
事例から学ぶケアマネに好かれるコツ
利用者から福祉用具の追加希望があり、「よかれと思って」迅速に対応したものの、ケアマネジャーからの反応は“微妙”、むしろ“むっ”とされた…。こんな場面に心当たりはありませんか?
福祉用具の“追加あるある”は、信頼関係の分かれ道。
この記事では、3つの実例と制度の両面から、ケアマネと気持ちよく連携するためのコツを解説します。
プラン確定したと思ったのに・・・二度手間すぎますよね
介護認定の更新結果が出たので、サービス担当者会議を開いて、ケアプラン原案を説明。無事にご本人・ご家族から同意と署名をもらいました。
…と思ったら、帰り際にご家族から「ベッド一式、レンタルしてみようかな~」のひと言。
え、今それ言う!?
どうやら福祉用具さんから「ベッド処分してもレンタルできる」と聞いてたらしく、気になってたそう。でも、そんな話こちらには一切来てなかったんです。
今回、用具さんは会議に不参加。照会内容にも電話にも何もなし。前に手すり納品した時に話してたらしいですが…。
今日やっとプランにサインもらったのに、デモやって正式導入になったらまたプラン修正&再署名。二度手間すぎますよね。
こういう「あとから福祉用具追加」、たまにあるんです。中には月内に追加されてるケースも。
事業所によっては事前に教えてくれるんですが、今回は連携不足を感じました。
皆さんのところでは、デモが1週間あるようなとき、どうやってプラン対応されてますか?
よければ教えてください!
「福祉用具さんが“借りられる”って言ってたのでお願いしたいです」
利用者さんやご家族からこう言われた時、ケアマネジャーはとっさにどんなことを考えていると思いますか?
あわててプランを見直し、限度額の計算をし、頭の中では「えっ、何の話?聞いてないんですけど…」と小さなパニックが起きているかもしれません。
福祉用具相談員の皆さんの中には、「使えそうな用具があったから提案しただけ」「良かれと思って伝えた」そんな善意の行動で説明されたこともあるでしょう。
ですが、ケアマネジャーにとっては、「ケアプラン作成前に、利用者さんと福祉用具の話が進んでしまっていた」ことが、大きなプレッシャーや混乱の原因になることがあります。
特に新規の利用者の場合、サービス導入の優先順位、本人の生活課題、介護者の意向などを丁寧にアセスメントしてからでないと、ケアプランの根拠が弱くなってしまうのです。
もちろん、「ケアマネジャーより先に利用者や家族に説明してはいけない」というわけではありません。利用者が「必要」と感じたときが、情報提供の良いタイミングでもあります。
しかし、重要なのは対応順序と連携。本来はケアマネジャーがアセスメントを行い、どのサービスをどのように使うのが本人の生活にベストかを整理したうえで、サービス提供側の提案があることが望ましいのです。
「あとから説明を受けた」とケアマネに感じさせるか、「一緒に考えられてよかった」と思ってもらえるか――
その違いは、たった一言「この内容、ケアマネさんにも伝えておきますね」と添えるかどうかにかかっているのかもしれません。
サイドテーブルをめぐる判断と相談のタイミング
はじめまして。今年ケアマネになったばかりで、毎日あれこれ悩みながら働いています。
今回、次のケースを相談させていただきたいです。
要介護3の方がリハビリ病院から退院し、訪問診療・看護・介護・福祉用具を入れて担当者会議も済ませました。
でも、会議から1週間もしないうちに、ご本人と息子さんから「サイドテーブルが欲しい」と連絡が。理由も納得できる内容だったので、対応を福祉用具にお願いしました。
ただ、これって品目追加になるので、本来はもう一度アセスメントして担当者会議…ですよね?
でもご本人が体力的に長く座っていられず、コロナもあるし、正直何度も訪問は難しい状況です。
こういう時って、第2・4表の差し替えで対応してOKなんでしょうか?
それとも各事業所から照会の回答をもらった方がいいですか?
アドバイスいただけたら助かります!
「つい最近、担当者会議したばかりなんです…」
そんな時に、利用者さんやご家族から「やっぱり〇〇も必要かも」と相談がある。福祉用具の現場でよくある光景ではないでしょうか?
