福祉用具専門相談員はさまざまな職種と関わりますが、中でも頻繁に接するのがケアマネジャーではないでしょうか。同じ目標に向かって進むチームの一員として互いに信頼関係を築くためには、どんなことを心がければよいのでしょうか。このたびは、ケアマネジャーの約半数が会員登録している情報サイト「ケアマネジメント・オンライン」の会員である友野朗子さんと、実際に友野さんと協働している福祉用具専門相談員(以下、相談員)の板持弘典さんによるスペシャル対談が実現。日ごろのやり取りを振り返りながら、よい関係を築くためのポイントをそれぞれの立場から語っていただきました。
友野:どんな利用者さんとも良好な関係を築いてくれる板持さんは、私が最も信頼する相談員の一人です。利用者さんに対しても「とても信頼できる相談員を紹介させていただきます!」と太鼓判を押しているほどなんですよ。いつも感心するのは、いわゆる報連相が的確なこと。初回以降はケアマネジャーが現場に行かないことも多いのですが、後で状況を詳しく教えてもらえるので助かっています。そもそも「この製品を利用者さん宅に搬入・設置できるか?」といったことは、私たちでは分からない部分も多いのです。その場で的確に判断し、必要に応じて提案してもらえるのはありがたいですね。
板持:納品や交換が終わったら、できるだけ早めに報告するようにしています。「現場でどのように設置したか」「利用者さんの反応や様子はどうだったか」をお伝えするイメージです。利用者さんのニーズという観点はもちろん、住宅環境という物理的な要因によっても、適する福祉用具が想定と異なるケースは少なくありません。さまざまな状況を考慮して複数の製品をお持ちした上で、必要に応じて「AよりBのほうが合っている」「追加でこんな用具があると望ましい」といった提案も行っています。
友野:急な依頼に対応してもらっていることにも、いつも感謝しています。実は、今日も「夕方にベッドを搬入してほしい」と急な対応をお願いしたばかり。突然のケガや病状の悪化などにより、福祉用具が急ぎで求められるケースは多いもの。「散歩に出たとき杖を忘れてきてしまったので、今日中に届けてほしい」という方もいらっしゃいましたね。
板持:緊急性の高い困り事を抱えている利用者さんがいれば、できるだけ迅速に対応するのが私たちの役割だと思っています。夜間の連絡であっても朝一で対応したり、自分が休みの場合は代わりの者が動けるように調整したりと、なるべくお待たせしない努力をしています。
友野:以前、手すりを何種類もご提案しているのに、なかなか気に入っていただけない利用者さんがいました。困り果てて板持さんに相談したところ、新たに探してもらった手すりで、ようやく納得していただけましたね。こだわりが強い利用者さんの場合も、知識豊富で提案力がある相談員さんだと解決に結び付きやすく安心です。
板持:幅広い相談に対応できるよう、しっかりと知識を更新していくことも重視しています。当社の場合、社内の全体研修が年5回ほどあるのに加えて、メーカー主催の勉強会も月2回ほど実施されています。特に新商品については積極的に話を聞き、情報収集することを意識しています。
友野:それから、難しいニーズにも融通を利かせて対処してもらっていますね。ある利用者さんは自宅内に15袋分ものゴミをため込んでいたのですが、その処理を含め、環境整備からお願いしたこともありました。また、他の事業所からは難しいと言われてしまったケースでも、板持さんは何とか工夫して対応してくれます。「スロープの設置が難しい玄関先なのですが、何かよいアイデアはないですか?」と相談したときは、ちゃんと下見までして提案してくれたので大助かりでした。
板持:現場を自分の目で見ることで、初めて分かることは少なくありません。物理的に希望の製品が設置できないような場合でも、利用者さんの困り事を解決するために何ができるか、さまざまな観点から検討を重ねます。単に言われた製品を持っていけばよいと考えるのではなく、「よりよい環境をつくる」という視点を忘れずにいたいと思っています。
友野:利用者さんやご家族に対する優しく誠実な接遇も、高い信頼感につながっていると思います。介護経験はないそうですが、要介護の方に対する温かいまなざしや接し方が素晴らしく、私も学ぶことが多いです。利用者さんが不安に感じやすい金額面のことも、さりげなく正確に伝えていますよね。
板持:相談員は利用者さん宅に直接訪問する職業ということもあり、相手に不快感を与えるような振る舞いは避けなければなりません。「頼りになる」と感じてもらえるような適切な言葉遣い、そして清潔感のある身だしなみは、常に意識しているところです。福祉用具の使用方法についてご説明する際は、その方の表情や反応をよく観察しながら、理解度に合わせた話し方を心がけています。
友野:利用者さんの在宅生活を考える上で、最初に必要になるのが福祉用具です。家で過ごすにしても、通所サービスなどを利用するにしても、環境整備が不十分では次のサービスを入れることができません。相談員は、まさに生活の基盤をつくる職種だといえるでしょう。利用者さんのよりよい暮らしを実現する同志として、これからも一緒に頑張っていきましょう。
板持:ぜひ、お願いします。日ごろの業務を通して、ケアマネジャーをはじめとする他職種と信頼関係を築いてこそ、やりがいを感じられる場面も多いと実感しています。また、利用者さんと直接関わるからこそ、私たちは「ありがとう」という素敵な言葉をたくさん頂くことができます。今回のお話でこの仕事の魅力をあらためて確認でき、社会のために力を尽くす意欲が高まりました。ありがとうございました。
神奈川県横浜市の社会福祉法人よつば会オリーブの家にて、ケアマネジャーとして勤務。
神奈川県川崎市のサクラサービス株式会社 幸営業所にて、福祉用具専門相談員として勤務。