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札幌市の住宅街(中高層住居専用地域)に建つW邸は、4人家族のWさんと愛犬1匹が暮らす住まいです。近隣一帯は緑に恵まれてはいるものの、将来、高い建物が建つことも予想されます。Wさんはあえて平屋とする中で、周りに残る緑の環境を活かした住まいづくりを計画。光や風を取り入れる開口部の工夫や、趣のあるリビング空間、遊び心のある小さなロフトなど、のびのびとくつろげる住宅を実現しています。暮らしの中に光や風を感じるW邸をご紹介します。
緑に恵まれた住宅街に建つW邸。施主のWさんご夫婦とお子さんが暮らす平屋建ての住まいです。それまでは、借り家住まいで戸建てに住んでいましたが、取り壊しの計画が出てきたことから、住まいづくりをスタートさせました。
漠然とした中で、まず土地探しと依頼先探しをほぼ同時に始めて2〜3カ月たった頃、たまたま手に取った雑誌から3人の建築家をピックアップ。それぞれに会って、デザインや話しやすさ、相性などから建築家を絞り込みました。
一緒に土地探しをする中、建築家からすすめられたのがスクラップブックの作成です。W家の家族構成やそれぞれのライフスタイル、好きなもの、住まいへの要望などを雑誌の切り抜きと共にスクラップブックに書き込んでいます。
スクラップブックには、「光をたくさん入れて欲しい」、「外からの人目を気にせずに開放感のある空間」、「見せる収納棚が欲しい」、「生活感は隠したい」などの住まいへの要望が、雰囲気などのイメージとともに詳細に書き込まれています。スクラップブックは建築家にイメージを正確に伝えるだけではなく、思いを見える形にすることでW家の目指す住まいを明確にするのにも役立ったそうです。
雑誌の切り抜きのコラージュや文字で表現されたスクラップブックには、W家の新居への思いがビッシリ。
「人目を気にせず開放感のある空間」の希望を取り入れた玄関先のテラス。
W邸は高台の造成地に立地。リビングダイニングを中心に、南西側にキッチン・洗面室・バスルームなどの水まわりを配し、北東側に主寝室・子ども室を配した2LDK+ロフト+テラスという間取りです。
敷地は、第一種中高層専用地域。周辺の住宅には3階建て住宅も見られ、南面の隣接地には将来、高い建物が建つことも考えられます。このためW邸は、周囲の影響を受けずに、敷地内で光を取り入れられるように工夫がされています。
2階や3階建てにする選択肢もありましたが、2、3階建ての家を建ててもそれだけで採光がよくなることは望みにくく、逆に庭に日陰を増やすことにもなります。そこでW邸では、上からの光が各部屋に取り入れやすく天井高や開口部を工夫した平屋建てを採用しました。
さらに、光は室内の白い壁に反射して部屋を明るくします。
採光を考えて採用されたのがハイサイドライトです。リビングダイニングの南西壁を立ち上げて2階に相当する高さ(最上部5m25cm)を確保。梁あらわし天井とし、大きなハイサイドライト(5m30cm×1m40cm)を設置することで、外光をふんだんに取り入れることができるようにしています。これにより、屋根も南西から北東に下る方流れ屋根としています。
隣接する住宅に遮られることなく、明るい光が室内へと降り注いでいます。ハイサイドライトから差し込む光は、季節や時間により角度を変え、空間の雰囲気も変わります。そこには、外部からの視線を遮るルーバー状の板塀で覆われた外観からは、想像もつかない明るい開放的な空間が広がっています。
差し込む光の角度で空間の雰囲気が変わるリビングダイニング。奥はテラス。
室内に光を取り込むハイサイドライト。
W邸では、テーブルやソファ、ベッドなどの他に大きな家具は見当たらず、収納棚が多く取り入れられています。「見せる収納棚が欲しい」、「生活感は隠したい」との要望から、設計段階から持ち物に合わせた収納プランニングをしています。
リビングの南西側壁面の陳列棚は、「温もりを感じるものが好き」という奥様お気に入りのアンティークのコレクションが並んでいます。置く物に合わせて奥行きを浅くしたため、壁面と一体化して見えます。棚の下には引き戸付き収納を置き、うす型大画面テレビを収納。戸を開けてテレビやDVD、CDなどをリビングシアターとして楽しみ、戸を閉めて落ち着いた雰囲気のリビングとして使っています。
また、リビングの床には落ち着いた色のナラ材を使用。他の床や柱にもムク材を使うことで、アンティークのテーブルやソファなどの趣のある家具と調和させています。
うす型大画面テレビに合わせた奥行きの収納棚。引き戸を開けるとリビングシアター、閉じるとスッキリ落ち着いた空間に。
リビング南西側壁面の裏側は、キッチンと洗面室・バスルームをつなぐ廊下。両側に、衣類やバックなどの収納棚が取られている。
W邸には、居室以外に、隠れ家的な遊び心のあるロフトや、家に居ながら太陽の日差しの下で元気いっぱいに遊べるテラスが取り入れられています。
子ども室にある階段を3段上ったところに、約3畳の広いロフトが広がります。隣接する子ども室より床面が1m40cmの高さにあり、北西側の駐車スペースに隣接する物置の上部空間を活用しています。今は、本棚が置かれ、読書スペースやお子さんの遊び場として使われています。
リビングダイニングには小さくて冒険心をそそる隠れ家のようなロフトがあります。長い階段を上ると、傾斜した天井で三角のような形の1.5畳ほどのロフトが広がります。窓からは、建物裏手の新緑や紅葉を楽しめ、天体望遠鏡で星を楽しめるスペースにもなっています。平屋なのにロフトに上がる長い階段があり、ちょっとした2階気分も味わえます。
建物の南東側にあるテラスは、リビングダイニングの窓から出入りができ、靴を履き換えずに外の空気を満喫できるスペースになっています。玄関に隣接する北西側にもテラスがあり、リビングダイニングからの視線や通風、採光の役割も果たしています。
子ども室に隣接するロフトは、W邸の図書室。ゴロ寝もできる広さが使いやすく、心地よいスペースに。
遊び盛りのお子さんも安心してのびのび遊べるテラス。積雪対策で床面よりも45cm低くしている。
所 在 地 |
: |
北海道札幌市 |
設計・監理 |
: |
湊谷みち代+大塚達也(一級建築士事務所 エム・アンド・オー) |
施 工 |
: |
丸繁 赤坂建築 |
構 造 |
: |
木造(軸組工法)平屋建て |
敷地面積 |
: |
201.65m² |
建築面積 |
: |
114.65m² |
延床面積 |
: |
101.30m²(カーポート含まず) |
竣 工 |
: |
2007年8月 |
工 期 |
: |
130日 |
工 事 費 |
: |
2,080万円(外構・設備・造作家具等含む) |
うす型大画面テレビ、IHクッキングヒーター、床埋込型フロアコンセント、照明コントローラー
オール電化