実際に、新人ケアマネジャーが頭を抱えたのが、「退院後まもない要介護3の利用者に、サイドテーブルを追加したいと相談された」というケース。本人の状態や生活スタイルから見ても必要性は高く、「これはぜひ入れたい」と判断しましたが、ふと頭に浮かんだのが——「あれ、これって担当者会議、また開かないとダメなのかな?」という迷いでした。
このようなケースにおいては、「軽微な変更」ではなく、アセスメントからケアプラン原案の再作成と再度の担当者会議まで一連のケアマネジメントが必要とされる見解が多く寄せられていました。
なぜなら、福祉用具の追加は他サービスに影響を与えることがあり、限度額や必要性、生活導線などの調整が必要になることがあるからです。
でも、実はこの悩みは防げたかもしれないのです。
たとえば、担当者会議の場で福祉用具専門相談員が「ご自宅の環境と身体状況から考えると、ベッド周りにサイドテーブルがあると食事や内服がしやすくなります」と意見を出していたら、どうでしょうか?
その場でケアマネジャーが「なるほど、それなら原案に追加しますね」と修正し、サービス担当者全体の同意を得たうえで、その場でケアプランを完成させることができたはず。
会議後の“やり直し”や“照会の取り直し”を避けることができ、ケアマネも「あの時に一言もらえて助かった」と感じたかもしれません。
特に、新人ケアマネは制度や手続きの解釈に不安を抱えています。
「会議で言うほどでもないかも…」と遠慮せず、“気になる一言”を先に出す勇気が、後々の信頼とスムーズな連携につながるのです。
プランに記載がなかっただけで、やり直しになる?
新しく担当になった利用者さんで、デイサービスの利用を希望されていたため、サービス担当者会議を開きました。
その際、ご家族から住宅環境の相談もあったので、デイの担当者さんだけでなく、福祉用具の担当者さんにも参加してもらっています。
ただ、その時点では福祉用具の利用はまだ決まっていなかったので、ケアプランにはサービス内容を記載していませんでした。
その後、2週間ほどして手すりの貸与が決まり、改めてケアプランに福祉用具を追加しました。
ここで質問なのですが…
このように、後から福祉用具をプランに追加する場合、もう一度担当者会議って開くべきなんでしょうか?
それとも、初回の会議にすでに福祉用具の担当者も出席していたので、今回は書面上のプラン修正だけでOKなんでしょうか?
アドバイスいただけると助かります!
あるケアマネさんが、新規の利用者に対してサービス担当者会議を開いたときのこと。ご家族から住宅環境に関する不安も出ていたため、福祉用具専門相談員にも参加してもらいました。ところが——会議の場では具体的な用具の話には至らず、ケアプラン原案には福祉用具の記載がないまま会議は終了。
その2週間後、「やっぱり手すりをつけたい」と話がまとまり、ケアマネは再び悩みました。「担当者会議に福祉用具の人もいたのに、プランに入ってない…。これ、また会議必要ですか?」と。
実はこの場面、最初の会議のときに、福祉用具専門相談員が“方向性”だけでも発言していたら、状況は変わっていたかもしれません。
たとえば、「ご家族から段差の不安も出ているので、手すりなどの住環境整備の可能性は高いです」「今後の生活を見ながら、福祉用具の導入が必要になる可能性があるかもしれません」といった一言です。
福祉用具専門相談員は、必要性があって担当者会議にわざわざ招集されています。時間を調整して参加するのであれば、事前にケアマネジャーから利用者のADL(移動・トイレ・入浴など)や生活ニーズの情報を聞き出し、ケアプラン原案を共有しておいてもらうという工夫も重要です。そうすることによって、「どんな環境課題がありそうか」「どんな生活上のリスクがあるか」といった視点で、ある程度の予測を立てた上で会議に臨むことができるのです。
このような予測と専門的な視点に基づき、「必要になる可能性がある用具」や「検討しておいた方がよい対策」について、その場で“意見”として発信することが、結果的にケアプランの完成度を高めることにつながります。また、その場で同意形成まで至ることで、その後の対応もスムーズに進みます。
「品目が決まっていないから黙っておく」のではなく、“今の情報から考えられる方向性”を示す姿勢。
それこそが、ケアマネにとって最もありがたい情報提供であり、再会議や書類の手間を減らす実践的な連携になります。
福祉用具の追加があったとき、「これは軽微な変更で済む?それとも会議が必要?」とケアマネジャーが悩む場面、現場では本当によくあります。
