格子状に組んだ格天井など、天井の造作によっては取り付けられない器具もあるので注意が必要です。洋間続きの和室なら、シンプルな器具をおすすめします。
低い位置からの光でくつろぎ感を演出
行灯(あんどん)風のスタンドを置いて低い位置から照らせば、くつろぎ感が高まり、和室らしさを演出できます。寝室として使う場合、枕元灯としての役割も果たします。センサ付きなら消し忘れの心配もありません。
高齢者にもやさしい照明器具を
高齢者の個室として使われる場合、全体照明は器具ごと上げ下げできるタイプのペンダントがおすすめです。これなら読書や書き物をするとき手元に照明器具を引き寄せられる上、ランプ交換やお手入れも楽にできます。リモコンで照明器具を上下できるものもあります。
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