
事例から学ぶケアマネに好かれるコツ
ポイントその1
介護保険を利用する方の中には、急に介護用ベッドが必要な状態となり「介護認定結果が出るまで時間がかかり待てない」「軽度者だが退院に合わせて急いで用意したい」という状況が起こる場合があります。こうした場合、比較的安価に利用できる軽度者用の「自費レンタル」サービスが選ばれることも少なくありません。しかし、要介護2以上となり介護保険が適用となったタイミングで、利用者や家族から「なぜ費用が高くなるのか」「なぜ自費サービスのままではだめなのか」といった疑問や不満が生じてしまうこともあるようです。この記事では、こうしたトラブルを防ぎ、円滑な切り替えを実現するためのポイントを解説します。
ポイントその2
軽度者用の自費レンタルサービスから介護サービスへの切り替えについてのあるケアマネジャーからの投稿をご紹介します。
現在担当している利用者の件で相談させてください。この利用者は1年前、腰痛が悪化し一時的に布団からの起き上がりが困難となり、地域包括支援センターにベッドの相談をされ、要支援1だったため自費でベッドをレンタルされていました。 その後、転倒により大腿骨頸部骨折で入院した時に区分変更をされ要介護の認定が出る見込みで、退院時から私が担当することになりました。
退院後、認定結果が要介護2で出たのですが、この方は介護保険の2割負担だったため、ベッドの利用料が自費で1,500円だったところ、介護保険適用だと約3,000円に増えることに…。ご家族から「介護保険を使ったら高くなるなんて納得できない。ベッドを変える必要を感じない」と不満を示され対応に困ってしまいました。たしかに、今のまま自費の2モーターでも動作には支障はないようです。
同じような状況に直面された方はいらっしゃいますか? また、このような場合、どのようにご利用者やご家族に説明されているか、ご経験やアドバイスをいただければ幸いです。
「自費ベッドの貸与」のルールが その福祉用具事業所にはあるはずです。 (多分説明してるだろうけど) そして、そもそも論ですが 介護保険でベッドが使えない方のために 自費ベッドを準備していることが本来の姿だと思います。
昨今、自費が月1000円以下のところが増えて、介護保険の自己負担の方が高くなってしまい説明が難しくなってしまってます。そのため自分は、自費を避けるため軽度者の特例が使えるか医師に確認してから自費にするようにしています。
違う話かもですが、仲良くしている福祉用具さんから「うちの自費サービス使っていた人が介護保険になったとたんケアマネジャー所属法人系列の業者に切り替えられた!ひどい」と嘆いていました。福祉用具さんも大変ですよね
この投稿に出てくる利用者さんは自己負担が2割だったため、介護保険適用になったとたん負担が増えてしまいました。費用負担の変化にとまどった利用者・家族の不安や怒りの矛先がケアプランを作成するケアマネジャーに向かってしまうという懸念があります。
このようなトラブルの背景を介護保険の変化や利用者、ケアマネジャーの視点から考えてみたいと思います。
介護保険の変化
介護保険制度が始まった当初は、一律「1割」負担でサービスを利用でき、軽度者用の自費レンタルも「1割負担」に準じた料金設定だったため、利用者にとって、介護保険サービスと自費レンタルの間に大きな費用の差は意識されていませんでした。しかし、平成27年8月から「2割」負担の区分が導入され、さらに平成30年8月から現役並み所得者に対して「3割」の負担が課せられるようになりました。この負担割合の違いにより、利用者の所得によって介護保険サービスへの切り替え時に費用のギャップが生じるようなったという背景があります。
利用者側の視点
・「介護保険サービスなのに、自費より高くなるの?」と2割・3割負担の利用者にとって自己負担分が増えることへの不満
・「自費レンタルで満足していたのに、どうして変えないといけないの?」とサービスの切り替え自体に納得ができない
ケアマネジャーの視点
・福祉用具貸与の算定条件(介護ベッドは要介護2からなど)や負担割合の違いなどをわかりやすく説明することが難しい
・自己負担の増加やサービスの変更で、利用者や家族からの反発、不信感につながらないか心配
・福祉用具の自費サービスのルールや導入経緯をよく知らないので説明しづらい
サービスの切り替えプロセスにおけるトラブルの根底には、自費レンタルと保険レンタルの仕組みや違いについての理解不足があるといえそうです。
ポイントその3
福祉用具相談員として、以下の3つの段階で対応を進めることが効果的です。
福祉用具のレンタルを自費で始める際、利用者やそのご家族にとって「どうしてこの費用になるのか」「将来的に変わる可能性はあるのか」といった疑問が残ることがあります。ここでは、事前の説明を強化するために押さえるべき3つのポイントをご紹介します。
<将来的な保険切り替えの可能性についての説明>
軽度者用の自費レンタルから利用が始まる場合も、利用者の状態や要介護度が変わることで、将来的に介護保険でのレンタルへ切り替えが必要になることを導入時点で説明しておきましょう。この際、費用負担や契約内容が変わることもわかりやすく伝えることが大切です。例えば以下のような説明が効果的です。
「この自費レンタルは要支援~要介護1までの方がご利用いただけるサービスです※。将来的に状態が変化し要介護2以上の認定を受けた場合は、自費サービスは終了となります。介護保険のサービスをご利用の場合は負担割合に応じて費用負担が変わる可能性がありますので、適宜ご相談させていただきます。」
このように具体的な言葉で、利用者が今後の変化を予測できるように伝えることで安心感が生まれます。
※軽度者用自費レンタルサービスは事業所によってルールが異なる場合があります。
<自費レンタルの条件についてわかりやすく説明>
自費レンタルは保険適用外のため、契約条件が介護保険レンタルと異なることを明確にしておく必要があります。たとえば、解約条件や最低利用期間、メンテナンス対応の有無について触れておくとよいでしょう。
