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住まいは一生に1度か2度の大きな買い物、いやが上にも慎重になります。住まいや土地などの不動産探しをするときに、最も身近な情報源は新聞やチラシ、住宅雑誌、インターネットなどの広告です。不動産広告には「消費者が不動産を選ぶときに必要な事項を表示する」ことが義務付けられ、物件の詳しい情報が盛り込まれています。そこで、不動産広告の上手な見方、読み取り方を、社団法人首都圏不動産公正取引協議会 調査役の奥山直行氏にお話を伺いました。
不動産広告には、「不動産の表示に関する公正競争規約」(表示規約)によって、さまざまなルールが決められています。不動産を選ぶときに必要な事項が、一定の条件で表示されるようになっているので、広告を読めば、その不動産に関しての基本的な情報は手に入ります。また、「特定事項の明示義務」により、その不動産のデメリットがあれば盛り込まれています。よく確認をすれば、安心して住まい選びができるようになっています。
また、法律(「宅地建物取引業法」と「不当景品類及び不当表示防止法」)によって、誇大広告の禁止、取引態様の明示なども決められています。
不動産広告には、「物件の所在地」、「交通の利便」、「面積」、「価格」などの事項を表示することになっています。
表示すべき事項は、中古・新築、戸建て・マンション、土地・住宅などの種類と掲載されている媒体によって異なります。
また、都市計画法や建築基準法などの法によって利用が制限されている物件、傾斜地や高圧線下にある物件など、消費者が通常予期できない欠陥で著しい不利益が予測される事項は、特定事項として必ず表示されることになっています。
広告には、すぐには契約や予約ができないが、早く情報を入手できる「予告広告」や「シリーズ広告」など、いろいろある。
予告広告は新規の不動産情報を買い手に早く知らせる広告です。販売が開始される前に情報を得られますので、ゆっくり検討する時間を持てるなどのメリットがあります。ただし、契約や予約はすぐにはできません。
販売戸数や価格等が明確に表示される本広告に対して、予告広告では、販売戸数や価格等が表示されない場合があります。予告広告である旨が明記され、販売開始予定時期が大きく明示されます。その他、「価格/未定」、「予定最低価格/○○○○円、予定最高価格/○○○○円台」、「販売戸数/未定」などと表示されます。
早く情報を入手できるメリットを活かし、現地を確認するなど、じっくり検討するとよいでしょう。
見落としがちですが、不動産広告の片隅に書かれている「物件概要」こそ、大切な情報源です。建築確認番号、用途地域や建ぺい率、容積率など建物に関係すること、取引態様や住宅ローンなどお金に関わることなど、確認しておきたいことがいっぱい詰まっています。
よく、物件写真の代わりに完成予想図が掲載されている場合がありますが、実物よりもよく見えるのが普通ですから、必ず現地に行って自分の目で実際の建物や周囲の環境を確認しましょう。
[取引態様]
不動産会社の取引上の立場を示し、「売主」、「代理」、「媒介」などと表示されます。媒介の場合は、物件の代金とは別に、媒介報酬(手数料)が必要になります。
徒歩○分という基準は、道路距離80mを1分で計算したものです。
[用途地域]
建築基準法では、用途地域ごとに建築可能な建物の種類、建蔽率、容積率、建物の高さ制限などの規制を示しています。12種類あります。
[建築確認番号] [入居予定]
忘れずに確認したい一つ、入居予定時期。建物が未完成の場合、「建築確認番号」と「入居予定年月」、完成している場合は、「完成年月」が表示されています。建築確認番号は、建築基準法に基づくものです。
広告だけを見て消費者が判断するのはなかなか難しいものです。悪質な場合、存在しない物件で気を引く「おとり広告」などは、手口もさまざまで巧妙です。だまされないためにも信頼のおける不動産会社なのかを見極める、わからないことは担当者にどんどん質問して納得するまで説明してもらう、現地に行って自分の目と足で確かめることが大切です。不動産売買は大きな金額が動きます。慎重に検討しましょう。
格安物件にはそれなりの理由が。現地に行き、必ず確認を。
格安物件だと思って行ってみると崖下の土地であったり、「今売れてしまったから他の物件を」と言われたりなど――。おとり広告を出す業者は広告以外の物件をすすめるのが常套手段です。
また、契約をやたらに急がせたり、何でも「はいはい」と安請け合いする業者にも要注意です。
おとり広告に共通するのは、他社の広告物件と比べて、面積や立地条件などほぼ同じなのに安い。つまり、誰もが掘り出し物と感じる物件なのです。「不動産には格安物件はない。格安物件にはそれなりの理由がある」と心構えをしておくことです。
不動産会社には都道府県知事か国土交通大臣の免許が必要です。免許は5年ごとに更新され、不適当だと判断されれば更新されません。その意味では同じ場所で長く営業している不動産会社は信用の目安になります。
免許証番号は「国土交通大臣免許(2)第○○○○号」「○○知事免許(5)第○○○○号」と表示されますが、この( )内が免許更新の回数になります。不動産広告には、広告主の免許証番号が必ず表示されています。一つの目安にするといいでしょう。
なんでもそうですが、不動産取引では契約書はとても重みがあるものです。契約書に書いていないことは「ないこと」と同じ、口約束は役に立ちません。不動産取引の最中で、わからないことや不安なことは、ささいなことでも聞く。納得できないときは取引を中止するなど、契約前に不安を解消しておくことが大切です。契約前の「物件立ち合い」や「重要事項説明」を存分に活用しましょう。
「建築確認がとれていないのに建築確認番号が書かれている」、「媒介であることを明らかにしないまま後で手数料を取る」、「形状が悪かったり傾斜のある土地であることを隠して広告」、「セットバックなど建てかえるときに制限がつくことを説明しない」、「“頭金なしで誰でも買える”など実際には組めない住宅ローンを宣伝する」など、さまざまな事例があります。 トラブルに巻き込まれる前に、買い手側にも事前の確認と慎重な判断が必要です。
口約束はしないで、必ず契約書で確認するのを忘れずに。
契約後にトラブルが起きたときは、まず自分の要求をはっきりさせて交渉しましょう。口約束は立証できませんから水掛け論になりがちです。感情的にならず、現実的な解決法を考えましょう。
当事者同士で解決できないときは、不動産会社の加盟している団体、都道府県や国土交通省などの住宅関連窓口に相談するといいでしょう。消費者センターに相談する方法もあります。法テラス(※)をはじめ、都道府県や市町村の法律相談窓口を利用する手もあります。
トラブル回避のためにも、購入決定に欠かせない条件などは、どんなに細かいことでも契約書や重要事項説明書に明記しておきましょう。
(※)法テラス
「法テラス」は、日本司法支援センターの愛称で、全国どこでも法的トラブルを解決するための情報やサービスを受けられる社会を目指し、平成18年10月にスタート。全国50カ所にあります。