
事例から学ぶケアマネに好かれるコツ
「うちの事業所はケアマネジャーとも仲が良いし、信頼されているはず!」と思っている福祉用具相談員の皆さん。その信頼、本当に“データ”で裏付けられていますか?
いくら日頃のやりとりがスムーズでも、実際にどれくらい自社の福祉用具貸与サービスが採用されているかを把握していなければ、信頼の実態は分かりません。そこで注目したいのが、「利用割合」です。
利用割合とは、居宅介護支援事業所が、利用者のケアプランに組み込んだサービスのうち、同じ事業者によって提供された割合※のことです。 つまり、この数字を見れば、ケアマネがどれくらい自社の福祉用具を選んでいるのかが分かります。
※「過去6か月間に作成したケアプランにおける
同一事業者によって提供された各サービスの割合」とは?
居宅介護支援事業所が、過去6カ月に作成したケアプランに組み込んだ
①訪問介護 ②通所介護 ③地域密着型通所介護 ④福祉用具貸与(販売)
のサービスのうち、同じ事業所によって提供された割合のこと。
「公正中立なケアマネジメントのための取組みの一環」として2021年に利用者説明が義務化された取り組み。2024年に努力義務となったが、引き続き行うことが望ましいとされている。
公正中立な立場にあるケアマネジャーは、特定の事業所に偏って仕事を頼んでいるわけではありません。しかし、「利用者支援がよりスムーズに進む」という理由で、無意識に特定の事業所を選ぶことは十分に考えられます。それに、「そちらより、こちらの事業所の方が利用者視点に立っているから、優先しています」なんて、面と向かってはなかなか言えませんよね。
だからこそ、こうした言葉にされにくい部分を「利用割合」 でこっそりチェックして、言葉にされにくく外からは見えづらい、居宅事業所と福祉用具事業所との関係の深さや依頼の傾向を知ることができます。 次の章では、その確認方法を詳しく解説していきます。
「利用割合」を知るためには、厚生労働省が運営する『介護サービス情報公表システム』 を活用するのが一番簡単な方法です。
「介護サービス情報公表システム」とは?
利用者が介護サービスや事業所を比較・検討して適切に選ぶために、全国の介護サービス事業所の詳細情報を、インターネットで自由に検索・閲覧できるシステム。
居宅介護支援事業所の項目の一つに「前6ヶ月間に作成したケアプランにおける同一事業所によって提供された各サービスの割合と事業所名(上位3位まで)」があり、ここをチェックすることで、お付き合いのあるケアマネ事業所が主に利用している福祉用具事業所のベスト3を見ることができます。
1.厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」にアクセス
インターネットで「介護サービス情報公表システム」と検索すると、公式サイトが表示されます。
2.調べたい地域と事業所の種類を選ぶ
調べたい都道府県をクリックし「介護事業所を検索する」を押す
キーワード検索で調べたい居宅介護支援事業所名を入力して「検索」を押す
調べたい居宅介護支援事業所が出てきたら「詳細情報を見る」を押す
3.「サービス内容」の欄をチェック
「事業所の詳細」→「サービス内容」を選び、下にスクロールしていくと
「過去6か月間に作成したケアプランにおける同一事業者によって提供された各サービスの割合」が表示されます。
上位3位までの事業所名が公開されており、自社がランクインしているか、他によく使われている事業所がどこかを知ることができます。
※こちらの記入は義務ではないので、事業所によっては空欄になっている場合もあります。
上位3位にランクインしていた!
自社が3位以内に入っていたら、ケアマネジャーさんに大きく評価されていると思っていいでしょう!おめでとうございます。自社の強みを生かしつつ、さらなる連携を目指しましょう。
残念ながら、ランクインしていなかった!
もっと信頼されていると思っていたのにそうではなかった…事業所の方も、がっかりすることはありません、信頼されている事業所の良いところを見習い、さらにより良くするチャンスと受け止めましょう!
サービス情報公表システムで「利用割合」をチェックすると、特定の事業所が多くのケアマネから選ばれていることに気づくかもしれません。その事業所は、なぜ信頼を得ているのでしょうか?単に「昔から付き合いがあるから」ではなく、ケアマネが求めるポイントをしっかり押さえている可能性も高いかもしれません。
①迅速かつ確実な対応ができる
②わかりやすい情報提供をしている
③請求や書類作成のミスが少ない
④コミュニケーションが円滑で、柔軟な対応ができる
「なぜその事業所が選ばれているのか?」を分析する
自社に取り入れられる工夫を見つける
この「利用割合」をチェックすることで、もう一つわかることがあります。それは、その居宅の依頼が特定の福祉用具に集中しているのか、あるいはたくさんの事業所に分散させさせているのかの傾向です。居宅事業所の傾向を知ることは、戦略的なアプローチにも役立ちます。
特定の事業所に依頼が集中している可能性があります。信頼できる事業所があると、そこに依頼することが多いかも知れません。「福祉用具事業所に求めているもの」がはっきりとしている可能性があります。
一点集中タイプの居宅と信頼関係を築く際のポイント
上位に入っている福祉用具事業所の強みポイントを自事業所にも取り入れましょう。勉強会などで交流する機会があれば、業務でどのようなことに気を付けているか、など参考にしてみるのも良いかも知れません。トップシェアの事業所にはない、自社の特徴やサービスをピンポイントでアピールすることもできます。
ケースよって事業所を使い分けている可能性があります。たくさんの事業所と付き合いがあるので、強み弱みなどの特徴をよく知っているかも知れません。自事業所が 「強み」と思っているところがあれば、そこを評価して依頼してくれている可能性も。他にはない用具の取り扱いやサービスなどをアピールしてみるのもいいでしょう。
多方面対応タイプの居宅と信頼関係を築く際のポイント
「ケース別の福祉用具依頼例」について尋ねると参考になる意見をもらえることもあるでしょう。理にかなった依頼をしていることもあり、取り入れることで大きなスキルアップへつながるチャンスになる可能性もあります。
福祉用具事業所として「ケアマネと関係が良いから信頼されている」と思っていても、実際の利用割合を確認すると意外な結果が出ることもあります。しかし、落ち込むことはありません、自分たちの強み、そして足りないところを知ることがサービス向上の第一歩だからです。
ケアマネがどの事業所を信頼しているのかが分かる
自社がどの程度選ばれているのかを客観的に確認できる
居宅の依頼傾向や福祉用具事業所に求めているものの傾向が分かる
上位の事業所の特徴を学び、自社の強化ポイントを見つけられる
大きく信頼されている事業所の良いところを取り入れる
自分たちの強みを知り、さらに伸ばしていく
ケアマネジャーが「どのように事業所を使い分けているか」を知り、足りないところがあれば取り入れる
利用割合を知ることは、自社を成長させる大きなチャンスでもあります。数値を通じて現状を把握することで、自分たちの強みをより活かし、足りない部分を補うヒントが得られるからです。
大切なのは、結果をただ受け止めるのではなく、『では、どうすればさらに信頼される事業所になれるか?』と前向きに考えることです。
また居宅介護支援事業所のサービス依頼の傾向を知ることで、ケアマネジャーが求めるものを理解し、よりスムーズな支援につなげていくこともできます。利用者にとっても、ケアマネにとっても、そして自社にとっても、より良いサービス提供が可能になります。
今回のことをきっかけに、さらなるサービス向上を目指していきましょう!