横内先生の住宅設計には10のコンセプトがありますよね。
「家と庭は一体で設計する」や「開口部を大切にする」などは、まさに「軒先」と深い関係性がありますし、「控えめな外観と豊かな内部」というお考えは、Archi-spec TOI の開発コンセプトにも通じる言葉として興味があります。私たちも、Archi-spec TOI の開発時に、外観の美しさを邪魔しないと言いますか、控えめな雨樋を作ろう、開発しようという意図がありました。
「控えめな外観」と「軒先」について、お聞かせください。
だから軒先も垂直にしなければいけないことになる。雨樋を取り付けるため、設計者の意図に反して軒先をいじらなければいけなかったんですよね。
本来、屋根の原理から言うと、軒先は勾配に対して直角でいいし、その方が雨がかかりにくくなるから鼻隠しが傷まないというメリットが出る。だから、屋根の勾配に対して直角の鼻隠しに、素直に取り付けられる雨樋ができたということは、これは僕にとってはけっこう画期的なことだったんだよね。
もちろん、それによってコーナー周りの工夫は必要になるわけだけど、でも軒先の美しさからいうと、直角に付けられることで色んなことが解決されますよ。
Archi-spec TOI は軒先に対して直角につけられることで軒樋に影ができ、シャープに見える。樋の前面に陽が当たると、軒樋の厚みが強調されてしまうからね。薄く見える方が、軒先がシャープに納まって見えるから、そういうメリットもあるんだよね。
黒田
軒先がシャープに見えると外観の印象が変わりますものね。
横内
従来の雨樋のもうひとつの問題は、あんこう(=集水器)が格好悪いことだったんだけど、Archi-spec TOI は下端が出っ張らないから目立たない。軒樋が目立たない、あんこうが目立たない、いろんなものが目立たないというのがすごくいい。
デザイナーの黒田さんとしては自分が関わった商品が主役になりたいだろうけど(笑)。
黒田
いえいえ、そういう心理は確かにありますけど、このArchi-spec TOI に関しては、そういう考えは無かったです。控えめな雨樋を目指しましたから(笑)。
あくまでも黒子なんだけど、機能面では主役を張れる、そんな雨樋だと思っています。
開発段階でいろいろと工夫をしまして、横内先生が気に入ってくださった、軒樋を屋根の勾配に合わせて取り付けるというのも(当社)従来品では無かった構造になっています。控えめな雨樋を実現するために、目立たないように、そして、底幅を小さくすることに注力しました。小さくしても、サイホン効果を実現していますから、排水能力も問題ありません。
家の中からは雨樋の存在は見えないけれども、それでいて Archi-spec TOI は排水能力を確保できるよう設計されているので、大雨が降っても、最近のようにゲリラ豪雨があってもオーバーフローすることは無いだろうと思っています。
それに、外から見ると、鼻隠しのように見えるのがいい。板金の鼻隠しのようで。