Archi-spec TOI:インタビュー[ 建築家と軒先設計 ]

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軒先とは、日本舞踊にたとえると指先のようなもの

「建築家 横内敏人にとって、軒先とは?」

インタビュアー/デザイナー:黒田 久美子(パナソニック株式会社 ハウジングシステム事業部)


設計段階から取り入れる雨樋

黒田
本当に美しい軒先を実現されている「熊谷の家」ですが、一方でこれだけの美しさを実現するためには、設計段階でしっかりと軒先を考えなければいけないと思うのですが、そのあたりのことをお聞かせください。
横内
従来は設計した軒先に雨樋を取り付ける、という発想だったわけだけど、そうではなくって、逆に雨樋から軒先を考えることにしたんです。屋根と雨樋を一体で考えるというかね。発想の転換をしたわけです。
一体で考えることで、軒先がすっきりするじゃないか、というね。
黒田
ありがとうございます。私たちの狙いというか、願いでもあるんですけど、雨樋は後で別に考えますよということではなく、設計の段階でしっかりと軒先について考えていただいて、美しい軒先を増やしていきたい、そうすることで日本の街並が美しくなる、そう思っています。
横内
この「熊谷の家」は平屋だから、いっそう軒先には気をつかって設計をしました。平屋の場合、軒先が近くて目立つからね。
雨樋の存在は軒先のイメージを左右するけど、Archi-spec TOI はサイズ感もいいよね。
写真

Archi-spec TOIの施工は難しい?

黒田
横内先生の意図する軒先を実現するために、Archi-spec TOI を取り付けるという施工部分で問題はありませんでしたか?
横内
工事業者さんから何か言ってくるということは無かったですね。
黒田
工事をする現場の方にとっては、従来の雨樋とは部材の形状が違うとか、取り付け方が違うとか、不安に思われることがあったと思います。
横内
でも、雨樋は目立つから、何を付けるかということは住宅全体にとっても重要なことですよ。建築の要素として、出っ張ってくるものというのは、良い意味でも悪い意味でも目立つんですよ。何を付けるかで印象が左右されてしまいます。雨樋というのはアクセントみたいなものだから、たとえ建物本体が立派でも、変なアクセサリーを付けちゃうと建物が台無しになるよね。不似合いなものというのは目がいくので。
だから、多少コストがかかってもやる価値はありますよ。工事業者さんも新しい試みに、ぜひ挑戦して欲しいですね。
黒田
Archi-spec TOI は設計段階から取り入れていただく必要があります。後付けできる従来の雨樋とは、ここが大きく違います。でも、設計段階から取り入れていただくことで、建築家や設計士の方々が意図する軒先や外観に大きく貢献できると自負していましたので、先ほどの横内先生のお話は心強い限りです。

軒先にコンセプトをもたせる

黒田
この「熊谷の家」では、どのような軒先設計のコンセプトを設定されたのでしょうか?
横内
施主様からのたっての願いで、第一に平屋であることが前提でした。
平屋というのは、2階建てや3階建てとは違って屋根が大きくなる。しかも、ここは道路に長く面した敷地なので、屋根をどのように見せるかということが最重要課題で、屋根の先に付く雨樋も大切な要素だったわけです。長い雨樋が走る屋根が前面道路から見えるわけだから。平屋の美しい軒先、というものを生みだしたいと考えました。
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黒田
施主様は、雨樋というものに意識がありましたか?
施主奥様
いえ、もう横内さんにすべてお任せしておけば素敵な家ができるだろうと思っていましたから。
黒田
それだけの信頼関係ができているのは素晴らしいですね。あらためて軒先や雨樋をご覧いただいていかがでしょうか?
施主ご主人様
いいですね、歴史的建造物のようで。奈良の建築物を思わせるようなところが気に入っています。
横内
そうなんですよ。昔の建造物には雨樋は無かったんです。お寺とかには雨樋は無いじゃないですか。だから軒先が綺麗なんです。日本は雨が多いから、軒の出を深くして、できるだけ雨を建物から遠ざけるように工夫されていたんですね。軒を深くすると雨樋は要らないんです。今の住宅事情では、それは難しいんですけど。
施主奥様
この家も軒が深いから、いいなと思います。軒下が気持ちいいです。
施主ご主人様
(軒先が深いから)夏は陽が入らないし、冬は陽が入るようになっている。いいですよね。
ここ熊谷はとにかく暑い所ですからね。今日でも外は暑いけれど、家の中は快適だからね。
写真
横内
平屋の場合、屋根の面積が大きくなるから熱を受けやすくなるんですよね。
だから、屋根の断熱と、それと軒を深くして陽射しが入らないように工夫し、庭を両サイドに設けたんです。
施主奥様
風通しもいいし、外に出るのがいやになるほど快適です。開口部が大きいのに、外からは中が見えないように設計していただいているのも嬉しいです。
黒田
本当にいろんな意味で機能的で、美しい軒先がある家ですね。

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建築家 横内敏人にとって軒先とは?

黒田
横内先生にとって、軒先とは?
横内
日本舞踊で指先って大切ですよね。
指先の所作でその踊りが綺麗に見えるわけですよ。軒先とは日本舞踊でいうところの指先みたいなものではないでしょうか。そこがきちっと納まっているかどうかで、全体が美しく見えるかどうかが決まってくると思います。
写真
黒田
建築もまさに軒先の所作が大事だということですね。
もうひとつ、最後にお聞きしたいことがあります。メーカーとして、息の長い商品づくりをしていきたいという想いがありまして、普遍性といいますか、横内先生にとって普遍的な価値というものについてお聞きしたいのですが。
横内
それは、雨樋だけの話ではなくて、日本のプロダクトデザインのあり方の話なんだよね。
海外に比べて日本ではプロダクトデザインの寿命が短い、すぐにモデルチェンジしちゃう。長く使い続けられるものが少ないんですよ。モデルチェンジをすることで新しい需要を生みだそうという戦略なのかもしれないけれど、住宅というものは何十年も住むものだから、僕たち建築家としてはモデルチェンジされると困るわけですよ。
流行のものを使うと、その流行が廃れた時に、その住宅全体が古く見えてしまう。
20年、30年経っても古さを感じさせない家というものを考えた場合、できるだけモデルチェンジしないものを使いたい。
黒田
Archi-spec TOI もそういう商品に育ってほしいと考えています。
そして、建築家・設計士による軒先設計で、心地よい空間が日本中に広がることを願っています。
ー今日は貴重なお話をたくさんお聞かせいただき本当にありがとうございました。

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