厚生労働省の通知(Vol.959、令和3年3月)では、ケアプランの軽微な変更について、次のような判断基準が示されています。
※厚労省通知Vol.959、【居宅介護支援等に係る書類・事務手続や業務負担等の 取扱いについて】令和3年3月
軽微な変更に該当するのは、以下のようなケースです:
・利用者の状態が大きく変わっていない
・他のサービスに影響を及ぼさない
・一連のケアマネジメント(アセスメント・会議・同意取得)を行わなくても支障がない
上記をすべて満たす場合に限り、「照会対応」や「記録のみの変更」で済ませることが可能です。しかし、福祉用具に関してはこの軽微な変更の枠に当てはまるケースは非常に限られます。
✅ 軽微な変更として扱える例(福祉用具)
・同一機能の用具への交換(例:歩行器A→歩行器Bへの交換)
・単位数の違いによる機種変更(機能に差がない場合)
❌ 軽微に該当しない変更
・新たな福祉用具の導入(例:新規にベッドや手すりを導入)
・機能が異なる用具への変更(例:四点杖→シルバーカー)
・状態変化や住環境調整に関わる用具提案
・他サービス(訪問介護・看護等)に影響する配置変更
このような場合は、原則として再アセスメント・ケアプラン変更・サービス担当者会議の開催・同意取得といった一連の手続きを経る必要があります。
用具を一つ追加するだけでも、一連のケアマネジメントが必要なこと、そのためにケアマネジャーが踏むべきプロセスを理解いただけたかと思います。
それでは、福祉用具専門相談員としては、ケアチームの一員としてケアマネジメントプロセスがスムーズに進むためにサポートできることはなんでしょうか。
以下にあげてみました。
「変更の理由」や「使用目的」を簡潔に伝える
例:「日常生活での転倒リスクが高いため、立ち上がり補助として手すりが必要です」
ケアマネが書類を作りやすいよう、必要情報をまとめて提供
単位数、納品日、設置場所、使用目的など、早めに送ってもらうとケアマネはとても助かります。
この変更は軽微か否か?の視点で一言アドバイス
例:「この変更は機能が変わるのでケアプラン変更が必要かもしれません」など。率直に伝えることが難しければ「ケアプランを変更される場合、担当者会議に合わせて納品日を調整しますので、ご都合の良いタイミングをお知らせください」と遠回しかつ親切な声かけもよいですね。
「これは軽微変更かも」と思う前に、「この変更でケアマネさんはどんな判断や手続きが必要になるだろう?」と考える視点を持つこと。
それが、ケアマネにとっての“頼れる存在”になる近道です。
福祉用具の導入や変更は、現場でのちょっとしたやり取りから始まることが多い一方で、その裏ではケアマネジャーが制度・計画・書類との整合性を取るために奔走していることがあります。
今回ご紹介した3つの事例から見えてきたのは、「説明してはいけない」のではなく、「順序と連携を大切にしながら伝える」という姿勢の大切さです。
ケアマネとの信頼関係を深め、スムーズな福祉用具サービス提供につなげるために、ぜひ以下の3つの視点を意識してみてください。
【視点①】事前連携:「この話、ケアマネさんにも伝えますね」のひと言を
どんなに良い提案でも、ケアマネが知らないうちに利用者へ伝わっていたら混乱のもとになります。
説明をする前、あるいは説明をした後に、「ケアマネさんにも共有しておきますね」の一言を添えるだけで、信頼感は大きく変わります。
また、利用者や家族のニーズをキャッチしたら、忘れずにケアマネジャーと共有し、福祉用具の追加や変更の必要性について意見を伝えましょう。
【視点②】記録共有:アセスメント視点での“ひとことメモ”を
ケアマネは「なぜこの用具が必要なのか?」という根拠を、書類上にも残さなければいけません。
そこに役立つのが、福祉用具専門相談員からの簡潔な情報提供。
「状態的にこうだから、この用具が必要です」という“アセスメント視点のメモ”は、ケアマネにとって非常にありがたい材料になります。
【視点③】プラン意識:軽微な変更かどうかを考えるクセを
機能が同じ用具への交換なら軽微な変更として扱えることもありますが、機能が異なる用具の追加や変更は、原則的に再アセスメント・ケアプラン作成、担当者会議が必要です。
「これは軽微かな?」「他サービスに影響あるかな?」といった判断の視点を持つことで、ケアマネとの連携がぐっとスムーズになります。
福祉用具専門相談員の「先を読む力」と「チームへの発信力」が、利用者の生活を守る大きな力になります。
“よかれと思って”が“ありがたい”に変わるように。
次の担当者会議から、ぜひこの3つの視点を持って臨んでみてください。