片マヒ

体の左半分、または右半分がマヒした状態のことをいいます。脳血管障害(主に脳梗塞)で脳の一部が損傷することが主な原因です。 体の左半分、または右半分がマヒした状態のことをいいます。脳血管障害(主に脳梗塞)で脳の一部が損傷することが主な原因です。

主な症状とは?

運動障害、感覚障害といった症状の他、損傷部位によって失行(運動能力はあるが目的に合った動作ができない)、失認(例えば目の機能は問題ないが情報が脳に伝わらず見えない)などの様々な症状が生じます。
※マヒ側を患側(かんそく)、マヒしていない側を健側(けんそく)とも言います。

予防と対策

片マヒとの上手な付き合い方を解説!

マヒのある機能を回復するために、リハビリや福祉用具の活用を行うと同時に、残存機能を損なわないように注意しましょう。

ポイント1バランス感覚の障害に対応する!

マヒには大きく分けて「運動障害」と「感覚障害」があります。感覚障害には「熱い」「冷たい」「痛い」といった感覚の障害のほか、「バランス感覚の障害」も含まれます。

例えば…
トイレでもバランスを崩しやすいのですが、どんな手すりを付けるかがポイントとなってきます。

「両手すりタイプ」の手すりの場合、体の傾きを支えられるため、健側でのふき取り動作になども集中しやすくなります。さらにスライド手すりの場合、はねあげタイプより手すりを動かす動作がスムーズに行えます。

ポイント2福祉用具の選定は症状・理由とあわせて理解することが大切!

例えば…
お風呂は健側から入ることが推奨されているのですが、その理由は大きく5つあります。

①健側の手で支えられるため
②健側へ体幹をひねりやすいため
③熱い、冷たいがわかるため
④足裏ですべりそうな感覚がわかるため
⑤バランスを崩しにくいため
注意ポイント
患側から入ると、運動障害のために①②を行えず、感覚障害により③④⑤が確認できないため、支障をきたします。
しかし、健側から入る場合でも患側への配慮を忘れると、事故につながる恐れもあります。
U型座面のシャワーチェアに座る場合
マヒの程度によっては、座面がU型になるだけで支えが少なくなり、体が傾きやすくなります。ましてや、浴槽またぎにも使うとなると危険です。
注意ポイント
U型部分で片足の支えが少なくなり、姿勢を崩しがちです。片マヒの場合、健側からまたぐので、バランスを崩しやすいマヒ側に傾くことになり危険です。
※奥行きが狭い座面や丸型の座面も同じです。

福祉用具で環境整備

片マヒは、症状・理由と合わせて福祉用具を選定することが大切です。

浴室

1)バスボード・移乗台を設置する
立って浴槽をまたいで入るのが危険な場合は座ってまたぐ動作を支援します。
2)浴槽台を設置する
患側の脚が引きづらく、お風呂からの立ち上がりが困難な場合は、浴槽台をおすすめします。
高低差のある浴槽は踏み台としても使えます
※上記イラストは移乗台を併用した入浴方法です
脚が引き寄せやすく立ちやすい
注意ポイント
踏み台としてだけの用途では保険適用外となることもあります。
3)すべり止めマットを敷く
バランスを崩しやすいので、足元のすべり対策にすべり止めマットを用意します。
4)(壁付け)手すりを設置する
洗い場での移動や浴槽の出入りをサポート。衣類の脱ぎ履きの際にふらつき、転倒する危険性があるので、手すりなどの支えを用意します。
5)入浴グリップを取りつける
横向きのまたぎ動作がしやすいよう、浴槽の端側に寄せて取付できるタイプがおすすめ。前向きにまたぐと、足をより高くあげなければならず、入りにくく、転倒リスクもあります。
注意ポイント
前またぎではなく横またぎにする。
6)引き戸にする
外開き戸で、後ずさりしてバランスを崩しやすい場合は、引き戸をおすすめします。
洗身自助具を使う
背中を片手で洗え、足も、かがまずに洗える長柄ブラシがあると便利です。
7)シャワーチェアを置く
座った姿勢が崩れやすいので、ひじ掛け付きをおすすめします。座奥行きが広い方が、姿勢が安定しやすくなります。
こんなシャワーチェアがおすすめ!
立って方向転換するのが危険な場合は座面回転タイプもおすすめです。

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リビング

面タイプの手すりをソファ前に置く
ソファはくつろげますが、やわらかいので座位が崩れやすく、立ち上がりもしづらいです。そこでソファでの座位保持や立ち上がり補助に面手すりが有効です。
ポータブルトイレや脱衣所に自在手すりを設置する
立位時にバランスが悪かったり、マヒ側の脚が崩れやすい(膝折れしやすい)場合は、脚の支えがあると立ち続けやすくなります。
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玄関

玄関に玄関用自在手すりを設置する
マヒの状態によっては、昇るとき・降りるとき、どちらも健側に手すりがある方がよいのですが、必ずしも両手すりの環境ばかりではありません。片手すりで健側を支えながら、後ろ向きに降りる方が動きやすい場合もあります。
片マヒの方が前向きだと降りにくい理由
昇りの際、
健側に手すりを設置
降りるときに持ちづらくなるため
下りの健側に手すりを設置
(患側から降りた場合)
患側から足を降ろしたとき、連合反応で、内股で着地しがちになるため
下りの健側に手すりを設置
(健側から降りた場合)
健側から足を下ろせる場合でも、患側が降ろしづらくなるため
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トイレ

トイレ用手すりを設置する

便座は穴があいている分、体が傾きがち。トイレ手すりは工事しないで設置でき便利です。

壁手すりでは、手を放すとマヒ側に傾きがち
トイレ手すりなら体があずけられるので健側が自由に
スライド手すり機能は手すりを戻しやすい
注意ポイント
便座の上ではお尻や太ももを支える面積が少ないのでマヒ側に体が傾きがち。そのため、L字手すりだけだと、拭取り時は手すりをつかめず体がマヒ側に傾いてしまいます。

ヒヤリハット事例

片マヒは、お尻・太ももの支えが少ないと、バランスを崩しやすくなります。

入浴において①

Aさんは大柄な方で、片マヒにより移乗は全介助でした。入浴用イスに介助者が移乗さしあげたとき、イスの中央に座れずにほんの数センチマヒ側のお尻、太ももが座面からはみ出た状態でした。介助者が座り直し介助を後まわしにして、車いすを先に片付けようとした瞬間、Aさんはイスから傾き、危うく転落してしまうところでした。

入浴において②

施設で暮らしているBさんは片マヒにより、入浴時は移乗も洗身も全介助でした。いつも使っている入浴用イスが修理に出されているので、代わりのイスに座っていただいたのですが、常にBさんの体が前や横に傾き、ひやひやしながらの介助だったそうです。後でわかったのですが、座面がU型で、背もたれ角度がほぼ垂直だったことが座った姿勢が保ちづらい原因でした。
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座面のサイズと、座奥行のサイズは異なります。背もたれの位置によって深く座れるかどうか変わってくるので要注意です。

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トイレにおいて

先ほどの大柄の男性、Aさんのトイレでのお話。Aさんは座って排尿するのですが、手で自分の排尿の向きをコントロールできず尿を前にこぼし、ズボン・パンツを汚してしまうことがありました。原因は、便座の上で姿勢が崩れるので、怖くて手すりから手を放せなかったことにありました。それに気づいた介助スタッフが、倒れやすい側にイスやクッションで支えをつくると、以降は健側の手で尿の向きをコントロールできるようになりました。

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