
事例から学ぶケアマネに好かれるコツ
ケアマネジャーは、さまざまな利用者を担当している中で、「このケースでは、福祉用具貸与って使えるの?」と迷うことがあります。利用者の生活環境や施設、サービスの状況によって、使えるかどうかが変わるため判断に困ることも。そんな時に、ちゃんと説明して一緒に解決してくれる福祉用具専門相談員がいると、とても頼もしいですね。今回は、福祉用具貸与の判断が難しいケースをいくつか紹介しつつ、注意すべきポイントを解説します。
ポイントその1
現場のケアマネジャーから寄せられた質問から、ケアマネジャーの疑問や理解のポイントについてご紹介します。
居宅介護支援事業所の変更で引き継いだケースです。
小規模多機能のショートステイ内で使うために徘徊感知機器をレンタルしていたようです。こちらは基本NGですよね。
さらに、ショートステイ先の近くに親戚の家があり、そこで特殊寝台をレンタル。こちらはケアプランに記載する必要ありますか。 今後、ご家族様の理解を得ながらどのように整備していこうか悩んでおります。。。
ケアマネの疑問:
小規模多機能型居宅介護のショートステイ利用時に、そこで徘徊感知機器のレンタルは可能なの?
理解のポイント:
小規模多機能型居宅介護は、通い・泊まり・訪問のサービスとケアマネジメントを包括的に提供していますが、福祉用具貸与や住宅改修も一緒に使えます。ただし、介護保険の福祉用具貸与は、あくまで居宅での日常生活を支援する目的で提供されるものなので、ショートステイでの利用を目的とした福祉用具貸与は不適切とみなされる可能性があります。
ショートステイ時のみ徘徊感知機器が必要であるなら、小規模多機能型居宅介護事業所側が用意すべき設備とみなされます。居宅と小規模多機能の両方で同じ徘徊感知機器を使用したいというニーズがある場合は、ケアマネジャーとともに保険者の判断を確認するとよいでしょう。
ケアマネの疑問:
自宅ではないが親戚の家でも介護ベッドをレンタルできる?
理解のポイント:
介護保険の福祉用具貸与は、原則として居宅=「日常的に生活を送る場所」での使用が前提です。ケアマネジャー等による適切なアセスメントの結果、親戚の家が「居宅」として保険者に認められないと、介護保険での算定は難しいでしょう。
一方で、住民票や介護保険証に記載された住所ではなくても、居宅として認められる場合もあります。ケアマネジャーとともに保険者に確認し、適切な利用につなげられるとよいですね。
有料の共有部での福祉用具住宅型貸与について教えてください。
オープンな作りの有料で、本人が玄関先で転倒。ホームから、転倒しないよう手すりを玄関侵入ガードのように設置したいから貸与してと言われました。
正直本人の居室内でもなく、共有部での転倒防止で、ほかの方も使うのに?!と施設側で考えるべきなのではと思います。 実際に廊下や玄関など共有部に手すりなど貸与することはありますか?
ケアマネの疑問:
住宅型有料老人ホームの共用廊下に転倒防止の手すりを設置したいと言われたが介護保険適用は可能?
理解のポイント:
介護保険の福祉用具貸与は、利用者本人が使うものです。住宅型有料法人ホームとはいえ、共用部分は他の入居者も使うため、「施設の設備」と見なされて介護保険では貸与できません。ですが「福祉用具専門相談員が相談に乗りますよ!一緒に転倒防止の方法を考えてみませんか?」と多職種連携での検討につなげられるとよいですよね。
ロングショートステイの利用を開始になる利用者が、ショートステイの間、福祉用具も貸与することは可能でしょうか?特養側は、大丈夫だと言っています。
ケアマネの疑問:
長期間(30日以上連続で)ショートステイを利用する場合、福祉用具貸与は可能?
