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住まいづくりで避けて通れない「契約」。土地探しや建物は入念にチェックしたものの、肝心の契約内容の確認を怠り、仲介会社任せにした結果、後で、「こんなはずではなかった」と後悔しないようにしたいもの。そこで、不動産売買に伴う最低限知っておきたい法律の基礎知識をご紹介します。「契約は交渉ごと。業者が一方的に内容を決めるものではなく、当事者双方で作り上げていくもの」と力説し、法務省法制審議会委員などを務め、不動産関連法が専門の早稲田大学法科大学院教授の鎌野邦樹氏にお話を伺いました。
不動産仲介会社などに家探しを依頼するときには、売主を探してくれる媒介契約を結ぶことになります。 一言で媒介契約と言っても「専属専任媒介」、「専任媒介」、「一般媒介」の3つの種類があり、それぞれに条件が異なるため、自分の状況にあった媒介の契約を結ぶことが大切です。
媒介契約の3つの種類は、言葉にも表れているように、物件を探す方法に直接関わってきます。
「専属専任媒介」は、1社の仲介会社に任せ、自分では探すことができない一番縛りのきつい契約です。
「専任媒介」は、自分で探すことはできるものの、仲介会社は1社に限定されます。
「一般媒介」は、自分で探すことも仲介会社に探してもらうことも自由にでき、別の仲介会社とも契約が可能です。仲介を頼む場合には、どの種類の契約なのかをきちんと確認することが必要です。
共通 | 依頼者の義務 | 業者の義務 | |||
---|---|---|---|---|---|
他業者への依頼 | 自己発見取引 | 業務処理の 報告義務 |
指定流通機構への 登録義務 |
||
専 属 専 任 |
有効期限は 3ヵ月以内 |
重ねて依頼することができない | 認められない *自分でも相手方を探した場合でも、当該宅建業者に媒介を依頼することになります |
1週間に1回以上 | あり *レインズ(契約の相手方を検索するための業者間の情報ネットワークシステム)への登録義務です 登録をした業者は、登録を証する書面(登録済証)を依頼者に引き渡さなければなりません |
専 任 |
認められる *この場合、業者は媒介契約履行のために要した費用の償還を請求することができます |
依頼された業務の処理状況を2週間に1回以上文書で報告する | |||
一 般 |
重ねて依頼することができる | 認められる | 義務はなし | 原則なし |
有効期限について:一般媒介契約については法律に基づくものではなく、標準媒介契約約款により定めているものです。
※『不動産売買の手引き』((財)不動産適正取引推進機構発行)より
買い替えで家を売る場合も同様です。中でも、「専任専属媒介」、「専任媒介」で契約した物件情報は、オンラインネットワーク(レインズ)への登録が義務付けられているなどのメリットもあります。
また、「専任専属媒介」、「専任媒介」の契約を結んだ仲介会社は、依頼主に経過報告をする義務を負います。前者は1週間に1回以上、後者は2週間に1回以上です。
媒介契約の報酬は、媒介契約の種類ではなく、物件の取引額から決まります。自分にあった内容の媒介契約を結ぶことが、物件探しのカギを握っています。
※『不動産売買の手引き』((財)不動産適正取引推進機構発行)より
契約書にサインをする前に、納得がいくまで何度でも確認をしたい「重要事項説明書」。
契約の前に重要事項の説明を受けたり、文書(重要事項説明書)でその内容の確認をしていますか?
