Archi-spec TOI:インタビュー[ 建築家と軒先設計 ]

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自然や人の暮らしを邪魔しない、目立たない雨樋。

「建築家 彦根明にとって、住宅の外観とは?」

インタビュアー/デザイナー:黒田 久美子(パナソニック株式会社 ハウジングシステム事業部)


樋吊りの概念が変わった

黒田
それでは内田さんに現場のお話しを伺いたいと思います。これは、偶然なのですが、こちらの施工を実際に行っていただいた板金店の方が展示会にお越しになった際に、お話しする機会がありました。
この「鎌倉の家」で初めてArchi-spec TOIの施工をしていただいた方なのですが、当初、取り付けたものの、1,000分の1の勾配で本当に排水は大丈夫なのか?という不安があったそうです。
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それで、雨の日に、わざわざ取り付け後のArchi-spec TOIの排水状態を確かめに行かれたということです。で、曲りの部分にも雨水が溜まっていないし、樋吊りの概念が変わったという嬉しいお話しをお聞きできました。内田さん、実際に現場ではいかがでしたでしょうか?
内田
そうですね。まず軒樋を吊る前に、そもそも縦樋の数が足りないのではないか?という声が板金店さんからありました。これでは軒樋から雨水が溢れちゃうよ、と。
でも、パナソニックの開発の方からは屋根面積と勾配を計算した上で、大丈夫だということで、結果として縦樋の本数が少なく、しかも目立たない位置に配することができたので、経験豊富な板金店さんも驚いていました。
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黒田
はい、当社開発部門の計算上では大丈夫だということで、ご報告さしあげました。
でも、やはり板金店さんからすれば、経験上、不安だったと思います。6mのスパンで、下げるのはたった6㎜ですからね、それは常識的概念から考えると不安になるかと思います。
だからこそ、先ほどの「樋吊りの概念が変わった」という嬉しい感想につながりました。
内田
1,000分の1の勾配で吊る、というのが板金店さんの腕の見せ所でした。吊ってからの調整が。曲りの部分も、型紙をもとに、現場で綺麗に曲げていただけました。そういう意味では、設計もさることながら現場での工夫が求められたと思います。
今回の協力先である(株)中川工務店さんからも、出隅や入隅などの加工が手間どった分、屋根の勾配なりの納まりがとても綺麗だというコメントをもらいました
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黒田
私たちも、もっと現場に寄り添ったモノづくりを目指したいと考えてまして、今回のような曲りの部分を受注生産※でお受けできるようにいたしました。

※ 勾配鼻隠し用内曲り・外曲り部材の販売を開始しました。

彦根
どこまで既製品を用意するかという中で、それでも現場の職人技というものは重要ですよね。残しておきたい部分でもある。
黒田
はい、Archi-spec TOIは、現場で職人さんが腕をふるえる商品だと思っています。
内田
縦樋も前面に落とすのではなく、裏に回して視界から隠しています。縦樋にもカラーバリエーションがあるので、塀の色と違和感なく助かりました。
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黒田
素晴らしい現場の対応力ですね。雨樋については施主様から何かご要望はございましたか?
彦根
いえ、そこはお任せいただきました。雨樋についてオーダーされる施主様はほとんどいないですね。中には、とても研究熱心な施主様がいて、防水材とか断熱材なんかに関してご要望されるということはありますが、雨樋については、まずないですね。

街並のためにも邪魔をしない外観を

黒田
建築コストの中で、施主様の雨樋のコスト感についてはいかがでしたか?
彦根
この仕上がりを実現するためには必要なコストだと考えています。むしろこの「鎌倉の家」にはお薦めしたい。 もちろん、コストを下げる必要がある場合もありますから、すべての施主様、物件にお薦めするわけではありませんが、街並や仕上がりを意識するのであれば、コストとそれに見合う仕上がりのバランスは良いと考えています。
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この「鎌倉の家」は、当初家の周りを塀で囲む計画でした。そこに造園家の荻野さんに加わっていただいて、それだけでは面白くないから、外から少しだけ中の緑が見えるようにしようというご提案が出てきました。
そうしたら施主様から、塀はもっと軽くていいんじゃないかと逆にご提案いただいてびっくりしました。結界としての何かがあればいいと。それなら、ということで、街並というものを超えて、街に緑を提供するようなエントランスにしようと。
そうしたら、前を通る近隣の方から、いつも緑を楽しませていただいてます、というお声を頂戴することもあると施主様からお聞きしました。素晴らしいお話ですよね。施主様の意識も近隣住人の方々の意識も、とにかく素晴らしいです。
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黒田
素敵なお話ですね。施主様の意識と、彦根さんの設計に関するお考え、Archi-spec TOIのコンセプト。3つがシンクロするようで嬉しいです。
彦根
建物だけではなくて、街並が美しい、外が美しい、中の暮らしが美しいということを大切にしていますので、そういう意味で異質なモノに邪魔をされたくない。目立つモノは要らない。まさにArchi-spec TOIの邪魔をしないというコンセプトと合致しますね。存在しない、目立たないということは商品としては残念だろうと思います。気づいてもらえないのだから、良いものを良いと認識してもらえない残念さというか。
黒田
いえ、それは残念ということではなく、Archi-spec TOIのコンセプトですから、そのように表現していただけることは幸せです。
彦根
住宅の設計も究極を突き詰めると、自然や人の暮らしを邪魔しないというところに行き着きます。そういう意味でも同じ方向性ですね。
黒田
そのように評価をいただき光栄です。これからも設計者様に寄り添えるモノづくりを目指してまいります。
ー今日は素晴らしいお話を本当にありがとうございました。

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