理解のポイント:
ショートステイサービスと福祉用具貸与はそれぞれ「居宅サービス」のため算定の制限はありません※。
ただし、ショートステイ内への福祉用具の持ち込みや、ショートステイ利用中の福祉用具貸与費の算定については、注意が必要です。
※算定基準の留意事項通知 通則 2サービス種類相互の算定関係について
<前提となる運営基準>
・貸与された福祉用具は、利用者の居宅において利用されるものである。
・短期入所生活(療養)介護事業所は、短期入所生活(療養)介護を提供するために、必要な設備及び備品を備えなければならない。
※居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生労働省令第37号)第193条、124条
この前提から、原則としてショートステイへの福祉用具の持ち込みはできない、と明示している自治体もあります。
▼例
鉾田市 https://www.city.hokota.lg.jp/page/page002031.html
行方市 https://www.city.namegata.ibaraki.jp/page/page013506.html
算定基準※上では、短期入所と福祉用具貸与の間に特段の算定制限はありませんが、これはショートステイ利用前後の短期間に一度福祉用具を返却し再度搬入することが不合理であるため、算定が認められているものとされています。
※指定居宅サービスに要する費用額の算定に関する基準及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号)第二通則(2)
その為、ショートステイを長期継続利用する場合には、短期入所生活(療養)介護利用中の福祉用具貸与費の算定が認められないことがあります。この長期利用の考え方については、自治体ごとに異なるので注意が必要です。
▼QAに寄せられたあるケアマネジャーからのコメント
我が市では、16日以上ショートステイ利用の場合は、福祉用具貸与の介護請求はできないと言うローカルルールがあり、直ぐ隣の市では1日でも在宅していれば福祉用具貸与算定可とのローカルルールがあります。
居宅に戻ることなくショートステイ利用を長期継続する予定の方やそのケアマネジャーに対しては、あらかじめ福祉用具貸与の条件について説明し自費レンタルのご提案をするのもよいでしょう。
また、サービス提供区域の自治体ごとのローカルルールも把握しておきましょう。
ポイントその2
福祉用具貸与サービスは、居宅サービスの一つとして「利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じた日常生活を営むことができるよう」提供されるサービスとして定義されています。
※居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生労働省令第37号)第193条
一方、介護老人福祉施設や老人保健施設、介護医療院等の施設サービスは、居住空間や介護設備が施設のサービスの一環として提供されるため、施設内で使用する特殊寝台や車いすなどは施設側が用意すべき備品とされています。施設利用者本人に負担させてもいい費用については、別途定められています。
参考)通所介護等における日常生活に要する費用の取扱いについて(平成一二年三月三〇日)(老企第五四号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4395&dataType=1&pageNo=1
https://www.mhlw.go.jp/content/001409305.pdf
上記のことから、施設サービスを受けている方は居宅サービスである福祉用具貸与の利用ができないのです。一時外泊などで、ご自宅で福祉用具を使用したいといった場合は、自費レンタルをご提案するとよいでしょう。
高齢者の住まいの選択肢は、介護老人福祉施設などの施設のほかにもグループホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などさまざまなものがあります。施設の運営形態やサービス利用形態によっても、福祉用具貸与が利用できるのかどうかも変わってきます。
以下の表は、老人ホームのおおまかな区分とサービス提供方法、福祉用具貸与の利用の可否を示したものです。以下の条件に当てはまらない施設もあるため、個別に確認が必要です。
介護付き有料老人ホーム(有料老人ホームのうち、特定施設入居者生活介護の指定を受けたもの)
施設内で提供される介護サービスが包括されるため、居宅サービスとしての福祉用具貸与は利用不可。※
住宅型有料老人ホーム(有料老人ホームのうち、特定施設入居者生活介護の指定を受けていないもの)
外部の介護サービスを利用する形態のため、福祉用具貸与が利用可能。
サービス付き高齢者向け住宅
運営形態によって異なるが、外部の居宅サービスを利用する形態であれば福祉用具貸与も利用可能。
認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)
福祉用具貸与サービスは利用不可で、必要な福祉用具は施設のものを使用。※
※介護付有料法人ホームや認知症グループホームでは、基本的には福祉用具貸与費は算定できませんが、居宅の利用者がショートステイとして利用する場合は、福祉用具貸与の算定が可能。
ポイントその3
ケアプランに適切に福祉用具貸与が位置づけられているか?
居宅での使用が前提となっているか。ショートステイ先やデイサービス内だけで使用することになっていないか。
利用者の主たる生活の場はどこか?福祉用具の利用場所はどこか?
在宅か施設かで適用可否が変わる。
施設でも継続的な居住か短期の利用かどうか?
ショートステイなら貸与可能なケースも。
入所施設の運営形態は?
有料老人ホームの場合「外部サービス利用型」であれば貸与可能だが、「包括型」だと不可。
利用者や家族から直接介護保険が適用されるかどうかについて問い合わせがあっても、安易に回答しないようにしましょう。まずは担当のケアマネジャーと状況確認し、認識のすり合わせをしましょう。
また、福祉用具貸与の適用範囲は、解釈が分かれる場合があります。ケアマネジャーと相談しながら、必要に応じて保険者(市町村)に確認するなど慎重な対応を心がけましょう。サービス提供地域が複数の自治体にまたがっている場合は、ローカルルールの確認と情報共有を図っておくとよいでしょう。
曖昧なまま貸与を進めると、後から「保険請求不可」となるリスクも。利用者に不利益が生じないよう、確実な判断を行いましょう。
福祉用具貸与は、使用する用具や利用者は同じでも、使用場所や目的によっては介護保険の適用の可否が分かれる場合があります。その判断には、「在宅か施設か」「短期利用か長期利用か」「特定施設の運営形態」など、様々な要素が絡みます。ケアマネジャーからの相談に対して的確に回答できるよう、基本ルールを押さえ、必要に応じて保険者へ確認することが大切です。
専門知識と根拠に沿った適切な判断と連携で、ケアマネジャーが迷ったときに頼りになる福祉用具相談員を目指しましょう!