まさにT様邸は、暮らし方の改善につながったリノベーションとなった。それは、石井さんがリノベーション前の図面を見た時の違和感がきっかけに。さまざまな物件を手掛けてきた石井さんは、「なんでこんな間取りなの？」と思うことは多々あり、それが使いづらさ、暮らしにくさにつながっていると考えていたからだ。それは、T様が「図面を見ただけで私たちの思いを汲み取ってくれた」と話すほど。

「当初はただキレイにするだけのリフォームを考えていたようですが、図面を見た時キッチンが壁に囲まれていて、お子さんがいるのにこの間取りのままでいいのかなと感じたのもあり、どうしてこの物件を買ったの？というところから話を伺ってみました。すると、キッチンで作業していても子どもの動きを見えるようになるといいな、子どもが保育園で書いた絵を飾れるスペースがあると嬉しいという話が聴けました。でも予算は限られている。そんな限られた予算の中で効果的なリノベーションを行うためには、その後の暮らし方を考えることが必然だったと感じています」

デザイン性もあり、快適に暮らせる
そんな家が求められている

一般的に限られた予算内でのリノベーションは、ある程度は導線を考慮するものの、どれだけ物を変えてデザイン性をアップデートできるかということに集中しがちだが、大切なのは視点と暮らし方を想像することだという。

「例えば、キッチンに立った時に何が見えるか。こう変えたら広く見える？　狭く見える？ということを、図面の中を歩きながらいろんな場所に立ってイメージしていきます。さらに、以前に比べるとライフスタイルが多様化し、それぞれのエリアが担う役割が増えてきているとも感じています。昔は靴のためのスペースだった玄関は、ベビーカーを置いたり、自転車を収納するスペースも必要だったりしますよね。全体の空間だけではなく、スポットスポットで考えることで、施主様の暮らし方に寄り添ったコストパフォーマンスの高いプランが提案できると考えています」

パナソニックのカスタムパーツを組み合わせたパッチワークデザインの壁はまさにその考えを反映したデザインである。

「ただ貼っただけだと、ホームセンターで買ったものでも同じになってしまうと思い、建材のポテンシャルを引き出した取り入れ方にしたいと考えました。まずは種類が違うパーツを組み合わせて全面壁として取り入れること。会話の中で出てきた、お子さんが描いた絵を飾るスペースとして活用していただくことはもちろんですが、+αの使い方をしてほしいと思い、デスクを設置することに。暮らしていく中で使い方が変化していき、おもしろい使い方を見つけてもらえるような、建材の組み合わせが提案できたかなと思います」

ライフスタイルの多様化に合わせて
メーカー建材も多様化は避けられない

大手メーカーの建材を使うことはあまりない経験だったという石井さんだが、メーカー建材にも多様性を感じたのはいい発見だったとか。

「先ほどもお話ししたように、主導権が施主様に渡ったことによって、必然的に暮らし方に紐づいた家づくり、それぞれのライフスタイルに合わせたリノベーションスタイルが主軸だと考えています。リノベーションをすることで自分の暮らしがどう変わるのかという本質をとらえられるようになってきたということでもあるので、メーカー建材にもその流れに対応できる柔軟性が必要不可欠。そういう点では、クラフトレーベルはユーザー目線を持った建材だと感じました。ドアに傷がつくとそれだけでストレスになることがあると思いますが、自分で塗装したドアなら傷が味になるし、来年は違う色に塗り替えようかなと楽しみにつながりますよね。これからもストレスなく、暮らしの中に取り入れられる建材が増えるといいですね」