「自費レンタルでは、1か月単位の契約となり、解約の場合には○日前の通知をお願いしております。また、保険レンタルと違い、一部の故障や交換については別途費用をご負担いただく場合がございます。この点についても随時ご相談ください。」
条件が利用者にとって不利になる部分があれば、早い段階で説明しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
<介護保険適用時のメリットも伝える>
自費レンタルにはない介護保険レンタルのメリットも示すことで、利用者に納得してもらいやすくなります。例えば、以下のような例を使うと理解が深まります。
「自費レンタルは一時的に使用する必要最低限のセットで交換や修理には別途費用が発生する場合があり、入院などで使用していない期間も料金は発生します※。一方で介護保険でのレンタルでは選べる商品や組み合わせが増え、交換やメンテナンスもサービス料金に含まれているという違いがあります。これらのサービス料金のうち〇割が介護保険から給付され〇割が自己負担となるため、利用料金は〇円になります」
メリットを具体的伝えたり、費用説明は数字で示したりすることで、利用者のイメージが明確になり、信頼感が増します。
※自費サービスのルールは各事業所によっても異なります。
<切り替えプロセスの情報共有で連携力アップ>
福祉用具の自費レンタルから保険適用への切り替えは、ルールや手続きが複雑であることから、ケアマネジャーが全てを把握しているとは限りません。そのため、福祉用具相談員から正確な情報を提供し、共通認識を持つことが重要です。
たとえば、以下のような取り組みを行うと効果的です:
・具体的な資料の共有:自社の自費サービスのルールや、介護保険適用の条件、軽度者の例外給付などの情報を簡潔にまとめた資料があると、いざ切り替える時にもケアマネジャーと認識共有の上対応するのに役立ちます。こうした情報共有により、ケアマネジャーとの連携がスムーズになり、利用者対応の信頼感が高まります。
・利用者ごとの状況説明:現任のケアマネジャーが担当開始する前に自費サービスが導入された場合や、担当ケアマネジャーの引き継ぎがあった場合は、福祉用具担当からも自費サービスの導入の経緯や見通しについて説明しておくとよいでしょう。自費サービスをきっかけに、利用者の課題やニーズを共有し、その他の福祉用具や住環境についての提案につなげていきましょう。
<予想される利用者の反応に備えた対応策の検討>
現場では、一回の説明では十分ではない方、以前の説明を思い出すのに時間がかかる方、導入時の説明の場にいなかった家族の介入、など様々な利用者さんやご家族の状況への対応が求められます。特別に配慮が必要そうなケースこそ、ケアマネジャーと協力して対応策を検討しておくことが肝要です。
具体例として:
・利用者の生活背景の把握:ケアマネジャーが生活背景を把握している場合、利用者やご家族への対応に必要な配慮や事情について聞いておくことで、誰にどのように説明することで理解が得られそうかイメージをもって説明に臨むことができます。
・ケアマネジャーと説明タイミングを合わせて説得力を強化:たとえば、利用者のご自宅での訪問時や担当者会議の場を活用して、一緒に説明を行うことで説得力が増します。ケアマネジャー自身も自費サービスから介護保険への切り替えについては説明がしづらいと感じることもあります。説明のタイミングを合わせそれぞれの立場から適切な補足説明を加えることで、コミュニケーションの齟齬を防ぎ利用者の理解を深められるでしょう。
自費サービスのみを利用している場合、利用者の介護認定情報をどのように把握していますか?
自費サービスの利用者が要介護2以上になると、介護保険レンタルへの切り替えが必要になるため、認定情報の確認が欠かせません。介護保険利用者はもちろんですが、自費サービスのみではとくに自ら行う必要が出てきます。いつのまにか要介護2以上になっていた、状態が変わって区分変更申請が行われていたといった場合、タイミングを逃すと利用者や家族への説明がますます複雑化してしまうため、事前に把握しておきたいところです。また、負担割合も前年度の所得が変化した場合は変わる可能性があるため注意しましょう。
認定更新時期は、新たなニーズを把握するタイミングでもあります。介護保険への切り替えへのスムーズな対応やより良い提案につなげるためにも、認定情報の確認とともにサービス提供中のフォローを意識していきましょう。
ポイントその4
最後に、実践を支えるための重要なポイントを確認しましょう。
1.わかりやすい言葉で説明する
専門用語は避け、平易な表現を心がけましょう。利用者が内容を理解しやすくなります。
2.具体的な数字や事例を活用する
「自費レンタルでは月○円、保険適用後は月○円」など、具体例を交えた説明が効果的です。
3.利用者の立場に立つ丁寧な対応
利用者に寄り添い、安心感を与える言葉遣いや態度は基本ですが、伝えるべきことはしっかりと誠実に説明することが信頼構築の鍵となります。
4.ケアマネジャーとの密な連携を忘れない
自費サービスでも介護保険サービス時と同様に、情報共有を密に行い、共通認識を持つことで、利用者への一貫性のある対応が可能になります。
軽度者や認定前の利用者にとって、またケアマネジャーにとってもありがたい軽度者用の自費レンタルサービス。比較的気軽に導入されやすい自費レンタルですが、介護保険サービスへの切り替え時のトラブルを防ぐためにも、利用者が「なぜ今この選択をするのか」「将来どのような選択肢があるのか」を理解できるよう、丁寧な説明が欠かせません。 また自費レンタル中でもケアマネとの連携を密にし、フォローアップを意識するだけでも、スムーズな切り替え・継続利用につながります。これらの取り組みによって、トラブルの防止だけでなく、利用者の満足度アップやケアマネジャーの信頼につなげていきましょう!