
事例から学ぶケアマネに好かれるコツ
「よし、これで利用者さんも安心してトイレまで歩けるな」
そんな達成感と共に帰社した数時間後、ケアマネジャーからの電話が鳴りました。
『今日の訪問入浴、浴槽が廊下を通れなくて搬入できなかったそうです。つけた手すりが邪魔になったって…』
一瞬、何のことか分からずフリーズ。
その後、血の気が引いていくのを感じながら「えっ…あの手すりが…?」と動揺する福祉用具専門相談員・Aさん。
“利用者さんのために”と思って設置した手すりが、まさか他サービスの妨げになってしまうなんて。
実際にはここまで極端に搬入できないケースは多くはないかもしれません。
ただ、コンパクトな住宅や導線が限定されているお宅では、わずかな段差や数センチの張り出しがサービス提供に影響することはよくあります。
こうした“目線のズレ”が支援の妨げになるのは、訪問入浴に限ったことではありません。
搬送やポータブルトイレの配置、ベッドの柵など、日常的な場面にも潜んでいます。
――今回はそんな“見えづらい盲点”を、一緒に見直してみましょう。
一見すると、事前に確認すれば防げたのでは?と思える今回のケースですが、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が経験不足だったのでしょうか?あるいは、忙しさのあまり、急いで判断して依頼してしまったのでしょうか?
実はそうではありません。
この手すりは、ご本人がトイレまで歩いて行けるようになるという目標のもと、ご家族の同意も得たうえで、ケアマネジャーと福祉用具専門相談員が協議して決めたものでした。
ケアマネジャーもアセスメントを丁寧に行い、「この設置が自立支援に繋がる」と根拠を持って判断していたのです。
それでも、訪問入浴の浴槽搬入という視点だけが抜けており、それが“思わぬトラブル”となりました。
このケースを知った他のケアマネジャーはどう感じているのでしょうか?
実は「自分が同じ立場でも、きっと気づけなかったと思う」という声が複数上がっていました。
介護サービス全体をマネジメントするケアマネジャーであっても、各サービスでの動線や作業工程まで把握するのは容易ではありません。特に住宅の構造や搬入経路の細かな部分までは見落とされがちです。
生活上の限られた空間では、ほんの数センチの段差や配置が支援のしやすさを大きく左右します。
「必要だから設置した」だけで終わらせず、「この環境で他サービスは問題なく動けるか?」という視点にまで目を向けることが、福祉用具相談員としての強みです。
さらに別のケアマネジャーからは、「良かれと思ってサイドレールから介助バーに交換したら、訪問介護や訪問入浴サービスの際に抜き方がわからず困ったと言われたことがある」という話があがりました。
介助バーはメーカーによって取り外し方が異なるため、ヘルパーさんによっては最初は外し方が分からず困惑してしまうケースもあるようです。
このように、「他サービスの動線」への影響は、実際の現場において見落とされやすいポイントの一つです。
特に今回のように、同じ特殊寝台付属品の範囲内での交換は「軽微な変更」と見なされ、情報共有が後回しになることも考えられます。
設置する前に、「ここは他のサービスの動線に関係していないか?」という視点を持つことが必要です。
先ほどの手すり設置のケースでも、訪問入浴への影響に気づき、設置位置を少し手前にずらすなどの工夫をしていれば、トラブルは防げたでしょう。
「少しの変更」は大きな影響を与えることがありますが、同時に「少しの工夫」で多くの問題を防ぐことができます。福祉用具専門相談員としての手腕が試されるところでもありますね。
都市部では特に多い“コンパクトな住宅”。
部屋の間取りも複雑なことが多いため、福祉用具の設置が他のサービスと“ぶつかる”リスクはぐっと高まります。
たとえば、廊下に手すりをつけたいと思っても、その先にある部屋のドアの開閉に影響が出てしまったり、訪問介護スタッフの通行が困難になったりすることがあります。
加えて、ポータブルトイレや歩行器を使用するときなど、様々なパターンも考慮する必要があるため、複数のサービスが入り混じるご家庭では、ほんの数センチの違いがストレスや支障の原因になることも。
設置前の家屋確認の際に「これは他のサービスにも影響しないか?」という視点で一歩踏み込んでチェックできると、それだけでトラブルを未然に防ぐことができます。
ちょっとした気づきや“空間の読み取り力”こそが、現場力の差になります。
担当者会議では、利用者の生活支援を中心とした話し合いが活発に行われますが、「他サービスへの物理的影響」について触れることはほとんどありません。というのも、介護サービスの特性上、「同時に提供する」ということがないからです。
しかし、福祉用具だけは別です。手すりやベッド、スロープなど、実際の生活空間に“もの”を設置する以上、他のサービスに影響を与える可能性が常にあるのです。
もし、照会の形式になった場合は、ケアマネジャーを通して他事業所に確認を取る流れになります。
その際には、「他サービスの動線に影響がないか確認をお願いしたい」とひと言添えてもらうことで、配慮のある相談員としての印象も強まります。
ケアマネジャーも「この相談員さん、なかなかやるな」と感じるはず。
他サービスとの調整をスムーズにし、トラブルを防げれば、ケアマネの株も上がり、あなたの信頼度もグッと上がることでしょう。
用具設置や住宅改修の際、ケアマネジャーはケアマネジメントの専門性を生かして、利用者の自立支援に向けたプランを立てています。
ただ、動線や他サービスへの影響といった点まで見通すのは難しく、見落としが生じることもあります。
そんな時に、福祉用具専門相談員がその影響に気づき、早い段階で声をかけることができれば、それはまさに専門性の発揮どころ。現場全体の支援をより円滑に、質の高いものにする一歩です。
一見すると他サービスの都合を優先しているように見えるかもしれませんが、訪問入浴や訪問介護などがスムーズに提供されるように調整することは、結果として利用者の安心と自立支援の継続につながります。
「この配置で大丈夫かな?」「ケアマネさんに確認してみようかな?」
そんな小さな気づきが、ケアマネジャーの大きな支えとなり、チーム全体の信頼にもつながります。
「この相談員さん、頼りになる」と思ってもらえるような存在を目指して、ぜひ明日から一歩踏み込んだ声かけを意識してみてください。