売買契約書にサイン(署名・捺印)をする前にしておくべき点はいくつかあります。契約後に思いもよらないアクシデントに見舞われないためにも、重要事項説明は納得のいくまで確認をし、不明な点がある場合には、契約日を改めるなどして一つひとつ確認をすることが重要です。
不動産仲介会社には、対象物件の契約に関する重要事項の説明が義務付けられています。それができる人も宅地建物取引主任者の資格を有する人に限られています。
契約の前に必ず行われる説明に「重要事項説明」があり、書面でも渡されます。そこには、該当物件の登記簿上の権利関係をはじめ、法令上の規制や瑕疵(かし)担保責任、契約解除に関する取り決めなどの重要な事項が掲載されています。
説明を聞いたからといって、売買契約をする必要はありません。繰り返しになりますが、重要事項説明は契約の前に不明点を残さずにしっかり聞き、わからないことは、わかるまで聞き、十分に納得をした上で売買契約を結びます。
※『国土交通省ホームページ』より
重要事項説明書以外には、登記簿(もしくは、謄本・抄本)に記載された事項がいつの時点のものか、抵当権なども確かめる必要があります。 マンションの場合は、管理規約の確認も必要です。
その上で十分に納得したら、いよいよ契約です。売買契約書は仲介会社が予め契約書を作成してきますが、契約は交渉ごとです。契約書を渡されてもそれに従う必要はありません。
買主の都合で契約内容を変更することも可能です。購入代金の支払い方法もそうですが、自分がどうしてこの物件が欲しいのか、どうしてこの地域なのかといった、購入決定を左右するような希望などは、しっかりと契約書に明文化しておくことが大切です。後になってトラブルが起こったときなど、効力を発揮する場合があります。
金銭的負担を伴うキャンセル。契約は慎重にしたいもの。
基本的には、契約をした時点でその契約内容に基づいて拘束されます。そうなると自分勝手にキャンセルすることはできません。そのためにも契約は慎重にしなければなりません。
ただし、詐欺にあったなどの法律に規定されるような正当な事由があった場合にはキャンセル(契約の取り消し)が可能です。多くの場合、契約後にキャンセルができるかどうかは、契約時に支払う「手付」の種類で決まってきます。「手付」の種類を確認しておきましょう。
◎解約手付
契約後、契約内容を実現する前なら、手付金を渡すだけで契約解除は可能。
◎違約手付
契約当事者の一方に契約違反があった場合のペナルティー、損害賠償額として交付される金銭。
◎証約手付
契約が結ばれたことの証として交付される金銭。
売買契約時に買主が支払うお金に手付と呼ばれる、「解約手付」、「違約手付」、「証約手付」の3つの種類があります。それぞれに性格が異なり、「解約手付」の場合は、自分の都合で買主が支払った手付金を放棄すればキャンセルは可能です。逆に売主の方も受け取った手付金の倍返しをすればキャンセルできる手付倍返しもあります。
手付も重要事項説明の書面や契約書に記載されています。支払うお金が単なる申込金なのか、手付なのか、キャンセルできるのか、そのつど、チェックすることが大切です。
解約手付を支払っていたからと言って、自分の都合でいつでもキャンセルできるのかというとそうではなく、「履行に着手するまで」と民法に定められています。
代金を全額支払っているような状況では履行に着手したと判断されます。逆に売主の方も買主に鍵を渡した、不動産を引き渡したとなると履行に着手しているので、その段階になって仲介会社側からの勝手なキャンセルもできません。一般的には、売買契約書に○月○日までと契約解除可能な期間が記載されています。
もちろん、家が壊れたり、契約違反だったりなどの場合は、重要事項説明書や売買契約書に記載されていなくても解除できます。
買う物件の契約が先行して、自分の家が思うような値段で売れないような場合もあります。予め、買い替えを条件に売買契約をします。重要事項説明書と売買契約書に、「自分が○月○日までに、○○円以上で売れなければ、新たな家の購入契約は解除します」と条件を明示して文書化しておきます。
購入決定に欠かせない条件や避けたい条件はハッキリ伝え、文書化を。
原則は、契約したらそれに拘束されますので、売買契約の解除は難しいと思います。仲介会社が応じてくれれば可能ですが、そうでない場合には、裁判で争うことになります。いくつかの判例はありますが、裁判官が幽霊話に耳を傾けてくれるのかどうかは難しいのが現状です。そうならないためにも、慎重な売買契約が重要になってくるのです。
過去に判例で、「自分の買った部屋で1年前に自殺者がいたのに、それを仲介会社が告げなかった」という錯誤の場合にキャンセル(契約無効)が認められたケースがあります。その基準は、「もし、そんなことを聞かされていれば買わなかった」というものです。それも裁判官により、非常に曖昧な基準になっています。
裁判などのリスクを負わないためにも売買契約時に対処することで回避も可能です。自分が欲しい物件の条件、避けたい条件などの意思表示をし、重要事項説明書や売買契約書に盛り込んでおくことです。そうしておくと、仲介会社が買主の買う目的を知っていながら、告げずに売ったとなると、責任を問えます。
※自殺者などの告知義務は、一般的にはその次に購入する人を対象としています。数回、持ち主が変わったような場合は、溯っての告知義務はありません。
幽霊話以外にも、購入したマンション内にトラブルを起こしそうな団体や、迷惑行為をするような人がいないかは、意識的にチェックしたほうがいいと思います。入居してからでは遅いので、仲介会社に確認を依頼しましょう。仲介会社はマンションの管理会社や管理組合理事長などに確認をして情報を集めてくれます。 特に両隣と上下階の部屋に、非常に音に敏感な人がいないかどうか、トラブルの元になりそうなことはできる限りの確認をし、仲介会社に念をおしておくといいでしょう。これらは、隠れた重要事項です。 トラブル確認は、プライバシーで隠されるものではなく、事実なので教えてもらえる部分です。限界はありますが、できる限り仲介会社に調べてもらうと安心です。